■□■□■□■官能評価TT通信No.8■□■□■□■
今回のテーマは「調査の種類」です。
調査にはその目的によっていくつかの種類に分類できます。今回は一つの分類法を紹介します。
今回紹介する分類法は、調査の目的によって3つに分類する方法です。一般的には調査対象への理解・知識の程度によって分けることが出来ます。次の3つです。
1. 探索的調査
2. 記述的調査
3. 説明的調査
「探索的調査」は、新たな現象や対象など未知のものについて新たな視点を得ることを目的とした調査です。この調査では「何が問題か」すら把握できていない状況で行なわれます。調査対象への理解や知識が最も少ない状況で行なう調査です。QCなどでいう「現状把握」に近いですね。
「記述的調査」は、調査対象や現象を正確に表現したり、詳細な姿を描くことを目的としています。官能評価では「風味特性」を記述的調査で表 現することも多いと思います。ある程度の知識が蓄積されている状況です。官能評価でいうなら、ある種の飲料の風味特性ではテクスチャーは関係が無いと分 かっており、事前に調査項目から除外するなどの判断が出来るレベルです。
最後の「説明的調査」は、現象などの因果関係を説明し、予測や原因究明することを目的としています。官能評価では、風味特性とリピート率(予測)、もしくはクレームと生産地(原因究明)などの例があげられます。
(理解や知識が小)「探索的調査」→「記述的調査」→「説明的調査」(理解や知識が大)
どれが良い悪いということはないのですが、一般的には説明的調査が望まれます。特にアカデミックでは説明的であることの方が重要視されています。 なぜなら、調査というのは何らかの問題や疑問を解決したいという欲求から始まっており、調査ではこれらを解決するための因果関係を明らかにすることを目的 としています。
また、企業で行なう調査も「おいしい商品」だけではなく「何度も購入してもらえる商品」を作りたいと考えます。風味特性を記述するだけではなく、風味特性と購買行動に結び付けたいと考えるでしょう。
その結果、購買行動に関連する因果関係、つまり説明的調査を重要視することでしょう。
よって、一般的には理解の深まりとともに説明的調査を行なうことが望ましいといえます。
しかし、官能評価では記述的調査が多いように感じます。風味特性を明らかにする調査は、食品の風味を記述する調査、つまり記述的調査ということで す。これ自体は品質管理や各種規格の設定において必要なことです。しかし、マーケティングを目的として官能評価を利用しようとしたとき、記述的調査だけで は不十分です。
マーケティングの究極目的は「売れるしくみ作り」です。
問題のある例を考えてみましょう。
ある飲料メーカーA社が、競合他社含めた飲料の風味特性を明らかにして、これをマッピングしました。これをもとに、次のような意思決定をしたとします。
「B社の持つシェアNO1のポジションに我々も攻め込むぞ!」
などなど・・・。リエンジニアリングの名のもとに類似の商品が開発・販売されたとします。
さて、ここで問題なのが売上高を説明する変数との因果関係を明らかにしないまま決断したことです。
確かに風味特性がそっくりな商品が出来たとしましょう。しかし、それが売れるかどうかは別問題です。なぜなら、消費者が「味」で買っているのか、パッケージのかっこよさで買っているのか、どんな要因で購入しているのか分からないからです。
ここで話している内容は、とても常識的な話です。「それぐらいわかってる」という声も聞こえそうです。ところが、ひとたび机上を離れ、官能評価の 現場に行けば、何のための官能評価を行なうのか明確に認識しないまま、実施されていることが少なくありません。今回テーマとして調査の種類を取り上げた理 由はここにあります。
調査の目的を認識し、これに合致した調査の種類を採用しなくては官能評価の成果を生かせません。
ちょっと今回は長くなりましたがまとめます。
●調査の種類には調査の対象への理解度によって次の3つに分類できます。
1. 探索的調査
2. 記述的調査
3. 説明的調査
●調査の種類は調査の目的によって決まる
(記述的調査から予測はできない)
以上です。
では、また!