効果まんTEN

■□■□■□■官能評価TT通信No.24■□■□■□■

さて、今回のテーマは「10の効果」です。

実験計画や、試料の提示を検討する上でいくつか考慮すべきことがあります。官能評価ならではのポイントです。取り除ける影響はできる限り取り除いて、正確なデータを取るように務めたいものです。

今回は心理的効果・生理的効果にはどのようなものがあるかをご紹介します。中・上級者には退屈かもしれませんが、概要のみにとどめたいと思います。

データに影響を及ぼす効果には生理的なものや心理的なものがあります。今回は主な10個の効果を紹介します。

1.記号効果・・・試料の性質に関係なく、記号に対する嗜好によって判断を決定する傾向
2.順序効果・・・複数の刺激を評価する際に、後の刺激を過大もしくは過少に評価する傾向
3.位置効果・・・試料の性質に関係なく、試料の置かれた位置によって選ばれる傾向
4.練習効果・・・練習によって評価者の判断が変化すること
5.避連続性/避対称性(弊社造語)・・・試料の性質に関係なく、判断が連続性や対象性をもつことを避ける傾向
6.期待効果・・・評価者が何らかの先入観が判断に影響を及ぼすこと
7.順応・・・評価者の刺激に対する感受性が無意識に調整されること
8.対比効果・・・複数の刺激を評価する際に、一つの刺激が他の刺激の反対の性質を強める傾向
9.疲労・・・刺激に対する感受性が継続的負荷によって低下すること
10.連想/共感覚・・・一つの感覚刺激(色、音、香りなど)が刺激となって他の感覚刺激が生ずること

以上ですが、主な効果について簡単に事例を含めて説明します。

記号効果とは、試料の性質に関係なく、記号に対する嗜好によって判断を決定する傾向です。例えば3つの試料に「1」「2」「3」と番号を 振ったときに試料の違いに関わらず「『3』が好きだから『3』を選ぶ」という傾向です。国内外で様々な検証がなされており、ISOが試料の記号に推奨する 『3桁ランダムコード』はその対策といえます。3桁の場合でも、「184」(いやよ)などの意味が取れるコードや、「117」(時報の電話番号)など特定 の意味を持つコードは避けたほうが良いでしょう。

順序効果とは、複数の刺激を評価する際に、後の刺激を過大もしくは過少に評価する傾向です。対比効果に似ていますが、対比効果は同時比較を 含んでいるのに対し、順序効果は時間的な順序をもった効果を指します。対策には評価の間にリンス(Rinse)すること(「水で口ゆすぎ」をしたり「無塩 クラッカー」を食べる)や、実験を評価の順番が均一になるように計画するなどがあります。

位置効果とは、試料の性質に関係なく、試料の置かれた位置によって選ばれる傾向です。3点試験法ならば、3試料を直線上に並べてしまうと真中の試料が品質に関係なく選ばれてしまうことが報告されています。対策には実験方法で行なう方法や評価者に訓練を施すのが良いでしょう。

練習効果とは、練習によって評価者の判断が変化すること。トレーニング期間ならばありがたい効果ですが、評価セッションの間に判断に変化が 生じるのは好ましくありません。トレーニングをして判断が安定したところで一気に評価を終えてしまうのが良いと思います。テスト前に練習試料を与える方法 がありますが、疲労(後述)が高まるので可能な限り本当に評価したい物以外は評価したくないので実験計画で対処することが多いです。

避連続性/避対称性とは弊社の造語ですが、試料の性質に関係なく、判断が連続性や対象性をもつことを避ける傾向です。例えば評点法で1が続いたり、2点試験法で右左右左のように一定のパターンが見られたとき、それを避けようとするなど。教示方法や実験計画によって対策します。

期待効果とは、評価者が何らかの先入観が判断に影響を及ぼすことです。テスト前に品質や特性に影響を及ぼすと思われる情報が得られた場合、 判断が無意識にその期待にこたえてしまうことがあります。価格や製造方法などがわかっていると「高いものは良い」「特許製法だから良いはず」などに影響を 受けることがあります。マーケティング手段としては有効ですが、官能評価的には影響を排除すべきです。

順応とは、評価者の刺激に対する感受性が無意識に調整されることです。わかりやすいところでは、暗いところから明るいところに出たとき、最 初はまぶしいが徐々に調整されて見やすくなる明順応がああります。刺激が強いほど、味覚ならば濃度が大きいほど順応がおきやすくなります。また、感覚の中 で嗅覚が最も順応が起こりやすいといわれています。たしかに、臭いのある部屋に入ったときは気になるのに、すぐに気にならなくなるのも順応のためですね。
芳香剤のあり方として、臭いを消すのも一つのアプローチですが、順応の時間を限りなくゼロにできれば臭いを感じさせないという目的を達成できるかも・・・(余談です)

対比効果とは、複数の刺激を評価する際に、一つの刺激が他の刺激の反対の性質を強める傾向のことです。同時に刺激を与える場合を同時的対比、時間的前後関係がある場合は継時的対比といいます。
順序効果は継時的対比の一種だと考えていますが、厳密な違いについては私の不勉強のため分かりません。分類上の問題だと思うので、実務上は同じものとして対策しています。

