■□■□■□■官能評価TT通信No.10■□■□■□■
今回のテーマは「翻訳語」です。
このブログを読まれている方はどのような仕事をされているのでしょうか?商品開発?品質管理?マーケティング?いろいろだと思います。
さて、今回は特に商品開発に関わるヒトへのお話です。
商品開発は大変な仕事です。大きな会社では細分化されていますが、普通の企業では担当者がリサーチ、マーケティングプラン、製品仕様の決定など何でも屋のようだと思います。
こなすだけでも大変な仕事なのに、売れなければ評価されません。これはルーティンワークのように、決められた仕事をこなせばよいという類のものとは違います。
そんな(厳しい)商品開発に関わる部署で官能評価を利用する場合、いくつかの用途・目的が考えられます。例えば、
A.コンセプト決定
B.仕様決定
C.品質規格決定
などがあります。会社によっては、コンセプトはマーケティング部が決めて、仕様が商品開発部、規格は生産技術部というのもあるでしょう。分類についてはあまりにも多様な形態があるので、大まかに商品開発に関わる部署と考えてください。
とにかく、商品開発のプロセスにおいて様々な用途・目的がありますが、官能評価を用いる際には注意が必要です。
なぜなら、コンセプトを決める時と規格を決める時では具体性も違いますし、信頼性のレベルも異なります。
規格は品質を決める重要な要素です。規格を決める数値は、当然品質に影響し、コストにも大きく跳ね返ります。必要以上に厳しい規格はコストをアッ プします。ゆるい規格ですと不良品まで市場に流れてしまいます。コストは企業側の問題ですが、不良品はお客様に迷惑をかけてしまいます。クレームが発生 し、企業の評判も落としてしまいます。
用途によって官能評価で明らかにするものは大分異なります。運用する上で十分理解することが重要です。
さて、先ほどの目的ABCをもう一度見てみましょう。これはある順番に並べています。
A.コンセプト決定
B.仕様決定
C.品質規格決定
もうお分かりですね。商品開発のプロセスです。Aは開発初期~Cは開発後期(販売前)という具合に開発プロセスのフェーズ順になっています。(実際はもっと複雑ですが・・・)
あるフェーズで得られた情報を生かすためには、次のフェーズ用に情報を翻訳する必要があります。
具体的に考えてみましょう。
A.コンセプト(ここでは味のコンセプト、つまり風味に限定します)
飲料の新製品の風味の調査を行い、現製品より「さわやかな味」が好まれていることが分かりました。
よって、現行製品を「さわやかな味」に改良することにしました。
B.仕様決定
さて「さわやかな味」を作り出すにはどうすればよいのでしょうか。
酸味を加えるのか、甘味を抑えるのか、両方を調製するのか。それとも加工方法で対応するのか。官能評価を行なって決めるとしても、要因(Factor)をある程度絞らなくてはなりません。
このフェーズでは「さわやかな味」に影響する要因を知らなければ仕様に落とし込むことはできません。
多くの場合、開発者は経験的に「さわやかな味」を作り出してしまいます。「さわやかな味」を「原材料」などに翻訳しているのです。別の言葉でいえば、「さわやかな味」と「原材料」との間の関係が分かっているといえるでしょう。
このような能力はプロの調理人も持っているのではないでしょうか。いわゆる職人たちです。
しかし、職人に頼ってしまうのはどうでしょうか。そもそも官能評価を導入する意味合いは、職人がやってきたことを定量化し、客観化・普遍化することです。
この前提で考えると企業の商品開発部としては、AとBの翻訳語、つまり相関関係を明らかにしておくことは欠かせません。
ノウハウとは、これら情報の質と蓄積量であると言えます。
ちょっと長くなってしまいました。
今回は商品開発におけるフェーズ間翻訳語の必要性を述べました。
では、また!