今年もバレンタイン商戦が始まりました。チョコレートのラインナップが豊富なのでうれしい時期です。
さて、年明けに識別法についてJISとISO/ASTMを改めて見直したら気になったことがありました。
※識別法モジュールの発売を3月に予定しております。現在、鋭意開発中です。
JISにはPd(Proportion of distinguishers)が出てきていないんです。
例えばISO4140(3点試験法)ではα、β、そしてPdによる数表(必要人数表)が出ているのですが、JISの方には数表どころかPdというワードも出ていません。
FIZZユーザーなど海外のソフトウェアを使っている方ならば、識別法の出力にPdという指標があることにお気づきになったことがあるでしょう。
Pdとは何でしょうか?
Pdとは、提示したサンプルを完全(確率1)に識別できる人の割合です。完全識別者比率といえます。
実際に取得されたデータから計算される正解率Pc(Proportion of correct responses)とPdの関係はどのようになっているのでしょうか。
下記のような式で表されます。
Pc=1*Pd+(1/3)*(1-Pd)・・・・・式(1)
または
Pd=1.5Pc-0.5・・・・・式(2)
式(1)の考え方として、参加者nの中にある割合で評価サンプルを100%識別できる人たち(完全識別者)がいると仮定します。その完全識別者の割合がPd(%)です。
そして参加者のうち、完全識別者以外の人はランダムに選択すると仮定し、その正解率は3点試験法であれば1/3の正答確率と考えます。
実際の参加者による正解人数xから正解率Pc(=x/n)は、両者によって構成されますので式(1)を言葉で説明すると式(3)のようになります。
Pc=1*Pd+(1/3)*(1-Pd)・・・・・式(1)
実際の正解率 =正解確率(Pr=1)×完全識別者比率+正解確率(Pr=1/3)×完全識別者以外の比率・・・・・式(3)
Pdの考え方は「差異試験(Difference test)」よりも「類似性試験(Similarity test)」で重要な意味を持ちます。
Pdへの興味が薄い理由は、適切な設計による類似性試験を行っている企業が少ないためと考えられます。
加えてJISや官能評価書籍の識別法に関する説明が古かったり、言葉足らずだったりします。
特に「JIS Z 9080:2004 」は2005,2009,2014年に「確認」を受けていますがPdの追記はされておりません。
※確認とは
『調査会の議決により、主務大臣が当該JISを年月を経過してもなお適正であると認めたとき、内容を変更せずに、確認するものです。「確認年月日」とは、その「確認」が官報で公示された日のことです。規格番号の西暦年(コロン(:)の後ろの年)は、直近の制定又は改正された年のままで変更はありません。*確認された年にはなりません。』
引用サイト(日本規格協会サイト)
JISの確認から4年が経ちますので、次回は「確認」ではなくJISの「改正」が待たれます。
3点試験法を例に説明しましたが、2点試験法やテトラッドなど他の識別試験法でも同様です。
また、近年のトレンドは識別法を信号検出理論(signal detection theory;SDT)を用いて解析することが行われております。
興味のある方は、フリーウェアRの識別法パッケージsensRがお勧めです。
識別法もまだまだ進化しているようです。