疲労とは、刺激に対する感受性が継続的負荷によって低下することです。疲労には精神疲労と身体疲労があり、表出する事象は様々です。弊社で はモチベーション低下は精神疲労の一種として検討しています。個人的には、身体疲労の測定の方が比較的容易で、精神疲労の測定はまだまだ未知の領域だと考 えています。

最後は連想/共感覚について。これは一つの感覚刺激(色、音、香りなど)が刺激となって他の感覚刺激が生ずることです。匂い(嗅覚)をかいでイメージ(視覚)が浮かんだり、音(聴覚)を聞いて色(視覚)をイメージするなどがあります。
応用例として音感トレーニングでは音名と色をリンクさせて覚える方法があります。食品の例では、白みがかったコーヒーと黒いコーヒーでは、黒い コーヒーを見た瞬間に「ブラック、苦そうだな」と想起させてしまったり、白みがかったコーヒーを見て「ミルク感があって甘そう」と考えてしまうことで判断 に影響が出てしまうことがあります。対策として、色付きライトによるマスキングするのが良いでしょう。

今回は項目を羅列した感がありますが、とりあえず頭に入れておくだけでも良いと思います。多くの効果は、実験計画で対策できることが多いです。ま た、いくつかの効果は互いにトレードオフの関係になっていますから、事例ごとに目的や制約条件の中で個別に判断していくのがよいでしょう。

今回は「10の効果」というテーマで心理的効果・生理的効果の代表的なもの10個をご紹介いたしました。

それでは、また!

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基礎が大事って言うけど・・・

■□■□■□■官能評価TT通信No.23■□■□■□■

今回のテーマは「基礎解析」です。

「基礎解析」といっても数学の科目ではありません。

官能評価に限らずあらゆるリサーチなどは解析し、何らかの知見を得るためにデータを取ります。ところが苦労して取ったデータも解析如何で間違った結論が導 かれてしまうことがあります。データの取りっぱなしは資源のムダですが、間違った結論は大きな損失を生み出すことがあります。調査の結果を信じて新しい製 造ラインを造って新商品の発売をしたのに、まるっきり売れないとなったら、まだデータの取りっぱなしの方がましです。

そんなことにならないよう、解析の基礎的なところを押さえておくことが大切です。

ここで解析全てについて語ることは出来ないので、今回は解析を始めるにあたってのポイントを述べたいと思います。もちろん調査の狙いや方法によって様々なバリエーションがありますが、一般論としてお読みください。

大原則は「『単純』から『複雑』へ」です。

解析の原則はシンプルな解析から始めることです。具体的には1つの変数について基礎統計量を分析するところから始めます。以前データの種類にはい くつかあるとお話しましたが、今回は2つに分けて説明します。1つは数量データ、もう1つはカテゴリデータです。まず、得られたデータが数量データなら3 つの数値を把握しましょう。

1.平均値(Mean)
2.中央値(Median)
3.最頻値(Mode)

ご覧の通り英語にすると頭にMがつくので私たちは「3M」と呼んでいます。「スリーエム」だとポストイットの方を思い浮かべてしまうので、「さんえむ」と読んでます。解析担当者からレポートがあがってきたとき、
「この項目の3Mはどうだった?」
なんて使い方をしています。

この3つ数値は特色や特徴を大雑把につかむのに適しています。我々がよく目にする例は、クラスの男女の身長を比較する時なんか「平均」を使 いますね。平均といっても計算方法によって算術平均や幾何平均、調和平均があります。我々が一般に言う「平均」は算術平均といって、全部足して、データの 数で割ったものです。他の平均については、統計入門の本には書いてあると思いますので、算出方法や特徴などを調べてみてください。

この他、中央値最頻値も見逃せない数値です。中央値はデータを大きさの順番に並べた時、真中に来る数値です。 偶数の時は真中2つの平均値をつかいます。最頻値はもっとも多い数値です。例えば、5カテゴリスケールで評価をしたら (1,1,2,2,3,4,4,4,4,4,5)だったとしましょう。4が最も多いので最頻値は「4」になります。

以前、EDA(探索的データ解析法)でお話しましたが、探索的に解析を進める場合は中央値が有効です。パネルにばらつきがあるときなど平均値を使うと大きく数字を振ったパネルの影響を強く受けてしまいますが、中央値だと影響が小さくなります。

さて、データの特色をつかむ方法がもう一つあります。皆さんもよく使っていると思います。先の3つ数値(3M)は「数量データ」にしか使えませんが、この方法はカテゴリデータにもつかえます。というか、カテゴリデータはこの方法しかありません。

それは「比率」です。「パーセント(%)」ともいいますね。

パーセントの計算は説明するまでも無いでしょう。これによってデータの大雑把な特徴をつかむことが出来ます。

このような数値でデータの大雑把な特徴をつかんだら、もうちょっとミクロの視点でデータを見てみましょう。つまり、「ばらつき」です。仮に平均が同じでも(5,5,5)と(4,5,6)では内容が違います。

このバラツキを表わす数値には標準偏差や変動係数などいろいろなものがあります。
が、ここでは「ヒストグラム」だけを取り上げます。

何はともあれ「ヒストグラム」を作りましょう。そして「眺め」ましょう。

なぜ「眺め」るのか?

