セミナー情報:「官能評価と機器分析のデータ解析」(12/3)

セミナー情報です。
官能評価と機器分析(GCまたはMS)のデータ解析」が12/3に開催されます。
講師は本ブログの最初の著者で、また現アルファモスジャパン センサリープロフェッショナルの平沼孝太氏です。

近年ガスクロメーカーもにおい分析を前面に押し出し、ソフトウェアに多変量解析ツールを標準搭載するようになってきました。アジレント社サイトのアプリケーションノートでも主成分分析という言葉が見られます。

ケモメトリクス・GCソフトウェアにほぼ標準搭載されている主成分分析ですが、これがクセものです。見栄えはわかりやすそうなのですが、いざ説明するとなると非常に難しい。また、ソフトから出力される値の読み方もよくわからない(固有値って?)。

WEBで主成分分析を勉強しようとイロイロ探してみました。個人的に分かりやすいサイトだったのは「タコでもわかる主成分分析」ですが、驚くべきことに、このサイトを読んでも分かりませんでした。タコ以下であることが証明されたわけですが…。(このタイトルは心臓に悪いです)

平沼氏のセミナーは、何といってもアウトプットの読み方をきちんと教えてくれるので、明日からでも使える知識が身につくのがうれしいですね。

レベル的には「タコでもわかる主成分分析」を読んでもわからないことがある人には、お勧めのセミナーです。

◇セミナー名: 官能評価と機器分析(GCまたはMS)のデータ解析

◇主催: アルファ・モス・ジャパン株式会社

◇開催日時: 2010年12月3日(金) 13:00~17:00

◇URL
http://www.alpha-mos.co.jp/event/2010/seminar-20101203.html

時代は多変量! タコ(八)からムカデ(百)に向かっている?

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日本官能評価学会企業部会が発足

7/14に日本官能評価学会 企業部会の第一回会合が開かれました。
20人ほどの参加者があり、食品・飲料を中心に化粧品・日雑系メーカーなどが参加されていました。

名古屋からも参加があり、皆さん意欲にあふれていました。

会合では、部会の方向性や活動内容、活動テーマなどまっさらなところからのスタートという感じでした。

参加して感じたことは、皆さんがかなりマーケティングの知識に興味があるということでした。一方で、マーケティングサイドと官能評価サイド(開発)の意見の食い違いや視点のギャップがあることも認識されているようです。マーケターとして知識を深めたいというより、コミュニケーション対象者であるマーケターを理解するためにマーケティングの知識を身につけたいといった感じでした。

現在、私自身の業務はマーケティングと官能評価の両方に従事しているので、マーケティングサイドからの視点も官能評価サイドからの視点も理解できます。そこには小さいようですが、実は大きな溝があり、この溝を埋めるのは非常に大変だと感じています。

小さい食品会社やレストランならば、商品開発もマーケティングも同じ人が一貫した視点で携わるので、溝が生まれ難いですし、あったとしても自分の中で解決できます。しかし、大企業ともなるとセクショナリズムと相まって非常に難しい問題となってきます。

解決の糸口としては相互理解が最も重要です。

そのきっかけとして企業部会を通じて何らかの貢献ができればいいなと思っております。

日本官能評価学会に所属してなくても参加できるそうです。
ご興味のある方は下記をご参照ください。また、ご紹介もできますので希望の方はご連絡ください(webmaster@taste-technology.com 件名に「企業部会紹介希望」)。

日本官能評価学会-企業部会からのお知らせ-

文責 平沼

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春の門出「アルファ・モス・ジャパン設立」

2009年4月1日にアルファ・モス・ジャパンが営業開始いたしました(日刊工業新聞)。

アルファ・モス社は、におい・味センサーなどの分野でグローバルマーケットリーダーとして多くの顧客を有し、論文も多く発表しています。2008年にはフランスのクロマトグラフィーメーカー(Perichrom)を傘下に収め、商品の幅を広げています。

