令和4年2022年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
2022年は北京オリンピックとウクライナ侵攻で始まりました。
そんな今年2022年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.サステイナビリティとユーザビリティの狭間
2.ISO・JIS関連の更新情報

1.サステイナビリティとユーザビリティの狭間

サステイナビリティやSDGsといった活動は企業活動の中でも重要な位置付けになってきました。
近年の官能評価関連のシンポジウムでも大々的に取り上げられており、官能評価分野においても重要な活動指針として浸透してきています。

サステイナブルな取り組みとして「脱プラスチック」が話題になりました。
身近な例ではプラスチックストローから紙ストローへの移行です。

セブンイレブンやスターバックスなど大手チェーンが紙ストローを採用し、マクドナルドが2020年10月から紙ストローに順次切り替えていくと発表しました。

身近に紙ストローを使う利用者が増えたことで、紙ストローのユーザビリティ(使い勝手)がネットを中心にコメントされました。

好意的なコメントもありましたが、一方で感触の違和感や味の変化について否定的なコメントが書き込まれました。

官能評価技術者として、今回の紙ストローによるユーザビリティへの否定的な影響は十分予想できたものです。
官能評価の担当者が評価設計を考えるとき、提供する容器が商品特性に影響することを知っているため容器の検討には十分に注意を払います。ワインのテイスティングのグラスについてISO規格があるくらいです。

今回の意思決定に官能評価の結果が使われたかどうかは不明ですが、満足のいくストロー材の移行とはならなかったようです。

今後も「良い商品」を作ると同時に社会的・環境的な影響に配慮した商品開発が求められてきます。
その中で商品特性(官能特性)やユーザビリティを最大にすることに加えて、「丁度よさ」や「ほどほど」な商品開発の比率も増えていくでしょう。

今回の紙ストローも「飲み口の良さを最大化」することは制約の中で実現できなくても「ほどほどの飲み口」を模索することはできたと考えます。

商品開発や官能評価の担当者は、商品の特性を微調整する技術が必要です。
官能評価の実施方法だけではなく、特性を管理する実験計画の技術が重要になってきます。

官能評価で実験計画といえばバイアスや実施回数の減少を目的に導入することが多いですが、これに加えてタグチメソッドのような特性を管理するために実験計画法を導入することが必要です。
官能評価の設計技術の高度化が今後のキーワードとなるでしょう。

紙ストローの改善が進められているので、近い将来にはプラスチックストローに近い使い勝手の紙ストローが普及するでしょう。
コスト次第でしょうが、、、。

2.ISO・JIS関連の更新情報


2022年のISO更新情報です。

今年は新規規格「ISO 21380」(抹茶)が発行されました。その他の新規や更新もありませんでした。
ここ数年では一番少ない年ですね。

ISO 21380(2022)
Matcha tea – Definition and characteristics(抹茶 – 定義と特徴)
Publication date : 2022-04
Number of pages : 11

--【概要】と【目次】--

本規格には、国際取引で「抹茶」と呼ばれるお茶の栽培、製造(加工、粉砕を含む)、および官能分析に関する情報が記載されています。
これは、使用される植物源、栽培および生産方法に基づいて、国際的に合意された抹茶の定義を提供します. これらは、抹茶の物理的、化学的、感覚的特性にとって重要です。
フレーバー抹茶、ブレンド抹茶、または抹茶のカフェイン抜き抽出物または可溶性抽出物には適用されません。

序章
1 スコープ
2 参考文献
3 用語と定義
4 抹茶の4つの由来
4.1 抹茶の歴史的起源
4.2 記述名 – 抹茶、緑茶、黒茶、白茶
4.3 植物の供給源、栽培および収穫
4.4 加工および生産段階
4.5 官能評価分析
4.6 賞味期限
5 5つの特徴
5.1 一般特性
5.2 化学的特性
附属書 A 抹茶と碾茶のサブタイプの外観
附属書 B 栽培と加工
参考文献

--ここまで--

日本国内でも抹茶の商品は数多く、期間限定品から定番商品となってきています。
海外でも抹茶の人気が高まっており、抹茶というブランドを保つためにも規格化されたことは日本としては良かったといえるでしょう。
抹茶の価値が高まれば、日本の抹茶商品も多く求められるでしょうし、寿司のカリフォルニアロールのように日本の良いところと新しいものを組み合わせていくことで新たな市場が創造されていくでしょう。
規格の内容は抹茶の定義が中心で、官能評価に関する項目は「4.5 Sensory analysis(官能評価分析)」となっております。

さて、今年の規格の発行が少ないので、Under development(開発中)についても状況を確認してみました。
Sensory関連で開発ステージが40を超えている規格が4つあります。4つとも新規ではありません。

●開発中の更新規格
ISO 8586
Sensory analysis – Selection and training of sensory assessors
Stage: Under development (50.00)
Edition: 2

ISO 22935-3
Milk and milk products – Sensory analysis – Part 3: Guidance on a method for evaluation of compliance with product specifications for sensory properties by scoring
Stage: Under development (40.60)
Edition: 2

ISO 22935-2
Milk and milk products – Sensory analysis – Part 2: Recommended methods for sensory evaluation
Stage: Under development (40.60)
Edition: 2

ISO 5492
Sensory analysis – Vocabulary
Stage: Under development (40.99)
Edition: 3

新規の規格では、開発ステージは20.00と低いですが下記の「ISO 5877」(非管理領域での実施指針)が気になりますね。

●開発中の新規規格
「ISO 5877」
Sensory analysis – General guidance for conducting perception tests with consumers in usage conditions, in uncontrolled area
官能分析 – 管理されていない領域での使用状況で消費者との知覚テストを実施するための一般的なガイダンス
Stage: Under development (20.00)
Edition: 1

今年は個人的に、糖質オフの菓子に興味津々でした。
業務では、11月に開催された官能評価学会でご紹介した「喫食量モニタリング装置」の開発もほぼ終了し、来年は事例開発に注力したいと思います。

withコロナの社会がどうなっていくのか、為替や原材料の変化にも対応しながら2023年も頑張っていきたいですね。

本年も大変お世話になりました。
来年も何卒宜しくお願い致します。

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
カテゴリー: 「官能評価なるもの」アーカイブ パーマリンク