実はこの後の解析を進めるときに「何か変だな」と気がつくための準備なのです。

例えば、正規性を前提とした分析を行なう際にデータが正規分布しているかどうかを確認します。機械的に「正規性の検定」をすることは出来ますが、 それだけで良い分析になる訳ではありません。ヒストグラムを見て、パラメトリック分析でやるのかノンパラメトリック分析でやるのか、検定の結果を参考にす ることは出来ますが最後に決めるのは人間にしか出来ません。

統計ソフトはボタン一つでずらーーーっと計算結果が出てきます。何らかのミスでデータが書き換えられてしまっても気が付かないことがあります。以 前、未熟な私は手で遊んでいたボールペンの先でキーボードを押してしまって、データに無駄な数字が加わったのに気が付かずに分析したことがあります。これ に気がついたのは、1変数での基礎統計量とヒストグラムの傾向がイメージに残っており、分析の結論に違和感を感じたからでした。

基礎分析は後々まで大きな影響をもってきます。そして後の分析手法の選択の鍵を握っています。

結果知りたさに、この基礎分析をないがしろにしてしまう場面に遭遇します。私も他人のことは言えず「とりあえずピーシーエー!」など、ついやってしまいます。
※ピーシーエー・・・Principal Component analysisの略でPCAと表記する。主成分分析のこと。

しかし、基礎分析はデータを有効活用するために、そして分析の無駄を省くために必要です。

最後に原則をもう一度。

「『単純』から『複雑』へ」

単純に1変量で分析を始め、
もうちょっと複雑になって2変量、
さらに複雑に多変量。

というようにシンプルな解析を積み重ねていけば多変量解析などの複雑な解析でも恐れることはありません。場合によっては知りたいことはシンプルな解析だけでわかってしまうこともあります。

恐いのは「ブラックボックスに踊らされること」です。

今回は解析始まり「基礎解析」のポイントを述べました。

では、また!

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センサリーの4S

■□■□■□■官能評価TT通信No.22■□■□■□■

さて、今回のテーマは「4S」です。

官能評価では様々な要因が絡み合っていて、全部の要因に注意を払っていては前に進みません。そこで重要なポイントだけを押さえて実施していくことも実務者としては必要です。弊社では官能評価を実施する上で重要となるポイントの頭文字をとって、『センサリーの4S』と呼んでいます。

『センサリーの4S』
1.Subjects(パネル)
2.Scale(モノサシ)
3.Sample(試料)
4.Situation(場所・状況)

注記:現在では2つ目をScaleではなく、ScoreCardとしています。

第1に、Subjects(パネル)です。これはブログでも何回か書いていますが、パネルの能力如何で評価の結果が大きく変 わってしまいます。本来、評価設計の順番としては「知りたいこと」を知るための評価を企画し、その評価に必要なパネルをリクルートしてくるのが適当だと思 います。しかし、現実には社内のパネル使用が前提ということが少なくありません。そのため、利用できるパネルの能力や人数が決まることで他の項目を検討し ていくというのが実践的です。

第2に、Scale(モノサシ)です。普通、定規(モノサシ)は誰でも対象物を測ることができます。ところが官能評価のモノサ シは使う人(パネル)によって使えたり、使えなかったりします。官能評価では、相対評価と独立評価(絶対評価)がありますが、相対評価はおおむね誰でも使 えます。しかし、独立評価(絶対評価)はパネルの評価能力がないと使えません。パネルの能力に合わせた評価尺度(モノサシ)を使うことが大切です。

第3に、Sample(試料)です。官能評価では統制困難な要因が多くあります。その中でも試料の影響が大きいですから可能な 限り統制したいものです。但し、現実的には非常に困難が伴います。人工的に調製できる場合は良いのですが、海産物・農産物など官能評価実施者の思い通りの 試料を集めることが出来ないことがあります。これ以外でも社内的事情から、有り合わせの試料で評価をすることもあるでしょう。しかし、せっかく手間をかけ てデータを取るのですからエネルギーを注いで試料を準備するようにします。

第4に、Situation(場所・状況)です。官能評価を「どこで」「どんな状況で」行なうのかは、評価目的(知りたいこ と)で決まります。一般的に2つの状況が考えられます。1つは、実施者側が場所を提供する場合。もう1つは評価者側で確保する場合です。前者は評価室や会 議室で実施するような場合です。要因とする属性を絞込み、環境などの要因を統制することが出来ます。後者は自宅に持ち帰って評価してもらうような場合で す。あまり属性は絞り込まず、各要因の統制よりも実際の使用環境を再現することに重きをおいた設計です。どちらの場合でも大切なのは「その場所で評価を実施することで、知りたいことを知ることができるのか」を問うことです。