日本ではプライムテック株式会社が販売代理店として販売を展開してましたが、今回の日本支社発足により本社の指揮の下で日本市場を取りに行くという戦略が見えてきます。そもそもアルファモスが直接の会社を置いているのは米国と中国の2カ国だけでしたが、今回の日本進出で3カ国となりました。力の入れ具合が否応なく高まるでしょう。

アルファモス社はジャン・クリストフ ミフスド(Jean-Christophe Mifsud)が1993年に創業した会社です。ミフスド氏は面白い経歴の持ち主で、アルファモスHPによれば米国企業でのM&A経歴とチバガイギーでのマーケティングマネジャーという経歴を持ち、ニューロケミストリーでPh.Dを取得してます。周りを固める取締役も優秀な方が多く在籍しているようです。

ちなみに本社はEuronext Parisに株式上場しています。残念ながら日本支社の営業開始はあまり大きな材料にはなっていないようですが・・・。

Alpha Mos 株価

アルファ・モス・ジャパンの企業情報には日本語のビジョンが掲載されています。

●私たちは、官能分析における圧倒的なマーケットリーダーとして、包括的な提案力と高品質な技術力に基づき、多くのお客様の商品開発の成功、品質管理の効率化を支援します。
●私たちは、機器分析におけるユニークなソリューションプロバイダーとして、柔軟性と独創性を新たに提供し、多くのお客様の分析技術の迅速化、簡易化、高感度化を支援します。

一方、アルファモス本社のmissionです。

The mission of Alpha MOS is to:
* deliver instrumental measurements of the smell, taste or chemical fingerprint of products
* provide decision tools for R&D, Quality Control, Marketing, Regulatory Affairs and Quality Assurance departments

両者を見比べてみると、ジャパンの方がより包括的なサービスを提供する姿勢が見えてきます。単なる測定機器やツールの提供者ではなく、ソリューションを提供するということでしょう。また、単なる本社の御用聞き子会社ではなく、独自の価値観と意志決定をもった独自の会社としてさまざまな展開が期待できます。

プライムテックでアルファモス製品を主に担当されていた吉田 浩一氏がゼネラルマネジャーとしてアルファ・モス・ジャパンに参画しているということですので、サービス面では安心できそうです。

設立第一弾として、ifiaで設立記念セミナー(無料)の開催が決まっています。
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アルファ・モス・ジャパン オープニング記念セミナー開催!
5/22(金)13:00~17:00
五感センシングの今と未来
~電子嗅覚・味覚システムのリーディングカンパニー 「Alpha M.O.S.」の日本市場における新展開~
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詳細はこちら

ぜひ、私も行きたいですね。

春の新しい出来事でした。

文責 平沼

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「宣伝会議」でチョコ2倍

バレンタインデーはおいしいチョコを食べましたか?
市場に出回るチョコレートが多様化し、消費者(というか私に)に選択肢が増えたことは嬉しいですね。

さて、そんなバレンタインデーの翌日ですが、何の日かご存知でしょうか?
「宣伝会議」2/15号の発売日でした。

なぜ突然そんな話題が出るのか。

話は昨年末のことです。
弊社代表の平沼が私にこういいました。
「官能評価での統計手法なんて難しいのはいらんよ。それよりもパネルだ。
パネルが悪けりゃどんな統計手法もゴミだね」と。

最近の平沼はアンケートの集計とパーセンテージぐらいしか計算してませ
んでしたし、私もちょっと虫の居所が悪く、つい
「都合のいい言い方ですね」
と言ってしまいました。言った後で、しまったと思ったのですが、平沼の
ほうを見るとニヤニヤしています。
「ぶ、不気味だ」

