2018年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところ1週間を切りました。

今年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.香川県独自のオリーブオイル官能評価パネル、IOCから公式認定
2.TDSにマーケティングリサーチ業界も参入
3.嗜好調査の浸透と拡張

1.香川県独自のオリーブオイル官能評価パネル、IOCから公式認定

1つ目ですが、今年後半に香川県が小豆オリーブ研究所に設置している「香川県オリーブオイル官能評価パネル」が国際団体の公式パネルとして認定されました。

下記、新聞の引用です。

「香川県が小豆オリーブ研究所に設置している「香川県オリーブオイル官能評価パネル」が、11月19日から23日、スペインマドリードで開催されたインターナショナル・オリーブ・カウンシル(IOC)の年次総会で、公式パネルとして認定された。これは日本国内では初の快挙であり、アジアでもトルコについで2番目となる。」日本食糧新聞2018/12/7より引用

コーヒー業界では業界団体ごとに資格制度を設けて、日本国内の企業でも資格保有を推進しています。その為、コーヒー業界では「認められた評価者」が認知され、活用されています。
しかし、他の分野ではあまり認知されていませんでした。
今回、オリーブオイルの分野で認定されたことで公式パネルが評価したデータやチャートがオリーブオイル商品に活用されていくことが見込まれます。
ワインや日本酒などでは小売店の売り場に商品マップや風味チャートがPOPと共に活用されています。オリーブオイルの売り場でも今後目にすることが増えてくるでしょう。

現在でも味覚センサーによる商品マップを売り場に展示されていますが、今回の「国際団体が認定」したことや「国内初」などは目を引くキーワードになるでしょう。

一方で、ワインや日本酒でも同様の課題を持っていますが、売り場の商品マップは展示するだけにとどまっており、販促として購買決定にうまく活用されていません。

今後は試食販売との組み合わせを通じてコンサルティング販売につなげていくことがポイントになってきます。

2.TDSにマーケティングリサーチ業界も参入

TDSの影響はマーケティングリサーチ業界にも影響を及ぼしているようです。
近年のTDSをはじめとした時系列手法は商品開発に活用できるという認識が広まってきており、各メーカーの担当者からマーケティングリサーチ会社に問い合わせが増えてきているようです。一方で、国内のマーケティングリサーチ企業の多くでは官能評価に特化したスタッフがほとんどいないため対応できていない状況でした。それでも3点試験法や評点法、疑似QDAなどは何とかこなせていたのですが、さすがにTDSなどの専門的な手法となるとすぐには対応するが難しいようです。

弊社で販売している官能評価テキストの多くはメーカーが購入されていますが、最近はリサーチ企業からの引き合いも増えてきております。

海外のマーケティングリサーチ企業の多くは専門的な官能評価手法にも対応しており、パングボーンなどの国際会議のスポンサーにも名を連ねています。残念ながら国内のマーケティングリサーチ企業がスポンサーになった例は多くありません。

TDSをきっかけに国内リサーチ企業も官能評価に多少の興味を持ち始めていることは、国内の官能評価レベルを高めるうえで好ましい傾向だと思います。

依頼側の注意点としては、サービスや商品が急拡大する時期には玉石混交という状態になります。知識がない状態で依頼するのは難しいですね。専門家や経験者のサポートしてもらいながら進めていくのが良いでしょう。

3.嗜好調査の浸透と拡張

嗜好調査自体は多くの企業で実施されてきましたが、近年その活用と手法の多様さが目に付くようになりました。

高度な手法である「プリファレンスマップ」を多くの方が使うようになってきました。
また、前述のTDSとの組合せで使われる「TDL:Temporal Driver of Liking」も利用者が増えてきています。
そして「Jarスケール:Just About Right scale」の利用者も徐々に増えてきています。Jarスケールは1試料から評価できる点が好まれているようです。予算の少ない企業でも実施しやすいというメリットがあります。

スタンダードな「ヘドニック尺度」が浸透し、その次の手法を探している状態なのでしょう。

官能評価の解析手法も専門家から一般消費者を前提とした解析に移行してきています。
2016年末に今後の手法動向について述べていますが、この傾向は変わらず続きそうです。

2018年のISO更新情報

ISO13301は閾値検査の規格の改訂版です。データ要件と計算手順に焦点が当てられています。ページが減っています(34p→28p)。
ISO18794は新しい規格です。基本的な用語、コーヒー評価における基本的用語、コーヒー特有の用語、実務者の用語が記載されています。

●ISO 13301:2018-04-24 ( 2002年の改訂 34p→28p )
官能試験-方法-三肢強制選択法(3-AFC)手順による香り,風味及び味覚検知の閾値
Sensory analysis — Methodology — General guidance for measuring odour, flavour and taste detection thresholds by a three-alternative forced-choice (3-AFC) procedure

●ISO 18794:2018-01-03( 新規格 )
コーヒー-官能分析-用語
Coffee — Sensory analysis — Vocabulary

コーヒーに特化した用語規格を発行したことは、今後の規格の方向性としてポイントになります。ワインなども評価容器の規格がありますが、今後は商品カテゴリに特化した規格が増えてくることが想定されます。一方、ASTM(アメリカの標準化規格)の方が手法の規格も、商品カテゴリ別の規格も更新の頻度が高いため、今後のISOの方針には注意が必要です。実務者としてはASTMのチェックも忘れないようにしましょう。

年末もバタバタしておりますが、個人的には「麦ふあ~」のパッケージの変更
が一番のびっくりニュースです。
内容量もさることながら、一枚一枚の量・厚さも変わってしまいました。
これにより食感が変わってしまったのが(個人的には)残念です。
昨今の事情を考えると量が減るのは仕方ないとして、1枚の仕様が変わってしまったのはファンとしては衝撃でした。
パッケージ変更に気づいてから、旧パッケージを箱買いしてしまいました・・・

今年も残すところ1週間を切ってしまいました。
良いお年をお迎えください。

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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