以上の4つのポイントを押さえれば、全くおかしな評価にはならないはずです。また、この順番も重要な順に並べていますので順にチェックしていくことをお奨めします。

当たり前のことしか並んでいませんが、当たり前のことをするのが難しいのも事実です。

弊社では、官能評価の経験が少ない方に対しては、常にこの『センサリーの4S』を念頭において評価の実施をするように言いま す。この手の頭文字(例えばQCの『5S』、マーケティングの『4P』など)はありふれていますが、非常に便利なツールだと思います。一度覚えたら忘れな い程度の簡単なチェックリストで、情報の抜け漏れを防いでくれます。私も『センサリーの4S』は未だに使っていますし、報告書を書くときは『5W2H』に気をつけています。

皆さんも手軽に官能評価のクオリティーチェック、してみませんか。
今回は『センサリーの4S』でした。
ではまた!

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虎のANA

■□■□■□■官能評価TT通信No.21■□■□■□■

さて、今回のテーマは「パネル訓練環境」です。

このブログでもパネルの重要性は述べてまいりました。特にその中でも分析型パネルは訓練が欠かせません。しかし、専従パネリストを持つ企業は一握りの企業だけです。中小企業や小規模で官能評価を行なっている担当者はどのようにパネルを訓練していけばよいのでしょうか。

目的や精度に応じて様々な状況が考えられますので、一般論として訓練のためにどのような環境を提供していったらよいのかを考えてみたいと思います。

専従ではないパネリストの場合、評価会の実施は基本的に彼らの意欲に支えられています。そこで彼らの意欲を高めつつ、能力も高めていく環境や方法が必要です。そこで私たちが考える「分析パネルの能力を引き出す条件」は次の3つです。

1.能力を客観的に評価する
2.能力を向上させる環境を提供する
3.嗜好性や感情に関わることを評価しない

まず、第1の「客観的能力評価」はいうまでもありません。基準を決め、誰もが納得いく判断・評価をするというものです。味覚や嗅覚などの感覚は絶えず変化 しており、様々な要因に影響を受けます。パネリストの社内選抜において1度きりの検査で落とされた方が「あの時は調子が悪かった」と泣きついて参加を希望 されたとしても、これは断るべきでしょう。もし、これでその人が採用され、同様の状況で落ちた人がいたら担当者の印象も悪くなりますし、選抜検査自体の信 憑性も疑われてしまいます。選抜に限らず、能力の評価は可能な限り数値などで客観的に提示することが重要です。

弊社では、定性評価の客観性を補完するため、表現した全てをテキストデータ化し、テキストマイニングによって客観性を高めております。

第2の「環境の提供」については官能評価担当者だけでは出来ない問題があります。評価会への参加のため、業務を一時抜けなければならないとしたらその部署の同僚の支援が必要になります。ここでは官能評価担当者側で提供できる環境に付いて考えてみます。

私がお奨めするのが、パネリストが訓練したい時にいつでも訓練できる環境を提供することです。パネリストは自己の能力開発に興味があります。それ を客観的に評価・フィードバックする環境を作り出せば、ゴルフのスコアに執着するお父様方のようにヒマさえあれば素振りしてくれることでしょう。

もう一つメリットがあります。パネリストと官能評価担当者のコミュニケーションが密になることによって情報量が変わってきます。

ぜひ、出入り自由なパネルトレーニング室の開設はいかがでしょうか?

そして、最後が「嗜好性や感情には触れない」ということです。これは担当者側が気をつけなければならないと思います。プロフェッショナルパネリス トなら『そんなことで気にしていたら仕事にならん』のですが、専従ではない、官能評価に詳しくないパネリストだと気を悪くします。仮に聞く場合も「○○さ ん」ではなく、「性別○、年齢△才、の代表者として来ていただいた○○さん」として聞いたほうが良いでしょう。個人と属性を切り離すことによってクッショ ンが出来ます。

以上、3つの条件について書きましたが、やはりお奨めは「出入り自由なパネルトレーニング室」です。場所が余分に必要となるので中小企業ではイタイと思うのですが・・・。

今回は「パネル訓練」でした。
ではまた!

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官能評価って人体実験なのかも

■□■□■□■官能評価TT通信No.20■□■□■□■

さて、今回のテーマは「実験計画法」です。

官能評価を行なう上で実験をどう行うかという実験計画法は避けて通れません。今回は実験計画法の概要について述べたいと思います。

まず、実験計画法の基本はフィッシャーの3原則として知られています。
1.反復(replication)
2.ランダム化(randomization)
3.局所管理(local control)

実験計画には2つの目的があります。
1.条件の均一化(乱塊法、ラテン方格法、ブロックデザイン(IBD,BIBD))
2.実験回数の削減(直交法、ラテン方格法、BIBD)

