■□■□■□■官能評価TT通信No.20■□■□■□■
さて、今回のテーマは「実験計画法」です。
官能評価を行なう上で実験をどう行うかという実験計画法は避けて通れません。今回は実験計画法の概要について述べたいと思います。
まず、実験計画法の基本はフィッシャーの3原則として知られています。
1.反復(replication)
2.ランダム化(randomization)
3.局所管理(local control)
実験計画には2つの目的があります。
1.条件の均一化(乱塊法、ラテン方格法、ブロックデザイン(IBD,BIBD))
2.実験回数の削減(直交法、ラテン方格法、BIBD)
実験を行なう上でベタな方法といえば、全ての組み合わせについて実施する方法です。
全ての組み合わせを行うということは情報量が多く分析から得られることも多いのですが、要因が増えた時にコストや実験管理の問題が出てきます。
単純に3水準3要因として、3の3乗で、27実験が必要です。
もう一つ要因を増やすと、3の4乗となり、81実験が必要になります。
繰返しデータも欲しいなんて言い出したら大変なことになってしまいます。こうなってくると実験ごとの局所管理が出来るのかという問題が出てきます。毎日1 実験を行なったとしても約3,4ヶ月かかります。四季の彩りが豊かな日本ですが、もし季節変動があるとすれば最初にやった実験と最後の実験では条件が異な ることになります。
そこでまず第一の「条件の均一化」ということを考えます。
仮に条件の均一化が計れたとして次の問題は、企業がそんなに時間とお金をかけていられないということです。(無論、担当者もそう思うでしょう)
そこで第二の目的である「実験回数の削減」をすることになります。
ですからお金に余裕があって、いつでも完璧に環境を再現できる実験室をお持ちで、実験回数を減らす必要がないなら、実験計画法なんて知らなくてもいいのです(極端ですが)。
現実的にはそんなことはなく、あらゆる制約の中で実験を進めていかなくてはなりません。
ゆえに実験計画法を理解し、実践する必要が出てくるのです。
もちろん全てにおいて良いことばかりではありません。実験回数の削減をするということは精度を落とすということになりますし、分析から得られる情報量も減ってしまいます。一般的には3因子以上の交互作用は小さいので考慮しませんが、もしかしたら・・・ということもあります(設計時点に適切な知恵があれば避けられるはずなのですが)。
具体的な実験計画法については少ない紙面でどこまで説明すればよいか悩んでしまったので、扱わないことにしました。
その代わりおすすめの入門本を2,3お知らせしておきます。
永田靖著「入門実験計画法」は非常にわかりやすく、かつモデル式も記載されておりベーシックな一冊だと思います。但し、ハードカバーの教科書っぽ さが嫌という人もいます。そこで、分散分析と実験計画法を理解する上では大村平著「実験計画と分散分析のはなし」でじっくりと1歩1歩進むのも良いでしょ う。薄いので通勤途中でも読めます。但し、計算機前提なのでエクセル派の方はニ見・西著「課題解決のための実験計画法」(?・?)が良いと思います。分析 ツールやエクセル関数を使いながら理解できますし、ルーチンな評価だったら作ったシートをそのまま業務で使えます。
官能評価では疲労や繰返しが出来ないなどの制約が多くあります(例えば、私はビールののどごしの評価は1回目でアウトです。のどごしですから飲ん でしまいますので、あっという間に酔ってしまいます)。実験計画法は、このような制約の中で実験回数を減らし、しかし情報量は維持するといううれしいツー ルです。一方で多少の勉強が必要なのもまた事実です。しかし、身につければ非常に強い武器となってくれると思います。
ぜひ、利用してみてはいかがでしょうか。
今回は「実験計画法」でした。
ではまた!