今年も残すところあと数日となりました。
2024年もChatGPTと各生成AIなどのAI躍進が続きました。
そんな今年2024年の状況を振り返りたいと思います。
1.生成AIの新たな基軸-キャラクター化とプロアクティブ化-
2.官能評価の動向
3.ISO・JIS関連の更新情報
1.生成AIの新たな基軸-キャラクター化とプロアクティブ化-
2022年11月にChatGPTのサービスが開始されてから2年が経ちました。
昨年もAIフィーバーでしたが、OpenAI以外の競合のレベルもどんどん進化しております。
A社が最新モデルを出して優位に立ったと思ったら、すぐにB社が最新モデルでそのパフォーマンスを追い抜いていくような激しい競争で技術が進歩しております。
また資金の流入もあり、新しい企業がいきなり業界トップになってしまうこともこの数年で見てきました。
利用者側も様々なサービスが提供され、さらに頻繁なアップデートが繰り返されるのでついていくのがやっとという声も少なからず聞かれます。しかし、AIを使用するかどうかで生産性は大きく変わりますので利用したことのない方は年末年始の空き時間に使ってみるとよいでしょう。
今後もAIモデルの性能は上がっていくと思いますが、その為に必要なリソース(学習用データ、GPUなどのハードウェア)が桁違いに必要になるため、モデル単体の性能は鈍化していくでしょう。一方で、複数のモデルを組み合わせたり、思考プロセスを変更することで精度を向上する方法も併用されてきています。2024年にOpenAIがサービスを開始したo1モデルや発表されたばかりのo3モデルは、思考プロセスを改善することで大幅な性能アップを達成しています。また、複数のLLMモデルに役割を設定して目的達成まで自動的に進めていくようなエージェント型のサービスも増えてきています。
利用者としては、モデル単体であろうが複数モデルだろうが「目的を早く正確に達成できれば何でもいい」というのが本音でしょう。そこにブランドロイヤリティや愛着というものはありません。
当面はこのような性能競争が続いていくでしょう。
その先には、AIサービスにもブランドアイデンティティやキャラクター、愛着を生み出すものなどが付与されてくるでしょう。
まずはプロアクティブ(積極的な)なAIがサービスとして提供が増えると考えています。現在のChatGPT等のサービスは利用者が質問や発話などのトリガー行為によってAIが応答するスタイルです。一方、プロアクティブなAIは、AI側が必要と判断したタイミングで応答(発話、チャット)を始めます。より人間的で自然なプロアクティブなAIが主流となってくるでしょう。
つぎにAIに対する愛着やロイヤリティを生み出すもの、キャラクター性がデザインされて提供されていくでしょう。
昔使っていたSHARP製のスマホにはエモパーという人工知能アプリが搭載されていました。スマホを机に置いたときや何かのニュースが流れてきたときにエモパーから話しかけてくる。必要な情報を、こちらから動くことなく提供してくれる。また、キャラクター付けがされていて無機質な感じがしない。プロアクティブで個性的なAIだったと記憶しております(本記事執筆時点でもサービス提供中)。
AIの基本性能の精度向上は当然として、各分野への最適化が進み、キャラクター化とプロアクティブ化がサービスのカギとなってくるでしょう。
来年もAIの進化が楽しみですね。
2.官能評価の動向
AIのインパクトは大きいのですが、官能評価の実務上ではあまり影響は大きくないようです。
「早い・楽・安い」の傾向は変わっていなくて、精度を高めようというアプローチは主流ではないようです。アプローチで言えば、今年一年のプリファレンスマップの需要は高かったです。特定の分野ということはなくて様々な方面からお問い合わせがありました。
大手の企業の傾向として、社内で運用している官能評価を外注もしくは外部パネルに移行しているところが多いようです。一方で中小企業では社内の官能評価の体制を整備しようという動きが多くあり、近い将来には逆転していくのではないかと思います。実際、原材料の納入業者に提案や官能評価のデータを要求するようになってきており、大手としては自社でデータを取らなくても何とかなってしまう状況ができてきています。香料メーカーなどとの関係は以前からこのようなものだったと思いますが、他の素材メーカーでも同じような関係になりつつあるようです。
官能評価技術は簡単に再構築できるものではないので、大手企業も自社の官能評価体制を維持したままの方が良いと思うのですが、各社思惑があるようでこの外注化の流れは続きそうです。
3.ISO・JIS関連の更新情報
2024年のISO更新情報です。
今年は新規規格の発行が1つ、規格更新が1つ発行されました。あまり多い年ではありませんでした。
ISO 6273:2024
Assistive products – Accessibility guidelines and requirements to survey the needs of persons with sensory disabilities for assistive products and services
Publication date : 2024-03
Edition : 1
Number of pages : 19
ISO 29842:2024(<-2011)
Sensory analysis – Methodology – Balanced incomplete block designs
Publication date : 2024-06
Edition : 2
Number of pages : 19
官能評価分野のワークグループでは評価室(ISO8589)やDuo-trio(ISO10399)などの更新作業が進んでいるようです。
さて、今年は生成AI系サービスの普及と性能の向上が続いてきました。
一方で専門家以外にはあまり違いが分からないという話もあり、利用者によって受け取り方が大きく違うことに驚きがありました。
弊社では、今年は社内用のローカルLLMも動き出し、順調に業務のAI化が進んでいます。
また、社内会議では役割を割り振られたAIが課題に対して、問題点や解決策などを提案してきています。
RやPythonのデータ解析用のコードはAIに書いてもらっています。
論文の読み込みは先にAIにレクチャーしてもらってから、自分で細かいところを読むようになりました。
AIが社外の人とのコミュニケーションがとれるようになったら、ホワイトカラーの仕事は激減しそうですね。
2025年も時代の変化に対応しながら、記憶力の低下に抗って頑張っていきたいと思います。
本年も大変お世話になりました。
来年も何卒宜しくお願い致します。