実験を行なう上でベタな方法といえば、全ての組み合わせについて実施する方法です。
全ての組み合わせを行うということは情報量が多く分析から得られることも多いのですが、要因が増えた時にコストや実験管理の問題が出てきます。
単純に3水準3要因として、3の3乗で、27実験が必要です。
もう一つ要因を増やすと、3の4乗となり、81実験が必要になります。
繰返しデータも欲しいなんて言い出したら大変なことになってしまいます。こうなってくると実験ごとの局所管理が出来るのかという問題が出てきます。毎日1 実験を行なったとしても約3,4ヶ月かかります。四季の彩りが豊かな日本ですが、もし季節変動があるとすれば最初にやった実験と最後の実験では条件が異な ることになります。

そこでまず第一の「条件の均一化」ということを考えます。

仮に条件の均一化が計れたとして次の問題は、企業がそんなに時間とお金をかけていられないということです。(無論、担当者もそう思うでしょう)

そこで第二の目的である「実験回数の削減」をすることになります。

ですからお金に余裕があって、いつでも完璧に環境を再現できる実験室をお持ちで、実験回数を減らす必要がないなら、実験計画法なんて知らなくてもいいのです(極端ですが)。

現実的にはそんなことはなく、あらゆる制約の中で実験を進めていかなくてはなりません。

ゆえに実験計画法を理解し、実践する必要が出てくるのです。

もちろん全てにおいて良いことばかりではありません。実験回数の削減をするということは精度を落とすということになりますし、分析から得られる情報量も減ってしまいます。一般的には3因子以上の交互作用は小さいので考慮しませんが、もしかしたら・・・ということもあります(設計時点に適切な知恵があれば避けられるはずなのですが)。

具体的な実験計画法については少ない紙面でどこまで説明すればよいか悩んでしまったので、扱わないことにしました。

その代わりおすすめの入門本を2,3お知らせしておきます。

永田靖著「入門実験計画法」は非常にわかりやすく、かつモデル式も記載されておりベーシックな一冊だと思います。但し、ハードカバーの教科書っぽ さが嫌という人もいます。そこで、分散分析と実験計画法を理解する上では大村平著「実験計画と分散分析のはなし」でじっくりと1歩1歩進むのも良いでしょ う。薄いので通勤途中でも読めます。但し、計算機前提なのでエクセル派の方はニ見・西著「課題解決のための実験計画法」(?・?)が良いと思います。分析 ツールやエクセル関数を使いながら理解できますし、ルーチンな評価だったら作ったシートをそのまま業務で使えます。

官能評価では疲労や繰返しが出来ないなどの制約が多くあります(例えば、私はビールののどごしの評価は1回目でアウトです。のどごしですから飲ん でしまいますので、あっという間に酔ってしまいます)。実験計画法は、このような制約の中で実験回数を減らし、しかし情報量は維持するといううれしいツー ルです。一方で多少の勉強が必要なのもまた事実です。しかし、身につければ非常に強い武器となってくれると思います。

ぜひ、利用してみてはいかがでしょうか。
今回は「実験計画法」でした。
ではまた!

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今週のランキング情報

■□■□■□■官能評価TT通信No.19■□■□■□■

今回のテーマは「順位データの活用」です。

官能評価を行なう時、尺度を意識することは非常に重要です。その後の解析手法に影響を与えますし、そもそも尺度によっては分析できないこともあるからです。

尺度には4つの種類がああリます。
1. 名義尺度(nominal scale)
2. 順序尺度(ordinal scale)
3. 間隔尺度(interval scale)
4. 比尺度(rational scale)

比尺度は、比率が確保されており四則計算が出来るので様々な解析に用いることが出来ます。一般に多変量解析に用いることのできる尺度は間隔尺度と比尺度です。実際、一番用いられているのが間隔尺度ではないでしょうか。

その間隔尺度は、まさにその名前の通り等間隔性が確保されていることが前提となります。9ポイントスケール(1,2,・・・8,9)であれば、1と2の間 と8と9の間の間隔が等しくなければなりません(この等しいというのも精度にこだわりだすと非常に厄介ですが、ある程度の等間隔性を確保していると考えて ください)。以上のことを保証する尺度を開発するにはコストがかかります。

また、いくつかの分析では前提条件として「正規分布」であることが求められることがあります。通常は正規分布であると仮定して分析を行なっておりますが、中には正規分布しないものもしばしば見受けられます。

そこで正規分布していなくても分析できる方法はないかというとあるんです。それが「順序尺度」(順序データ)です。統計に詳しい人なら今更でしょうが「ノンパラメトリック」という言葉を聞いたことがあると思いますが、これは母集団の分布が特定できない(正規分布しているかどうかわからない)ときに用いられる手法です。

この他、尺度がきちんと検証されていなければ等間隔性の確保は難しいでしょう。そして、あまりトレーニングされていないパネルで実施することもあります。トレーニングを受けていないパネルによる評価でも等間隔性を確保するのは困難です。

順序データはデータ収集後の柔軟性が高い手法です。狙って取られることはもちろん、実際の業務の中では間隔尺度でデータを収集し、分析の時点で順序データ化することもあると思います。このようにデータを取ってからの柔軟性もあります。

なかなか尺度開発・パネル育成に時間やお金をかけられないことも多いと思います。

忙しい業務の中で、母集団の正規分布・尺度の等間隔性・パネルの能力などに不安がある時は、順序データを活用していくことをおすすめします。

今回は「順序データの活用」でした。
では、また!

