■□■□■□■官能評価TT通信No.3■□■□■□■
さて、第3回目のテーマは「続・官能評価と規格」です。
前回は、官能評価にまつわる規格の概要と企業の規格導入理由について考えてみました。引き続き、今回も規格について考えてみたいと思います。今回は、企業にとって官能評価の規格導入の判断方法、そして導入するならどの規格に準拠させるべきか、この2点について検討します。
まず、官能評価に規格の導入は必要かどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか。
これを考えるためには、3つの要因を検討する必要があります。1つ目は内的要因で、現在の官能評価の知識・経験・ノウハウのレベルで す。自信を持って結果を公表できるレベルにある企業ならば、現時点において規格の導入は必要ないでしょう。一方、官能評価を行なっていない、もしくは行 なっているものの、結果に自信がないような場合は、規格に沿った実施を行なうことは充分有効です。一つの基準として、ISOやASTM、JISなどの規格 に比べて技術が劣っていると考えるならば、規格を導入を検討したほうがよいでしょう。
2つ目は相対要因として製品やサービスの業界内シェアを検討します。業界内で独占状態にある企業ならば、強い立場で今の方法を 続けることが出来るからです。逆に、技術があってもシェアが低い場合は、相対的な交渉力が低くなるため、独自の技術では取引先に受け入れられないこともあ るでしょう。強い立場にいるならば、規格の導入はそれほど検討しなくてもよいと考えても良いでしょう。一方、弱い立場にいるならば、選択に迫られます。顧 客の求める方法か、規格の導入か。これは、最後の要因で判断します。
最後は外的要因である、取引先の多様性です。取引先が多様化するほど、相手の要求にあわせた方法で報告・表示する必要が出てき ます。取引先と当方の力関係が均衡していると仮定して、取引先が増えれば増えるほど、報告や表示も多様になり、それだけの労力=コストがかかります。しか し、規格を導入すれば、取引先の増加しても一貫した方法で表示や報告が出来るるのでコストが抑えられます。つまり、多様な取引先を持つ企業は規格の導入を 検討したほうがよいといえます。取引先のカウントには潜在的な取引先も含めた方が良いでしょう。
2つ目の要因で「弱い立場」となった企業の場合ですが、当該企業が多様な取引先を持とうと考えるならば、規格の導入をすべきでしょう。現代は、い つ取引を切られてもおかしくない経済状況にあります。少数大口顧客に依存したしくみを続けていけば、取引を縮小されたときに対応できなくなってしまいま す。どんな状況でも新規顧客を開拓できるような共通の方法(=規格)を使っていたほうが有利だと言えます。
また、技術があって国内のシェアはトップであったとしても、海外展開を視野に入れている企業ならば、対象国・対象企業が採用している規格の導入に迫られるかもしれません。状況を勘案して意思決定します。
このように3つの要因を検討した上で、規格の導入を判断します。方法として、X軸にシェア、Y軸に技術レベルの2次元のマップに自社をプロット し、自社の取引先数を円の大きさで表示します。このとき、技術レベルのY軸を上が低レベルとして図表を描くと、右上に近く、大きな円を描く企業ほど規格の 導入が必要と判断できます。
さて、規格を導入すると決まったとして、どの規格を採用すればよいのでしょうか?
取引先が何らかの規格を指定しているならば、それに従うべきです。しかし、漠然と規格の導入を考えているならば、現在や将来の取引先がEU寄りか、米国寄りであるかを分析して決めるのがよいでしょう。もし、EU寄りならばISO、米国寄りならASTMです。
さて、全く制約条件がない企業はどうすればよいのでしょうか。つまり、相手から要求もされていないし、取引先も日本企業ばかりだという企業です。 そういう企業ならばJIS規格を導入することをお勧めします。現在ではISOにも準拠してますから、将来的にISOへの完全準拠もスムーズにできます。
規格について2回にわたって述べましたが、最終的な狙いは「信頼性のある結果を得る」ことと、その結果を「相手に理解してもらう」ことです。独自の方法は、信頼性がある結果を得られても、独創性が強すぎれば相手に理解してもらうのに非常に手間がかかります。特に、ビジネスの世界では時間が勝負です。信頼のある結果を、容易に、短時間で理解してもらうことが重要です。これを実現するための方法として「規格の導入」を述べてきました。
次回は、「パネルの重要性」について述べてみたいと思います。
では、また!