ここからはライブで。

平沼「平均以外も知ってるよ」
私 「当たり前じゃないですか!」
平沼「多変量解析はできないとでも?」
私 「そういう意味では。ただ、最近そういう(高度そうな)分析をしているのを見ないですよね。」
平沼「必要ないからだよ」
私 「なんとでも言えますよね」
平沼「・・・。ところで8月に娘が生まれたのを覚えてる?」
私 「もちろん。それが?」
平沼「誕生記念になんかやろうと思ってさ。ネットを見てたら宣伝会議と野村総研が
『マーケティング分析コンテスト』というのを開催するのを見つけたんだ。でね、応募した。」
私 「はぁ・・・」
平沼「仕事じゃ使わない斬新な分析をしてみたよ。2月中旬に発表だから。」

そういって平沼は出て行きました。

その後、前年の受賞レポートを読んでみたのですが、訳がわからない分析ばっかりでした(涙
http://www.sendenkaigi.com/mac/index.html

いわゆるデータマイニングとかそういう分野だと思います。

話が長くなってしまいましたが、そのマーケティング分析コンテストの結果が「宣伝会議」
2/15号に載っているというのです。正直、偉そうなことを言って載っていなかったらチクッと
言ってやろうと思ったのですが、一方で、載ってなければそれはそれで寂しいなぁ、と。

おそるおそるジュンク堂へ行き、宣伝会議2/15号を見つけて手に取りました。
表紙にはそれらしい項目がありません。
「次号なのかな」
目次を開いてみました。
「おー、あったあった。054 独自の視点で購買要因を分析『マーケティング分析コンテスト2008』詳報。これだ」
おっかなびっくりで、54ページを開いてみるとそれらしいのがあるじゃないですか。見開きで特別レポート。
左側のページに受賞作品の一覧が・・・

最優秀は、東洋大学と東大院の方(1点)
優秀賞は、関西学院専門職大学院の方(1点)
奨励賞は、平沼孝太、福岡大の方(2点)

おー、なんかもらっている!

なになに、審査員コメントは、
「『買う人、買わない人』という着眼点が面白い。商品カテゴリによって結果に差が出ることを、ひとつのインプリケーションとして示している。」(横浜国大 阿部教授)
「シングルソースの使い方、態度変容を見る着眼点が非常に新鮮。検証・調査には有用性がある分析だと思う」(野村総研 塩崎氏)
(以上、『宣伝会議』2/15号より引用)
だと。

うむむ、どうやら平沼のいう「斬新な分析」とやらは一応の評価を得てるらしいぞ。
悔しいが、平沼にはチョコレートを倍にせねばなるまい(今年は週明け配給なので)。

それにしても大学関係者ばかりの受賞者の中によく紛れ込んだなぁと、ちと尊敬。

そんなバレンタインデー明けでした。

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JMP8発売!Tukeyのp値表示に

探索的統計解析ソフトウェアのJMP8が発売になるそうです。
12月19日(金)までは期間限定・早期購入キャンペーン実施中だそうで。
ほしい人にはチャンスですね。
【早期購入キャンペーン】
http://www.jmp.com/japan/landing/jmp8_preorder.shtml JMP7のときは正直バージョンアップの必要性を感じませんでしたが、JMP8は違うようです。
官能評価関係で一番興味を引いたのは「TukeyHSD検定のP値表示」ができるようになった
ことです。
これはホントうれしいですね。
官能評価で多いのは5,9点の評点法やラインスケールです。検定では標準品があれば Dunnettで、なければTukeyが一般的です。 (t検定、Duncunは注意が必要です。詳細は永田先生の書籍が詳しいです。)
最近はほとんどのソフトウェアが検定結果を星(*)の数ではなく、P値を表示することが 主流です。また、ユーザーもどの程度の確率なのか数値で見たいという要望も多くあります。 JMPでどうしても気になっていた機能がまさに「TukeyHSD検定のP値表示」です。
他にも開発・品質管理関係の機能が充実しています。グラフィック機能も充実してきました。
一つ注文をつけるなら、やはりOffice製品とのデータのやり取りがシームレスにできるよう になれば素敵ですね。(出力後のレイアウトに問題が・・・)
SASとの互換性を向上させたようですが、SASを使っているところでJMPを使うのかなぁと、 ちと疑問です。
SPSSを使っていた時もエクセルとの親和性が低く、分析作業の主流がエクセルアドイン系ソフト に移ったことがあります。 独自路線を突き進むのもいいですが、協調も必要ですよねSASさん♪