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EDではない

■□■□■□■官能評価TT通信No.18■□■□■□■

さて、今回のテーマは「探索的データ解析法(EDA)」です。

一般に「統計学」というと確証的データ解析法(Confirmatory data analysis; CDA)のことを指します。CDAは仮説やモデルを立て、データで検証するのが基本的な考え方です。しかしながら、CDAはモデルが必要であることや外れ 値に対する影響が強い(抵抗性が弱い)ことなどの弱点もあります。そもそも情報の少ない初期のフェーズでは最適なモデルを作ること自体が困難です。

そんな中で柔軟にデータを解析する方法が模索されてきました。

1960年頃にJohn.W.Tukeyによって提唱され「Exploratory Data Analysis」(1977, Addison-Wesley Publishing Co.)というそのものタイトルで探索的データ解析法(Exploratory Data Analysis;EDA)が出版されました。

近年の統計ソフトの機能向上と低価格化に伴い、EDAが急速に発達してきました。「データマイニング」にもつうじる考え方で、ビジネスの現場では急速に取り入れられています。

EDAの特徴は4つです。
1.ロバストネス(抵抗性が強く、強健な手法)・・・異常値の影響を受け難い「中央値」を使う。例)中央値分散分析
2.残差分析・・・モデルへの当てはまり度合いを評価した後、残差を分析することによってより良いモデルを構築する
3.データ変換による再表現・・・べき乗や対数、比率変換などのデータ変換によってデータの潜在的パターンを見つけ出しやすいよう構造を再表現する
4.データの視覚化(ビジュアル化)・・・データの視覚化によって妥当性の確認や新たなパターンの発見に役立ちます。

官能評価に限らず、ビジネスでは仮説検証型(CDA型)のデータ解析よりもEDAやデータマイニングのように探索型の需要が高まっています。商品 が多様化し、プロダクトライフサイクルが短くなり、モデル(仮説)を作って検証してから商品化というのでは遅いと考えられているからかもしれません。

最近の統計ソフトは探索型を指向したものが多く出回っています。例えば、SPSSではメニューに【分析】→【記述統計】→【探索的】というコマンドがあります。またSAS社のJMPは探索的データ分析ツールであることを前面に押し出しています。

各社様々な手法やグラフを提案していますが、奥野忠一氏が7つ道具として次の手法を挙げています(もとはTukey【前述】が提唱したものですが奥野氏がまとめたものを引用いたしました)。
1.幹葉表示(Stem and Leaf display)・・・ヒストグラムに代わる手法
2.要約値(Letter value display)・・・平均値・標準偏差に代わるもの
3.箱ヒゲ図(Box whisker plots/Box plots)・・・分布形と“外れ値”の図的表現
4.X-Y表示(X-Y plotting)・・・散布図に代わるもの
5.抵抗性のある直線回帰(Registant line)・・・回帰直線の代用
6.中央値分散分析(Median polish)・・・二元配置分散分析に代わるもの
7.時系列データのならし(Smoothing)・・・移動平均に代わるもの
(出典:奥野忠一著「現代統計実務講座別冊テキスト-探索的データ解析法-」p15)

EDAをやってみたいという方、厳密な手法についての議論は脇に置いて、まずはデータをグラフ化して、いろんな視点で眺めるのが良いと思います。

グラフィカルな統計ソフトを用いて、その中で習得していくのが得策です。

但し、EDAは統計知識があって初めて活用できる手法だと思います。CDA(確証的データ解析法)を補完する手法として取り入れていくのが良いでしょう。

官能評価でも探索的な評価の需要が高まっています。今後の流れとして目が離せません。

ではまた!

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官能のおへや

■□■□■□■官能評価TT通信No.17■□■□■□■

さて、今回のテーマは「評価室」です。

官能評価室に関してはISOではISO8589「官能試験-試験室の設計の一般指針」(邦訳なし)で規定されています。

弊社ではクライアント先で評価を実施することもありますが、上記ISO8589に基づき独自のチェック表をつくり事前に確認しています。

例として、分析型評価を行なう評価室のチェック項目を挙げてみます。

A.環境条件
1.ロケーション
2.温度と湿度
3.ノイズ
4.臭い
5.装飾
6.照明

B.ブース
最低限3室、通常5~10室
0.9m(幅)×0.6m(奥行き)

C.準備室
1.評価室のすぐ近くに置くこと
2.評価者が評価室に行くために準備室を通らないこと
3.床や天井、備品は臭いなどを容易にメンテナンスできるような材料であること

環境条件については、各項目について3レベル(A,B,C)に分類し記録します。環境条件を記録しておくことで社内外のデータ比較や過去のデータ比較をする際に役立ちます。

