す・ご・い ヒト達

■□■□■□■官能評価TT通信No.14■□■□■□■

さて、今回のテーマは「パネルの選抜」です。

官能評価では、評価するヒトをパネル(評価者)といいます。一方、品質管理としての官能評価(つまり、官能検査)の中では「検査員」という言い方が一般的です。

品質管理としての検査員と、商品開発などに関わるパネルでは求められる能力と水準が異なります。

パネルに求められる能力はつぎの5つです。
1. 識別能力
2. 感度
3. 安定性
4. 表現力
5. タフネス(耐久性)

これらの能力は目的によって水準が変わります。

まず、品質管理のための検査員は、
1. 識別能力
2. 感度
3. 安定性
5.   タフネス(耐久性)
の4つが強く求められます。

商品開発関連ならば、
1. 識別能力
2. 感度
3. 安定性
4. 表現力
の4つです。

比較すると最初の3項目は同じですが、最後の一つだけが異なります。これは商品開発ではタフネスはいらないというのではなく、要求度が品質管理の場合に比 べて低いということです。当然、品質管理の検査員でもクレームの原因を探る場合など表現力が求められます。ただ、その頻度と要求のレベルが異なるというだ けです。

やはり目的に応じて要求水準を定めて、目的に合ったパネルを選抜するのが良いでしょう

もし目的に合わないパネルを選抜すると3つの懸案が持ち上がります。
1. 目的を達成できない(業務を遂行できない)
2. コストがかかる(選抜のコスト、教育のコストなど)
3. モチベーションダウン

1と2はわかりやすいと思います。
1については、能力のないパネルを採用すれば業務を遂行出来ないのは当然です。仮に、そのパネルを教育しようとするとコストがかかります。逆に、 全てを兼ね備えた人材を探そうとあらゆる人材にテストを受けてもらうとすれば、選抜のためのコストは非常に大きくなってしまいます。また、ハードルが厳し いのでコストの割りには合格者も少ないです。

最後の問題は結構根深いです。不適切なパネル選抜が行なわれた場合、3者の立場でモチベーションが落ちてしまいます。

第1に、採用した担当者です。計画していた品質検査や官能評価が適切に実施できないとなると業務は滞りますし、上司に怒られる かも知れません。これなら社内の話で済みますが、市場に不良品が流通しようものなら会社の信用の失墜に繋がります。担当者にとってはパネル選抜の失敗は、 モチベーションが落ちる原因になります。

第2に、採用されたパネルです。能力が無いので仕事が出来ません(但し、多くの場合、官能評価を実施する側が気兼ねして毎回参 加してもらっているようです)。評価の場が能力を活かせる場ではなくなり、帰りにもらえるお茶菓子が楽しみになってしまいます。そうなるとずるずる評価に 参加はするけど貢献はない状態になります。この状態では能力が上がることはないでしょうから、さらに悪循環が続きます。

最後は、官能評価の経験が少ない会社で起こりやすいのですが、マネージャーの官能評価に対するモチベーションが落ちてしまいま す。官能評価を導入しようと頑張っているが、結果が出てこない。ヒトを集めてみたけれど、やる気がない。部下(担当者)もやる気をなくしている。これだっ たら官能評価をやめてしまって機械に頼ってしまったほうがよいのではないか。など、すっかりやる気をなくしてしまいます。

さて、このような問題をはらんだ「パネルの能力と要求のアンマッチ」ですが、ほとんどの場合、事前の計画を綿密にすることで防げます

1つのプランで行動しようとするとこのようになってしまいます。そこで、パネル選抜の計画にはいくつかのオプション(代替案)を持つようにしましょう。理想とする第1案があり、現実的な第2案、そして想定できる最悪の第3案を作ると良いです。

そして、要求される能力と水準を明確に認識し、それにあった選抜テストを実施・評価することが大切です

一度、パネル選抜のプロセスを見直してみませんか?

ではまた!

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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