1サンプルで最適化!JARスケール(Just-About-Right Scale)

週末は暑かったですね。
気象庁2/24の今夏の天気の見通しでは猛暑となっておりました。5/24には3か月予報が出ますが、現時点では大きな変更はなさそうです。
どうやら今年の夏も暑くなりそうです。

毎度のことですが、食品関係では気温と天気には振り回されてしまいます。
温度や天気に基づくマーケティングというのもあるそうですが、関連があるのは分かっていてもリードタイム以前に天気を予測できなければ手を打つのが難しいというのが実情のようです。

最適化手法:プリファレンスマップとJARスケール

商品開発で風味の最適化をする場合、プリファレンスマップが一般的に使われます。
しかし、プリファレンスマップから最適点を探す場合は、10サンプル前後は必要になります。

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もし、サンプル数1つで最適化の手掛かりがつかめたらどんなに良いでしょう。

それがJARスケール(Just-About-Right Scale)です。

JARスケールは最適化の検討で用いられる手法で、試作品や現行品の改良の方向性を検討する目的で使用されます。

 

JARスケールとは

JARスケールではサンプルを実食し、設問の風味について「弱い、ちょうどよい、強い」などを回答します。

例えば5段階のスケールの場合は次のようになります。

1:まったく十分ではない/弱すぎる
2:十分でない/弱い
3:ちょうどよい・・・JAR(Just About Right)
4:多い/強い
5:かなり多すぎる/強すぎる

この他にも「かなり甘すぎる(much too sweet)」など属性を含めた表現にすることもあります。

JARスケールの例

結果がわかりやすいということでマーケティングリサーチで使われることが多いです。

例えば、現行品の評価が甘味が「強すぎる」となれば、甘味を弱めればよいという感じです。
また、サンプル数が1つでよいのも人気の理由でしょう。

サンプル数や量に制約が多い製品の調査は一筋縄ではいきません。
例えば、ラーメン(1食分)などのように1回のサンプル量が多い場合、
アイスのように溶けてサンプルの均一性を保つのが難しい場合にはJARスケールは良い選択肢となります。

JARスケールの解析

JARデータの解析には平均降下(Mean Drops)やペナルティ分析が使われます。
また、JARスケールデータは通常1サンプルなのでそのままではプリファレンスマップを描くことはできません。他の多変量解析もそのまま使うことは難しいです。

XLSTATではペナルティ分析メニューがあるので,そのまま解析できます。

EXCELや他の統計ソフトでも解析できますが、すべて手作業になります。

 

JARスケールの課題

便利なJARスケールですが、いくつかの批判もあります。
例えば、他の属性への相関関係や交互作用を考慮しない点、回答者が提示された属性を異なる解釈で回答するなど点でリスクがあります。

実際の解析で困るのが、JARスケールは順序性を持つ尺度ではない点です。
通常の尺度(ヘドニック尺度や5段階評点など)は1よりも2、2よりも3の方が好ましい、もしくは強いという順序性があります。
しかし、JARスケールは、1や2は弱い(不適)、3は丁度良い(適)、4や5は強い(不適)となっています。中央値の3が最も好ましく、小さくても大きくても好ましさが低減します。順序性のある尺度のようには扱えません。

この特性は、嗜好度との相関係数を見るときに注意が必要です。嗜好度とJARスケールの変数の相関係数は次のような関係になります。

関係性がある場合、嗜好度は順序性を持つ直線、JARスケールは順序性を持たない曲線になるため相関が低くなります。

対策としては、JARスケールを変換してから相関係数を算出するようにします。

 

まとめ

最適化を1サンプルだけで検討できるJARスケールを紹介しました。手間はかかりますがExcelだけでも解析できます。

実食サンプルに制約がある場合にはJARスケールの利用もご検討ください。

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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