特に過去の評価事例と異なった結果が得られたとき、その原因がどこにあるのかを特定できないと過去の評価データが活かされません。

せっかく時間とお金をかけて取ったデータです。活かしたいものです。

官能評価は、評価の実施プロセスを克明に残していく(管理していく)ことが重要です。論文でも評価手法や分析手法について紙面を割くより、具体的な実施のプロセスを記載して欲しいと思います。なぜなら、官能評価の肝は実施プロセスにあるからです。

論文は別としても、会社の資産として評価データを生かすためにはパネルの状況や評価環境、つまり評価室の状況も記録しておくことが大切です。

あらたに評価室を設けるのは難しいですが、レイアウトや備品を考慮することで評価環境を改善することが出来ます。

ISOや書籍を読むことでも充分これらの知識は得られると思います。(弊社でもこれら相談に乗っております)

ぜひ、環境改善でよいデータを集めてください。

今回は「評価室」でした。
ではまた!

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売上激増!官能評価

■□■□■□■官能評価TT通信No.16■□■□■□■

さて、今回のテーマは「営業から見た官能評価」です。

皆さんのところでは官能評価の結果をどのように使っているのでしょうか。

商品開発では官能評価の結果を営業に伝えて営業支援をすることもあります。今回は営業側から見たとき、どんな情報が欲しいのかを考えます。

まず、営業の仕事はなんでしょうか?

営業の仕事とは売ることです。

しかし、「買ってくれ」「はい、わかりました」とは行きません。
そこで商品やサービスの良さを説明して購入者にメリットがあることを説明します。

ところがこのメリットというヤツが曲者です。なぜなら常に変化していくからです。

そこでプロダクトライフサイクルの推移の中で求められる要素(メリット)を考えてみましょう。
1.機能
2.付加価値
3.デザイン
4.エモーション(経験価値)

先の2つは商品そのものの有形の価値で、後の2つは商品に付随する無形の価値です。

「健康食品」を例に説明します。
まず、「健康のための改善効果がある」という機能を満たして販売されます。この時点では「味」にあまり拘らなくても機能を売りに販売することが出来ます。(『1.機能』の利益訴求)

次に、いくつかの競合がでてくると機能だけでは売上に伸び悩みが出てくるため、「味」をよくします。なぜなら、いくら健康に良くても続けられなければ効果 は薄いし、何よりも不味いものは口にしたくないのが人情でしょう。それを解決するために「味の改善」された商品が市場に出回ります。(『2.付加価値』の 利益訴求)

さて、味も良くなってくると今度は「見栄え」が気になります。いわゆる「デザイン」です。私たちは社会生活を送る上で毎日移動を繰り返して生活しています。その中で食品も「持ち運び」されることが多くなり、他人の目に触れることも多くなるでしょう。必然的にデザインの良し悪しが購入決定の要因に関わってきます。(『3.デザイン』の利益訴求)

効果があり、味も良く、デザインもいい。でも、そんな商品が一杯になったら、また利用者は購入の要求を厳しくしてきます。それがエモーションです。感性マーケティングとか、経験価値マーケティングなどといわれるアプローチです。わかりやすい例では、マスターカードのCMで流れている「プライスレス」 というやつです。祭りなどで見かける「チョコバナナ」は昔からこのアプローチではないでしょうか。どう見てもバナナにチョコをかけただけなのですが、祭り などでは値段が高いにもかかわらず売れています。なぜでしょうか?この解釈として購入者は「チョコバナナ」を買っているのではなく「チョコバナナを買った 祭りの思い出」を買っているのだとするのがエモーショナルマーケティングのアプローチです。(『4.エモーション』の利益訴求)

さて、営業の話からプロダクトライフサイクルの話へと飛んでしまいましたが、ここで話を営業に戻しましょう。

営業の仕事は売ることです。
ところが消費者はプロダクトライフサイクルの中で様々なことを要求してきます。
同時に競合が次々と現れてきます。
そこで営業は次のことをしなくてはなりません。
1.消費者の要求を満たしていることを説明すること
2.競合商品より価値があることを説明すること

ここで営業が官能評価に求めるのは何でしょうか?
上記2項目そのものです。つまり、
1.消費者の要求を満たしていることを説明できるデータ・資料
2.競合商品より価値があることを説明できるデータ・資料

ということです。

例えば、官能評価実施者が論文を書いてジャーナルに記載されたとして研究の進歩を喜ぶかもしれませんが、営業サイドではそのジャーナルを持って営業に行けることを喜ぶのです。このように成果が各々の目的を満足していれば良いのですが、一方の満足で終わってしまうとギクシャクしてしまいます。
評価実施者は、
「この研究成果の意義をなぜ営業はわからないんだ」
営業は、
「そんな研究成果じゃインパクトが薄いんだよ」
と。

企業という組織の中で活動していることを考えると、相互のコミュニケーションの機会を増やして組織の最適化を進めていくべきでしょう。

このブログの読者は官能評価の実施側の人が多いと思います。そこで、お奨めしたいのが
「営業が欲しがるデータを取れ!」
です。様々な組織構造があるので一概には言えませんが、他部署で欲しがるデータを取れる官能評価部隊は周りのサポートも得られるため良いサイクルで回っています。

社内の営業をお客様と思えば、お客様が求めていることに答えていくのも必要なことです。

ぜひ、社内のお客様も満足させてやってください。

今回は社内のお客様、営業サイドから見た官能評価について述べました。
では、また!