【JMP8の詳細機能紹介】
http://www.jmp.com/japan/software/jmp8/pdf/jmp8intro_full.pdf

まずは試してみたい方はこちらをお勧め(体験版付き)!

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プリファレンス・マッピングとは

◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.35◆◇◆◇◆◇◆

さて、今回のテーマは「プリファレンスマッピング」です。

官能評価においてもデータとデータを結合することは結構あります。
前回の評価事例-後編でご紹介した「他社データと自社データの結合」も1つの方法です。

今回は官能データと嗜好データとの結合、いわゆる「プリファレンスマッピング」のお話です。

弊社で扱う「データ結合」案件で最も多いのが官能データと嗜好データ(マーケティングデータ)の結合で、次が官能データと機器データになります。やはり各企業が市場の声に耳を傾けているという姿勢のあらわれでしょうか。

さて、プリファレンスマッピングです。

プリファレンスマッピングといえばGreenhoff & Macfieの「Preference mapping」に起源をもちますが、現在では様々なバリエーションが発表されています。

Greenhoff K. & Macfie H. J. H. (1994). Preference mapping in practice. In Measurement of food preferences, ed. H. J. H. MacFie and D. M. H. Thomson.Blackie academic & professional. London.

プリファレンスマッピングには大きく分けて2つの種類があります。

(1)内的プリファレンスマッピング(Internal Preference Mapping ; IPM)
(2)外的プリファレンスマッピング(External Preference Mapping ; EPM)

IPMは、嗜好データの主成分分析です。データの形としては、消費者とプロダクトの2元表に消費者が回答した嗜好評価の値を入れたものになります。消費者をグループ分けすることもあります。表現方法は、主成分分析の結果をバイプロットします。

※バイプロット:主成分得点とベクトルを同一グラフに表示。Gabrielバイプロットとも呼ばれます。

EPMは、官能データと別にとられた(外部の)嗜好データを個別に分析し、結合する方法です。使用する分析手法には、マッピングのために主 成分分析や一般化プロクラステス分析(Generalized Procrustes Analysis : GPA)などを用います。嗜好データの分類に自己組織マップやk-means、階層型などのクラスター分析を用いることがあります。表現方法は、やはりこ ちらも基本はバイプロットになります。

一般的にプリファレンスマッピングとはEPMを意味しますので、本稿でもEPMについて進めていきます。

皆さんがEPMを検討するのは、おそらく次の3つが主要な目的の場合でしょう。

(1)官能属性と嗜好度を関連付ける
(2)消費者グループ別に嗜好の違いを表現すること
(3)視覚的に表現する

個別にみてみると大した事はしておりません。

(1)の官能属性と嗜好度を関連付けるだけなら、回帰分析やその他の手法でも可能です。
(2)の消費者グループ別に嗜好の違いを表現するだけなら、クラスター分析でグルーピングし、嗜好順序で表現することも可能です。

では、なぜEPMなのか。

それはEPMが視覚的に表現するのが得意だからです。

EPMの基本的な分析フローを見てみましょう


ステップ1 官能データから商品マップを作成する(主成分分析)
ステップ2 嗜好データから消費者をグルーピングする(クラスター分析)
ステップ3 ステップ1の「主成分得点」とステップ2の「グループ分けされた消費者の嗜好データ」を結合
ステップ4 嗜好データを目的変数とした回帰分析など(PLS回帰分析、ANN)
ステップ5 バイプロットに表示する

