在宅・遠隔による官能評価の実施方法

新型コロナウイルスによる様々な影響が各方面に出ております。
東京都には外出自粛の要請が出され、在宅勤務者が増えております。

メーカーの商品開発者やマーケティング担当者は事態の変化に即座に対応することが求められています。

現在、感染拡大を防ぐため避けるべき状況は「3つの密」と言われています。

密集、密閉、密接

会場調査(CLT;Central Location Test)や集合型の官能評価は、まさに避けるべき状況の一つと言えます。その為、集合型の官能評価の案件自体が実施できない状況です。

実施するとしたら、自宅調査(HUT; Home Use Test)または非集合型官能評価となります。

在宅勤務の社員やリクルート会社を通じてモニターの自宅に商品やサンプルを送付して、試用の上で回答します。

通常HUTは、普段通りの使い方をしてもらった上での使用感などの評価をしてもらうのが目的です。
その為、使い方などの指示は少なくし、要因の統制は最小限とします。結果、様々な使用環境・状況など実態に即した評価が得られるのが特徴です。

一方、会場調査は指定した場所に集まってもらい、運営側の意図する方法に基づき指定されたとおりに評価をします。

双方、メリットデメリットがありますが、会場調査では「様々な要因を厳密に統制できること」が一番のメリットです。
会場調査ができない場合にHUTを代替手法として取り入れる場合、この点を十分注意する必要があります。
なぜならHUTは、様々な要因を厳密に統制できません。

例えば、HUTで商品の食べる順番を指定した場合でも、その通りに実施する方もいればそうでない方もいます。
HUTでも統制自体は可能ですが、「厳密な」統制は難しいのです。

一方で、HUTを(集合型)分析型官能評価の代替として考えたとき下記の3点に注意して実施します。

1.実施方法:半統制型の実施(使用する順番、使い方など一部を指定する)。
2.回答方法:パソコンやスマホを使う。また、統制した内容が守られているかチェックする(サンプルコードの表示だけではなく入力させる)。
3.解析方法:分析型官能評価として実施した場合でも嗜好型官能評価のような解析とする※。

※訓練されたパネルで行う分析型官能評価ではパネリスト効果を固定効果(fixed effect)として解析することが多いですが、遠隔実施の場合は訓練されたパネリストであってもパネリスト効果を変動効果(random effect)として解析する。

各社の状況によりますが、在宅業務を行っている場合にインターネットに接続して回答サイト(アンケートサイトやWeb型官能評価ソフト)にアクセスが許されていない場合も多いようです。

これに対してはソフトウェアごとに対応は異なりますが、例えば弊社のmagicsenseではソフトウェア自体をメールで送付し、ネットに繋がないパソコンで回答を記録し、結果をメールで返信することができます。
FIZZにはFIZZmobileというシステムがあり、持ち出して評価することが可能です。

まとめます。

現状、集合型の官能評価を実施するのは当分は難しそうです。
そこで遠隔で評価を実施するHUT型(ホームユーステスト)の官能評価が当面は有効です。
遠隔実施の場合は、実施の教示、回答方法、そして解析方法を変更することで十分に実施することが可能です。
ソフトウェアは多くの場合は遠隔実施が可能です。

早く不安のない社会になることを祈念しております。

admin について

旧ブログ「官能評価なるもの」は平沼孝太が執筆しておりましたが、現在の「官能評価なるもん」は弊社社員が編集しております。
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