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おいしいから売れない?

■□■□■□■官能評価TT通信No.15■□■□■□■

さて、今回のテーマは「“おいしい”と“売れる”」です。

おいしい商品が全て売れる商品だったらどんなに楽でしょうか。しかし、現実はそう簡単ではありません。もちろん、おいしい商品のほうが売れる可能性は高いのですが、強力な要因とはいえません。

理由は2つです。
1つは、顧客が購入を決定する際に「おいしい」という要因が必ずしも決め手になっていないことです。値段で購入するヒトもいるし、パッケージやCMの効果で購入を決めているかもしれません。

もう1つは、食品のほとんどが試用なしで購入を決める商品であることです。大手の新商品ならば、試食をすることもあるでしょうが、ほとんどの新商品は試食 なしで購入するか否かを決めなければなりません。つまり、新商品の購入決定に「おいしい」かどうかは関係ないといえます。「おいしい」が要因となって売れ るのは再購入に限ってということになります。
※消費者の購買行動についてはマーケティングか、そのものずばり「消費者行動」の本を参照ください。あまりに膨大なのでとてもじゃありませんが紙面が足りません。

では、なぜ企業はおいしい商品を創る必要があるのでしょうか。
味なんて売上に関係ないかもしれないのに・・・。

理由は3つです。
1.企業としての存在意義
2.顧客のロイヤリティーを高める
3.長期的売上の向上

1つめの「企業としての存在意義」とは、つまり「あなたの会社が無くなって困るヒトがいますか?」という問いにはっきりと「はい」と答えられると いうことです。おいしくない商品、似たような商品、ありふれた商品ならば明日会社が無くなっても世の中のヒトは困らないでしょう(残念ながら、それが現実 です)。実際、海外の安い商品に押されて淘汰されていくのではないでしょうか。食を扱う企業として生き残っていくために最低限「おいしさ」という価値は提 供して行くべきでしょう。

2つめの「顧客のロイヤリティー」とは、お客様がどれだけあなたの会社の商品に忠誠を持っているかということです。ロイヤリティーを形づくるのは 「信用」です。「ブランド」と言い換えてもいいでしょう。食品は「安全」とか「生命」にかかわる商品ですから、特に信用は大切な要因です。先ごろの牛乳 メーカーの不祥事は「信用」を損なった例といえるでしょう。その結果は言うまでもありません。

3つめの「長期的売上の向上」はロイヤリティーの向上の結果ともいえます。ロイヤリティーの向上によって、顧客は試食なしに新商品の購入を決めて くれます。そしておいしい商品ならば、リピーターになってくれます。リピーターの増加は売上の向上だけではなく利益率も高めます。新規顧客を一人増やすの にかかる費用は、リピーター維持にかかる費用をはるかに上回ります。広告費用を押さえ、同じ売上を確保できるのですから利益率が高まるのは当然です。

おいしい商品をつくることの意義は見い出していただけたと思います。

ところで文頭にも書きましたが、おいしい商品だから売れる商品とは限りません。しかし、おいしい商品を創る意義はあります。

では、おいしい商品売れる商品にするにはどうすれば良いのでしょうか。

それは、官能評価の成果をマーケティングに反映することです。
つまり、官能評価とマーケティングの融合です

おいしい・まずいは官能評価の分野です。これを売れる仕組み造り、つまりマーケティングに組み込んでいくことで「おいしい商品」が「売れる商品」に変わっていきます。

官能評価がなかったらどうなるでしょうか?

キャッチコピーの例を考えるなら、商品の特性を適切に反映していないコピーが出来上がります。
苦味が弱いのに「ビターな○○」
甘いのに「甘味を押さえた○○」など

ウソのコピーは顧客からの信用を損ないます。
逆にコピーが商品の特徴を適切に説明していれば、顧客が購入に必要な情報を提供できたことになります。情報が適切で、顧客が購入に満足すれば、広告に対する信用も企業に対する信用も高まります。

商品が氾濫する今の世の中で、顧客に適切な情報を伝えるのも企業側の責任です。そのために官能評価の成果や知識は十分生かせるはずです。
残念なのは、多くの企業で官能評価の成果が研究開発・商品開発で止まっていることです。

マーケッター、営業、官能評価技術者の各者が歩み寄って、相互の情報交換をすることでもっと官能評価の成果を活かせるようになるでしょう。

ちょっとしたこと、例えば官能評価の順序効果を応用して、試食の順番でどっちがおいしく感じるかを伝えるだけで、営業部隊は喜んでくれますよ。

今回はマーケティング寄りのお話でした。
ではまた。

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