官能進捗管理技術(センサリー・プロジェクト・マネジメント)

■□■□■□■官能評価TT通信No.7■□■□■□■

さて、今回のテーマは「プロジェクトマネジメント」です。

官能評価でプロジェクトマネジメント?
「なぜプロジェクトマネジメント?」というヒトもいるでしょうし、「そうそう、大事だよね」というヒトもいるでしょう。

そもそもプロジェクトとは何か?そしてプロジェクトをマネジメントするプロジェクトマネジメントとは?
本稿の最大の目的である「プロジェクトマネジメントを官能評価に適用するポイント」は?

以上の3つについて述べたいと思います。

さて、プロジェクトとはなんでしょうか?
「ハロプロ」
「プロジェクトX」
「サンデープロジェクト」
ちなみにgoogleで「プロジェクト」を検索すると約9,680,000ヒットと表示されました。「官能評価」が約89,100ヒットですから、約100倍のサイトがある計算になります。

ここで、プロジェクトの定義を見てみましょう。
「独自の製品やサービスを創造するために実施される有期的な業務」(PMBOK2000日本語版用語集p210)
これは米国団体PMIが編纂しているPMBOK(Project Management Book Of Knowledge)に記載されている定義です。このPMBOKはプロジェクトマネジメントのデファクトスタンダードとして利用されています。 ISO10006「Quality management systems — Guidelines for quality management in projects 」(2003)やANSIのベースとなっています。ポイントは「独自性」と「有期性」です。

プロジェクトは、一般には建設業界やIT・システム業界、自動車産業などで利用されています。しかし、「ハロプロ」の例のようにプロジェクトとは 企業でなくともよいし、営利目的でなくてもいいのです。定義を見ていただければ分かるように「独自性」があって、「有期性」(=〆切り)があればプロジェ クトなのです。

さて、官能評価はプロジェクトでしょうか?
定義に照らしてみれば分かるように、官能評価やマーケティングなどのリサーチはプロジェクトです。まず第1要件の「独自性」は、リサーチでは必須 です。既に分かりきったことをリサーチするヒトはいません。となれば、リサーチには常に「独自性」が認められます。次に、第2要件の「有期性」ですが、こ れも常識的に締め切りがあります。また、多くのリサーチでは「今」を対象にしています。未来の予測を目的としていても、リサーチ自体は「今」を対象に実施 します。「今」の状態を定義付ける前提条件が変わらない期間という意味でも、締め切りがあるのです。

以上から、官能評価もプロジェクト志向のタスクであるといえます。

次に、「プロジェクトマネジメント」とはプロジェクトを成功に導くためのマネジメントのことです。一応定義は、
「プロジェクトの要求事項を満足させるために、知識、スキル、ツールおよび技法をプロジェクト活動へ適用すること」(PMBOK2000日本語版用語集p212)
となってます。決して、コンサルタントの金儲けのネタじゃありませんし、知識として貯えるものでもありません。会社が導入したからやるなんてのもナンセンスです。

ところで「マネジメント」自体の定義が多様なのでわかり難いと思いますが、P.F.ドラッガー著「マネジメント」は非常に明確にマネジメントを解き明かしています。但し、分厚い2冊(上・下)なのでエッセンス版がお勧めです。

話がそれましたが、プロジェクトマネジメントとは実際に行動し、プロジェクトを成功に導く体系なのです。

プロジェクトマネジメントについて詳細な話に入るとこのブログが大著になってしまうので、要点だけかいつまんで説明しましょう。

ポイントは3つです。
1. 成果物志向
2. 計画的
3. フィードバック

さて、官能評価への適用の各ポイントを考えてみましょう。
第1の「成果物志向」とは、「このプロジェクトの成果物は○○である」と認識し、アウトプットとして形にすることです。「○○を知りたい」という根源的な狙いは必要なのですが、その結果を成果としてどのような形にするのかを事前に明確にするのです。

例として、「計画時点では『調査計画書』という成果物である」と定義します。

しばしば、調査はしたけどレポートにもまとめず、調査員の満足で終わっている例があります。官能評価であれば、レポートという成果物にすることが多いでしょう。もしかしたら、論文として提出することかもしれません。

しかし、ポイントは「こうしたい」というあいまいな欲求ではなく、成果物として具体的な形にすることです。

第2の「計画的である」ということは、事前に実施から分析まで決めておくということです。これはプロジェクトマネジメントに関わらず、仮説検定を前提とした調査では先に決めておくことが大切です。

普通、○○分析をして、先に決めたハードルをクリヤーできなければ棄却、クリヤーすれば採用、ということを事前に決めますね。検定では、仮説なし に既存のデータから有意差がある組み合わせを見つけてきてもそれを「有意である」ということは言えないのです。実務レベルで見てみますと、データを集めて から「どうやって分析しよう???」と悩んでいることもあるようです。しかし、それは検定の考え方からも、マネジメント的にも間違った考え方です。

計画的に行なうメリットは、「どこに問題があったか?」がはっきりします。場当たり的にやっていくと、リサーチ設計に問題があったのか、実施に問題があったのかが分からなくなります。ということは、失敗から学ぶことが出来ません。フィードバックが効かなくなりますね。

最後のポイントは、その「フィードバック」です。
プロジェクトマネジメントでは「教訓(lessons learned)」といいます。要は、経験から学び、過去より向上しましょうということです。品質管理でも「PDCAサイクル」をまわすといいいますが、同じことですね。

通常、個人が経験から得た知識は個人に蓄積されていきます。しかし、企業では個人のノウハウを多くの人々で共有したいところです。官能評価も職人芸的なところが多分にありますが、後々のためにも経験から得られた教訓を文書や映像などで残しておくことが大切です。

論文などを見ても、官能評価で最も重視すべき方法論については詳細に議論されていないものがおおく、あまり実務の参考にはなりません。参考書も一般化されているのでそのまま適用できないことの方が多いと思います。

独自のフィードバックシステムをつくり、見えない財産「ノウハウ」を蓄積することをお勧めします。

以上、今回の話をまとめましょう。
・官能評価もプロジェクトである
・プロジェクトは次の3つのポイント抑えるとうまくマネジメントできます。
1. 成果物志向
2. (事前)計画的
3. フィードバックのしくみ

今回はポイントだけを述べましたが、官能評価では技術も大切ですが、マネジメントも大切です。マネジメントによっては官能評価の結果も活きます し、無駄になることもあります。マネジメントのポジションにある人はプロジェクトマネジメントを意識していただけると良いのではないでしょうか。実施担当 者においては、どうやったらうまく回るのかを考える上でプロジェクトマネジメントの知識は大いに役立つと思います。

ぜひ、官能評価にプロジェクトマネジメントを活かして下さい。

では、また!

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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