■□■□■□■官能評価TT通信No.22■□■□■□■
さて、今回のテーマは「4S」です。
官能評価では様々な要因が絡み合っていて、全部の要因に注意を払っていては前に進みません。そこで重要なポイントだけを押さえて実施していくことも実務者としては必要です。弊社では官能評価を実施する上で重要となるポイントの頭文字をとって、『センサリーの4S』と呼んでいます。
『センサリーの4S』
1.Subjects(パネル)
2.Scale(モノサシ)
3.Sample(試料)
4.Situation(場所・状況)
注記:現在では2つ目をScaleではなく、ScoreCardとしています。
第1に、Subjects(パネル)です。これはブログでも何回か書いていますが、パネルの能力如何で評価の結果が大きく変 わってしまいます。本来、評価設計の順番としては「知りたいこと」を知るための評価を企画し、その評価に必要なパネルをリクルートしてくるのが適当だと思 います。しかし、現実には社内のパネル使用が前提ということが少なくありません。そのため、利用できるパネルの能力や人数が決まることで他の項目を検討し ていくというのが実践的です。
第2に、Scale(モノサシ)です。普通、定規(モノサシ)は誰でも対象物を測ることができます。ところが官能評価のモノサ シは使う人(パネル)によって使えたり、使えなかったりします。官能評価では、相対評価と独立評価(絶対評価)がありますが、相対評価はおおむね誰でも使 えます。しかし、独立評価(絶対評価)はパネルの評価能力がないと使えません。パネルの能力に合わせた評価尺度(モノサシ)を使うことが大切です。
第3に、Sample(試料)です。官能評価では統制困難な要因が多くあります。その中でも試料の影響が大きいですから可能な 限り統制したいものです。但し、現実的には非常に困難が伴います。人工的に調製できる場合は良いのですが、海産物・農産物など官能評価実施者の思い通りの 試料を集めることが出来ないことがあります。これ以外でも社内的事情から、有り合わせの試料で評価をすることもあるでしょう。しかし、せっかく手間をかけ てデータを取るのですからエネルギーを注いで試料を準備するようにします。
第4に、Situation(場所・状況)です。官能評価を「どこで」「どんな状況で」行なうのかは、評価目的(知りたいこ と)で決まります。一般的に2つの状況が考えられます。1つは、実施者側が場所を提供する場合。もう1つは評価者側で確保する場合です。前者は評価室や会 議室で実施するような場合です。要因とする属性を絞込み、環境などの要因を統制することが出来ます。後者は自宅に持ち帰って評価してもらうような場合で す。あまり属性は絞り込まず、各要因の統制よりも実際の使用環境を再現することに重きをおいた設計です。どちらの場合でも大切なのは「その場所で評価を実施することで、知りたいことを知ることができるのか」を問うことです。
以上の4つのポイントを押さえれば、全くおかしな評価にはならないはずです。また、この順番も重要な順に並べていますので順にチェックしていくことをお奨めします。
当たり前のことしか並んでいませんが、当たり前のことをするのが難しいのも事実です。
弊社では、官能評価の経験が少ない方に対しては、常にこの『センサリーの4S』を念頭において評価の実施をするように言いま す。この手の頭文字(例えばQCの『5S』、マーケティングの『4P』など)はありふれていますが、非常に便利なツールだと思います。一度覚えたら忘れな い程度の簡単なチェックリストで、情報の抜け漏れを防いでくれます。私も『センサリーの4S』は未だに使っていますし、報告書を書くときは『5W2H』に気をつけています。
皆さんも手軽に官能評価のクオリティーチェック、してみませんか。
今回は『センサリーの4S』でした。
ではまた!