◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.30◆◇◆◇◆◇◆
さて、今回のテーマは社内パネルです。
官能評価を実施するにあたってパネルを募集する一番手っ取り早いのが社員およびその家族(学校なら学内の生徒)だと思います。
今回は社内パネルのメリットデメリットと制度として導入する際のポイントをご紹介します。
まず、社内パネルのメリットデメリットについてです。
ここでパネルについてもう一度確認しておきましょう。パネルの種類は大きく2つに分類されます。
1.分析型パネル(専門パネル、?型パネル)
2.嗜好型パネル(一般パネル、?型パネル)
企業の社内パネルで一番多いのが、2つ目の嗜好型パネルです。
評価のねらいが、好きか嫌いか、売れるかどうかを知りたいということです。
そもそも嗜好型の官能評価は、標本調査の理論(サンプリング)の考え方を基本とすべきですが、如何せんコストがかかります。大手のマーケティングカンパニーならいざ知らず、中小企業ではなかなか市場調査にお金を出すのは難しいでしょう。
そこで、一般消費者を対象に調査を実施するよりも安いコストで行える社内パネルによる嗜好評価が行われているのが実情です。
ところが、社員および社員の家族が嗜好や購買意識について聞かれた場合にバイアスがかかることがあります。バイアスには自社商品を買わないと回答する訳に はいかないということもありますし、逆に自虐的に自社商品を低く評価するということもあります。どちらかというと規模の小さい企業では前者が、規模の大き い企業では後者が出やすいようです。これは回答の匿名性に起因するバイアスと考えられます。人数が多いと匿名性が確保される(と思う)のでネガティブな回答でも書くことができます。しかし、人数が少ないと誰が書いたか特定されてしまうのでネガティブな回答が書きにくいのではないでしょうか。
社内パネルのデメリットは「(嗜好評価における)バイアス」です。
一方、社内パネルにはそれを補って余りある大きなメリットがあります。
それが「特定分野の商品知識・経験」です。
この商品知識や経験が活きるのが分析型の官能評価です。
分析型の官能評価では評価物の特性を的確に識別したり、表現したりする能力が求められます。これらの能力は日常生活で身につくものではありません。
しかし社員は自社商品や周辺・類似商品を試す機会が多く、知識経験は申し分ありません。そもそも入社するくらいですからその分野に多少なりとも興味を持っており、興味のない人に比べて情報量が格段に多くなります。
社内パネルのメリットは「分析型パネル」として使うときに発揮されます。
つづいて、社内パネルを新たに構築する際のポイントを挙げます。
1.目的をはっきりさせる
2.パネル制度と企業文化は両輪(形骸化を防ぐ)
3.マネジメントは成果が出るまで時間がかかることを理解する(ただし、その成果は大きなものとなるでしょう)
第1のポイントは、前述のメリットを活かし、デメリットを抑制するために大切です。実際には社内パネルで嗜好評価も行うと思いますが、一度は一般消費者の結果と社内評価の結果を比較をしておくことが大切です。両者にどのくらいの乖離があるのかを知っておくことは、その後の社内評価の結果を見るときの参考になります。
ですが、お奨めは分析パネルとして管理・育成していくことです。
第2のポイントは、パネル制度と企業文化です。社内に評価員制度を設けたいというご相談をいただきますが、社内パネルが機能し始めるには企業文化として浸 透しなくてはなりません。なぜなら、社内パネルは業務を一時中断して評価に参加することもありますが、上司がその価値を認めていなければ参加しにくくなり ます。場合によっては評価参加者が「サボりやがって」と白い目で見られることもあります。成果をあげている企業では評価業務に理解があるため、評価への参 加率が高まり、精度のよい結果が得られます。よい商品が開発され、それに参加したパネルは尊敬の眼で見られます。これが良循環となって、さらに良いデータ、良い商品、良いパネルが生まれるのです。
しかしながら企業文化の浸透には時間がかかります。
そこで最後のポイントは、マネジメントレベルの方は成果が出るまで時間がかかることを理解することが必要となります。企業文化だけでなく、官能評価技術の向上、ノウハウの蓄積にも時間がかかります。
思い出してみてください。IT導入のときにも目に見える成果が出るまでに時間がかかりませんでしたか?
今回は社内パネルのメリット・デメリット、およびパネル構築にあたってのポイントをご紹介しました。
パネル選抜・訓練・管理にあたってはISO8586-1,2に詳しく記載されております。
弊社ではISOに基づいた制度の導入支援をしております。
お困りの際にはご相談ください。
今回はここまで。では、また!