見たところ簡単そうですが、プリファレンスマッピングは日本の企業ではあまり使われていない手法の1つです。

おそらくステップ4の分析が面倒なためではないかと考えてます。ソフトウェアがあれば簡単なのでしょうが、先日試用版で試したプリファレンスマッ ピングが分析メニューに入っている統計解析ソフトでも手間取ってしまいました。(Rの官能評価パッケージ「SensoMineR」にあるcarto関数で さくっと分析できますが、Rに慣れていないと手間取ります)

【FAQ】「SensoMineR」とは

 

現時点で私の意見は「プリファレンスマッピング(EPM)をやりたければ機能付のソフトウェアを使うのが早い」ということです。

時間と知識があれば、エクセルやR、その他の統計ソフトでも分析することは可能ですが、試行錯誤の時間と得られる情報量を考えればプリファレンスマッピングにこだわる必要はないでしょう。

そこで今回は主成分分析とクラスター分析ができる統計ソフトとエクセルがあれば誰でもできる「選好等高線図(Preference Contour Mapping)」をご紹介しましょう。ステップ4を行わずに3つの目的を果たしています。

使用したデータは、フリーウェア統計ソフトRの官能評価パッケージ「SensoMineR」 に含まれるチョコレート6種のサンプルデータ(sensochoc:官能データ、hedochoc:嗜好データ )を使用しました。分析に使用したソフトはJMPです。主成分分析とクラスター分析ができればソフトは何でもかまいません。今回はJMPでグラフ作成まで やりましたが、使用ソフトのグラフ作成機能がわかり難いなら、作図はエクセルでも大丈夫です。

「選好等高線図(Preference Contour Mapping)」の分析フローは4つのステップからなります


ステップ1 官能データから商品マップを作成する(主成分分析)
ステップ2 嗜好データから消費者をグルーピングする(クラスター分析)
ステップ3 ステップ1の「主成分得点」とステップ2の「グループ分けされた消費者の嗜好データ」を結合
ステップ4 等高線図に表示する(主成分1、主成分2、嗜好データ)

7つに分類された消費者クラスターごとの結果を見てみましょう。商品名は消費者Cluster1のみに表示してありますが、他も同様の配置となっています。
色は嗜好度を表しています。嫌い(Disliking)なほど赤くなります。尚、本結果自体に意味があるのではなく、読み方の参考としてご覧下さい。

消費者Cluster 1 消費者Cluster 2
消費者Cluster 3 消費者Cluster 4
消費者Cluster 5 消費者Cluster 6
消費者Cluster 7

見方ですが、まず最初のグラフ(Cluster1)を見てみましょう。
消費者Cluster 1
各商品が2次元上に配置されています。軸の意味を知りたい場合はステップ1で得られた主成分分析の結果から読み取ります。
そして、商品で囲まれたエリアには商品ごとの嗜好度について等高線が引かれています。このグラフでは等高線の間を色分けしてあります。
色合いが同じところでは、同程度の嗜好度であると考えられます。

どうやらCluster1の消費者は、choc2,5を嫌いchoc1および3の方へ行くと嗜好が高まる傾向があるようです。

傾向を知りたい場合、等高線に基づいてベクトル線を描き、原点に移動して表示すると便利です(このベクトルは、EPMのバイプロットにおけるベクトルと同様の意味になります)。

全部は説明できないので、特徴のあるCluster3とCluster6について見てみましょう。

Cluster3はchoc1,4をとても嫌っています。等高線から読み取ると、ちょうどX軸(主成分1)に平行なベクトルが描けます。
このことからCluster3をターゲットとするなら主成分1の得点が高い風味属性のチョコレートが好まれそうです。
消費者Cluster 3

