おいしいから売れない?

■□■□■□■官能評価TT通信No.15■□■□■□■

さて、今回のテーマは「“おいしい”と“売れる”」です。

おいしい商品が全て売れる商品だったらどんなに楽でしょうか。しかし、現実はそう簡単ではありません。もちろん、おいしい商品のほうが売れる可能性は高いのですが、強力な要因とはいえません。

理由は2つです。
1つは、顧客が購入を決定する際に「おいしい」という要因が必ずしも決め手になっていないことです。値段で購入するヒトもいるし、パッケージやCMの効果で購入を決めているかもしれません。

もう1つは、食品のほとんどが試用なしで購入を決める商品であることです。大手の新商品ならば、試食をすることもあるでしょうが、ほとんどの新商品は試食 なしで購入するか否かを決めなければなりません。つまり、新商品の購入決定に「おいしい」かどうかは関係ないといえます。「おいしい」が要因となって売れ るのは再購入に限ってということになります。
※消費者の購買行動についてはマーケティングか、そのものずばり「消費者行動」の本を参照ください。あまりに膨大なのでとてもじゃありませんが紙面が足りません。

では、なぜ企業はおいしい商品を創る必要があるのでしょうか。
味なんて売上に関係ないかもしれないのに・・・。

理由は3つです。
1.企業としての存在意義
2.顧客のロイヤリティーを高める
3.長期的売上の向上

1つめの「企業としての存在意義」とは、つまり「あなたの会社が無くなって困るヒトがいますか?」という問いにはっきりと「はい」と答えられると いうことです。おいしくない商品、似たような商品、ありふれた商品ならば明日会社が無くなっても世の中のヒトは困らないでしょう(残念ながら、それが現実 です)。実際、海外の安い商品に押されて淘汰されていくのではないでしょうか。食を扱う企業として生き残っていくために最低限「おいしさ」という価値は提 供して行くべきでしょう。

2つめの「顧客のロイヤリティー」とは、お客様がどれだけあなたの会社の商品に忠誠を持っているかということです。ロイヤリティーを形づくるのは 「信用」です。「ブランド」と言い換えてもいいでしょう。食品は「安全」とか「生命」にかかわる商品ですから、特に信用は大切な要因です。先ごろの牛乳 メーカーの不祥事は「信用」を損なった例といえるでしょう。その結果は言うまでもありません。

3つめの「長期的売上の向上」はロイヤリティーの向上の結果ともいえます。ロイヤリティーの向上によって、顧客は試食なしに新商品の購入を決めて くれます。そしておいしい商品ならば、リピーターになってくれます。リピーターの増加は売上の向上だけではなく利益率も高めます。新規顧客を一人増やすの にかかる費用は、リピーター維持にかかる費用をはるかに上回ります。広告費用を押さえ、同じ売上を確保できるのですから利益率が高まるのは当然です。

おいしい商品をつくることの意義は見い出していただけたと思います。

ところで文頭にも書きましたが、おいしい商品だから売れる商品とは限りません。しかし、おいしい商品を創る意義はあります。

では、おいしい商品売れる商品にするにはどうすれば良いのでしょうか。

それは、官能評価の成果をマーケティングに反映することです。
つまり、官能評価とマーケティングの融合です

おいしい・まずいは官能評価の分野です。これを売れる仕組み造り、つまりマーケティングに組み込んでいくことで「おいしい商品」が「売れる商品」に変わっていきます。

官能評価がなかったらどうなるでしょうか?

キャッチコピーの例を考えるなら、商品の特性を適切に反映していないコピーが出来上がります。
苦味が弱いのに「ビターな○○」
甘いのに「甘味を押さえた○○」など

ウソのコピーは顧客からの信用を損ないます。
逆にコピーが商品の特徴を適切に説明していれば、顧客が購入に必要な情報を提供できたことになります。情報が適切で、顧客が購入に満足すれば、広告に対する信用も企業に対する信用も高まります。

商品が氾濫する今の世の中で、顧客に適切な情報を伝えるのも企業側の責任です。そのために官能評価の成果や知識は十分生かせるはずです。
残念なのは、多くの企業で官能評価の成果が研究開発・商品開発で止まっていることです。

マーケッター、営業、官能評価技術者の各者が歩み寄って、相互の情報交換をすることでもっと官能評価の成果を活かせるようになるでしょう。

ちょっとしたこと、例えば官能評価の順序効果を応用して、試食の順番でどっちがおいしく感じるかを伝えるだけで、営業部隊は喜んでくれますよ。

今回はマーケティング寄りのお話でした。
ではまた。

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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