ついに12月に突入いたしました。
個人的にはフリーの統計ソフトRを触る時間が恐ろしいほど増えました。
触れば触るほど奥深いと同時に、バグというか課題も見えてきます。その対応も含めてのオープンソースなのでしょう。
基本的には他のソフト(JMPやXLSTATなど)と併用して、結果をチェックするのがよさそうです。
※ほとんどの機能は問題ないですが、官能評価関連のパッケージはところどころに課題があるようです。おそらく、他のパッケージに比べてユーザーにチェックされる機会が少ないためと考えています。
今年の官能評価関連の動向にはどのようなことがあったのか振り返ってみました。
まず、一番に気になったのは立命館大学が2018年4月に官能評価学部を開設するという話です。
以前、東京農業大学の先生とお話ししているときに、日本には官能評価学科がないという話題になったことがあります。
東京農業大学には食品香粧学科があり、これが官能評価学科に一番近いと思っておりました。
そうこうしていると、今年のゴールデンウイークぐらいに立命館大学が2018年4月に官能評価学科を開設するという話を聞きました。
当時ネットで検索した際には、学科名は仮称となっていたので最終的には変更になるかもしれませんが、驚いたのと同時に、遂に学科ができるのかという喜びがありました。
ぜひ、日本初の官能評価学科を実現してもらいたいですね。
追記
「官能評価学部」というのは私の記憶違いのようです。失礼いたしました。
サイトを拝見すると、食科学部の中の1つの分野という扱いでした。
社会人の中には、国内に官能評価を勉強する大学がないためわざわざ海外に行く方もおります。カリフォルニア大デービス校のエクステンション講座は有名ですね。
少子化時代には、大学運営において社会人の取り込みも重要です。特に官能評価は企業とのコラボレーションが重要ですから社会人を受け入れられる学部になればいいなと願っております。
構想中とあるので、ぜひ官能評価学を中心に据えてみてはいかがでしょうか?
次に、手法のトレンドですが、今年もTDSの勢いは止まらないようでした。
さらに言えば、ダイナミック官能評価関連の手法の勢いといってもよいでしょう。
TDSに始まり、TCATA、TDLなどの手法が話題に上るだけではなく、実際に実施される機会が増えてきているようです。
そして、今年のISO規格の動向です。
2016年に発行された官能評価関連の規格は2つでした。どちらも既存規格の改訂です。
●ISO 7304-1:2016
Durum wheat semolina and alimentary pasta — Estimation of cooking quality of alimentary pasta by sensory analysis — Part 1: Reference method
デュラム小麦セモリナ及びめん類-官能試験によるめん類の調理品質の推定-第1部:参照方法
●ISO 13299:2016
Sensory analysis — Methodology –
General guidance for establishing a sensory profile
官能試験-方法論-感応プロフィールを確立するための一般指針
ISO 7304は前回の発行が1985年です。30年以上を経たところですので通常の更新だと思います。
ISO 13299は2003年に発行されていますが、13年後の改訂は早いです。
プロファイル法、つまり記述型官能評価は新しい手法が開発されるスピードが速く、多くの企業が採用しています。
普及した手法なので、規格もなるべく早く反映しているのでしょう。
個人的には、記述型官能評価の規格はある程度出来上がってきているので、TDSやTCATA、TI法などのダイナミック官能評価手法の規格を早く発行してほしいと思っています。
ASTMでは検討が始まっているので、ISOでの検討・発行も待ちたいところです。
※食品関連ISOの検討・発行状況などは農林水産消費安全技術センター(FAMIC)でも公開されています。
※ISO規格の検索・購入はJSAが日本語で便利です。
最後に、今後の手法の動向について述べたいと思います。
大きな流れとして、官能評価手法は簡略化が進むでしょう。
具体的には下記の3つの方向です。
1.プロセスの簡略化
2.自由度の高まり
3.パネルのコンシューマー化
簡略化とは手法のプロセス全体を簡単にすることです。ラピッドメソッドと言われるもので、これらの手法が普及してくるでしょう。
一方で、情報量は落としたくないという要望もあります。そこで、簡単で必要な情報を取得できる妥当な手法を模索していくと思われます。
自由度の高まりが進み、評価する際に用語選択や回答方法の自由度が高い手法が出てくるでしょう。
記述型官能評価では、すべて事前に決められた用語に回答するQDAに対して、回答者が用語を自由に選択できるFCP(Free choice profiling)のようなイメージです。
TDSやTCATAなどの手法も事前に用語を決めておきますが、回答者が回答時に決めるような手法が出てくるでしょう。
(temporal dominace of free-choice-sensastionsみたいな名前になるんでしょうか・・・。正直、名前が増えるのは勘弁してほしいですね)
パネルのコンシューマー化が進み、嗜好型パネルの利用が主流になってくるでしょう。
簡略化の流れとも一致しますが、エキスパートパネルを構築する手間を考えるとトレーニングをせずに一般のパネルを使うことが増えてきます。
また、嗜好情報との統合解析のニーズが高まっています。プリファレンスマップもその一つですが、エクスターナルプリファレンスマップの場合は、官能評価と嗜好調査を別のパネルで行わなければなりません。これは簡略化の流れと逆行します。
トレーニングを省き、同じパネルから多くの情報を得るというメリットから、コンシューマーパネルの利用が増えてくるでしょう。
ただし、これらはB2Cビジネスの企業の話です。サプライヤーなどB2Bの場合は逆にエキスパート化が進みます。これはメーカー側がコンシューマー化を進めていった結果、足りなくなった部分をサプライヤーに求めていくためと考えられます。
簡略化と情報量の増大はトレードオフの関係です。
どちらも満足する手法というのは難しいと思いますが、これらを模索していく動きは変わらないでしょう。
今年の動向について4つのトピックを取り上げました。
1.大学の官能評価学科の設立(見込み)
2.ダイナミック官能評価手法の活発化
3.記述型官能評価の普及
4.官能評価手法は簡略化・自由化・パネルのコンシューマー化
さて、皆さんの2016年はいかがでしたか?
今年のデータ整理やパネルパフォーマンスのチェックなどしてみてはいかがでしょうか。
FIZZユーザーの方は、FIZZDatabaseもたまには使って見てくださいね。
2016年もあと1か月、宜しくお願い致します。