Cluster6はchoc3を嫌いな頂点として、きれいに等高線が引かれています。
等高線から、choc3からchoc2,5,6へベクトル線が引けます。どうやらCluster6の嗜好度を高めるには、主成分1と2の両方の得点が低い風味属性のチョコレートを開発するのがよさそうです。
消費者Cluster 6

このように主成分分析クラスター分析、そして等高線図で消費者別の嗜好傾向が視覚的にもわかりやすく表現することができました。

最後に注意なのですが、クラスター分析の結果から得られた消費者集団がどのような特性であるかは明らかにはなっておりません。
そこで2つの方法が考えられます。
1.グルーピング後に消費者の属性(デモグラフィック属性など)を分析する。
2.最初から消費者属性によってグルーピングする

1の場合、グループを特徴付ける結果が得られればマップが役立ちますが、特徴がなければただ分類されただけになります。

お薦めは最初から消費者属性(例えば、性別や年齢層など)でグルーピングすることです

今回は官能データと嗜好データを結合するプリファレンスマッピングの概要と、簡易版としての「選好等高線図(Preference Contour Mapping)」をご紹介しました。

現実には、売れる商品を開発するために「美味しい」を目的変数にした分析では足りません。さらに「購買意欲・行動」まで踏み込んだ分析へと移行する必要があります。

これが「”おいしい”を”売れる”へ」をモットーに、弊社が推し進めている「売るための官能評価」です。

それでは、また!

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ケースだな-下段

◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.34◆◇◆◇◆◇◆

さて、今回のテーマは「評価事例-後編」です。

簡単に概要をおさらいいたします。

ローカルブランドの缶コーヒーを製造している企業の依頼でした。全国の流通に乗せていくため、大手の商品と味の比較ができる資料を作ってほしい、という内容でした。そして、もうひとつ要望がつけられました。それは、サントリーがWEB上で味のレーダーチャートを公開しており、これにあわせてほしいということでした。

これがこの依頼の最大の難関でした。
カギは実施後の分析にありました。

まず、当時サントリーのHPに掲載されていたレーダーチャートから読み取ったデータを見てみましょう。以後、このデータをSデータとよびます。

Sデータ表

このSデータをもとに「無糖ブラック」「デミタス」「デミタス・ラテ」を対象外として、9銘柄で主成分分析をしました。

主成分1と2の累積寄与率が84%でした。これは主成分1と主成分2の2軸でデータがもつ情報の84%が説明できることを意味します。そこでポジショニングのマップとしては2軸で十分と判断しました。
各コーヒーの主成分得点を元にプロットしたのが次の図です。

Sデータ-主成分分析
Sデータ-主成分分析-固有ベクトル

固有ベクトルの結果から軸の意味合いとしては、
縦軸(第1主成分):上に行くほどミルク感が強い⇔下に行くほどコーヒー感が強い
横軸(第2主成分):右に行くほどコクと香りを中心とした総合力が高い

となります。

以上、Sデータをもとに分析した結果です。

次に弊社で行った評価を見てみましょう。以後、弊社の評価データをTTデータとよびます。
【弊社の実施条件】
1.SUBJECT(パネル):選抜訓練されたパネル25名
2.SAMPLE(サンプル):12種+依頼品3種の計15種、常温、白色紙コップ90ml容器に各60ml
3.SCALE(尺度、評価用語):9カテゴリスケール、40属性
4.SITUATION(実施環境):セントラルロケーションテスト(CLT)
5.その他の条件
1日で評価を実施するスケジュールのため、繰り返し評価は行わず、その代わりパネル数を多くとっている。

今回の最大のポイントは、Sデータの主成分分析得点マップにTTデータを合わせることです。

理想をいえば、Sデータで採用している6属性と同じ評価用語を使って、同じ傾向のデータを取ることでしょう。しかし、前回も書きましたが、評価用語はその まま同じに使ったとしてもサントリーの意図した属性と、弊社パネルが意図した属性が必ずしも同じになるとは限りません。無論、同じになるかもしれません し、ならないかもしれない。こちらとしては1ショット評価(1回限りの評価)なので、分析で対応できるように幅を持ったデータをとりたいと考えました。理想的な方法としてはSPECTRUM DESCRIPTIVE ANALYSISのようにリファレンスと数値を一致させる方法もありますが、訓練にコストと時間がかかるため現実的ではありません。

