暑い日が続きます。
夏の商品の売上予測は大幅に狂ってきていることと思います。
以前から知られていますが、温度と売り上げは直線的な関係ではないことが多いです(非線形の関係)。
ある温度を超えたところから急に売り上げが下がるなど、各業界ではこの夏の酷暑はがどちらに転ぶか気が気ではないでしょう。
とはいえ、ここ数年のデータもあるので大分予測精度は上がってきていると思います。
さて、今回は官能評価の起源にまつわるお話を取り上げます。
皆さんは、最初の官能評価といわれる話はご存知でしょうか?
実は官能評価関連の本にも記述があるのでご存知の方も多いでしょう。
そうです、フィッシャーの「紅茶」の評価です。
紅茶にミルクを入れるとき、先にミルクを入れた時と後からミルクを入れた時で味に違いが分かるという方がいました。これをフィッシャーが実験計画を立て、そして官能評価を実施して識別能力を検証したというのです。論文には実験結果も載っていて興味深いです。
現代官能評価でいうところの識別試験(discriminat test)ですが、当時はこのフィッシャーの手法に名前はありませんでした。後年Gridgemanが”double-tetrad sorting design”と言いました。”octad”にあたる手法でしょうか。
では次に、官能識別試験とはっきりと銘打った食品研究の第一号は?
これはLaurenRogersの「Discrimiation testing in sensory science」でLauren自身が執筆している章で「Sylvia Cover(1936年)」の研究を挙げています。
Sylvia Coverは何を研究したのでしょうか?
Coverはロースト肉の調理温度が肉の柔らかさにどのような影響を与えるか(柔らかくなるのか、それとも硬くなるのか)を明らかにしようとしました。彼女はこの新しい手法を「ペア試食法(paired-eating method)」と名付けました。この手法は現在「一対比較法(paired comparison)」と呼ばれている手法です。Coverは2年にわたり261ものペアを評価しました。
また、Coverは評価者に、「ペア・バイト(paired bites)」と呼ばれる慎重に選定された2つのサンプルを提示しました。食肉の試料は部位によって複雑な性質を持つため、肉の部位は同一の動物の左右から採取され、一口サイズのサンプルは同じ種類の筋肉から切り出されました。非常に試料調製も注意が払われていますね。
評価者は、実験条件や各サンプルがどの調理温度で処理されたものかを知らされていませんでした。ブラインド化も採用されています。また、データ処理においては単純な統計手法(二項検定)を用いていました。
これら幾つかの観点からは優れた設計でしたが、一方で3桁ランダムコードの使用やバランスのとれた実験計画(バランス・デザイン)といった手法は、当時はまだ導入されていませんでした。
その後、Coverはコンピュータが一般的では無い時代にランダム化のためにトランプを使ったり、二項検定に加えてカイ二乗検定も採用するなど現代の官能評価のスタイルに近い形まで改善し続けていきました。
現代の知識で色々指摘することは簡単ですが、当時の環境においてこれだけのレベルで研究されていたことは驚きです。また、高速なコンピュータを持ち歩き、オープンソースのソフトで最先端の解析ツールが容易に使える環境にいる現代の我々も学ぶことが多い話です。
ぜひ、Sylvia Coverの研究詳細を読んでみてはいかがでしょうか。「Discrimiation testing in sensory science」の第1章がまとまっていてお勧めですが、Cover本人の下記の原著論文も参照ください。
Cover, S., 1936. “A new subjective method of testing tenderness in meatdthe paired-eating method.“
今回は、最初の官能評価と最初の識別試験について取り上げました。
暑い日が続きますが、皆様も体調にはお気を付けください。