ところで本当に同じ評価用語でも結果が同じになるとは限らないのでしょうか。
実際にSデータの6評価用語とTTデータの類似の6評価用語の単相関を見てみましょう。

評価用語の単相関

QDAでは評価用語は参加パネルによって作られるので必ずしもSデータと同じ用語とはなっていません。例えば“キレ”という用語は採用されませんでした。“香り”についても“焙煎香”と“こげ臭”に分けて採用されました。
単相関の結果を見てみると、“コク”に関しては逆の相関となっていました。つまり、サントリーの意図する“コク”と今回のパネルが意図する“こくがある”は同じではないということです。“香り”に関しても一致しているとはいえません。
一方、“甘味”は弱い相関、“ミルク感”、“苦味”については相関があります。この3種はブレの少ないコーヒー評価用語として消費者パネル(嗜好型パネル)でも使用できる用語でしょう。

残念ながら、予想通り今回のパネルの評価用語とサントリーの評価用語とは一致しないことがわかりました。

付け加えておきますが、各評価用語をきちんと定義づけして、適切な標準見本を設定してあげれば再現は可能です。サントリーが意図する“コク”の定義とそれを適切に表す標準見本があれば再現できたでしょう。しかし、問題はそのような情報を開示していただくのが難しいだろうということです。

とはいえ、Sデータのマップに載せるという目的からすればたいした問題ではありません。

狙いはサントリーのデータに合わせたマッピングを作成することです。
同一マップに表現できたかどうかの判断は、TTデータで作成したサントリー製品9種のマップ上の位置関係が、Sデータによって作成されたマップ上の位置関係と同等であればOKとすることとしました。
位置関係の同等性の判断は、各軸の製品順位が一致するかどうかで判断しました。事前に行ったSデータの分析から、「微糖・深煎り」と「地中海ブレンド」は2軸とも、「ボスプレッソ」と「ボスプレッソトリプルアロマ」は横軸において近接しているため、この4商品2組については順位が逆転してもOKとすることとしました。

分析のポイントは2つです。

1.合わせる対象をSデータの主成分得点にする
2.分析手法にはPLS回帰分析を使う

最初のポイントは、合わせる対象を何にするかです。まず思いつくのがSデータの評価用語の各々を目的変数として何らかの予測式 を立てる方法です(例:“甘味”=a1דまろやかさ”+a2דミルク感”など)。しかし、この方法には問題があります。マッピングするには予測式の結 果をさらに主成分分析をかけることになりますが、主成分分析はちょっとしたデータの変化でも軸が反転します。そこで最終的にマッピングに使う主成分得点を 合わせる対象(目的変数)にすることでロバスト性を確保しました。

次に、分析手法に何を使うかというポイントです。通常、このような場合は主成分得点を目的変数とし、TTデータのいくつかの評 価用語を説明変数として重回帰分析をすることを考えるでしょう。しかし、予測だけならもっとよい方法があります。それがPLS回帰分析と呼ばれる方法で す。重回帰分析は説明変数の間に高い相関を持つ場合は、つまり共線性を持つ場合はデータがすこし変化しただけでモデル平面が動いてしまい予測モデルとして は使えません。また、説明変数の数にも制約があります。一方、PLSは説明変数の数が多くても、互いに相関が高くても大丈夫です。

PLSについての理論的説明と実際の解析についてはこちらを参照ください。フリーウェアの統計パッケージ「」による解析の説明があります。

普段はエクセルとRでほとんど処理してしまうのですが、今回のPLSはSAS社JMPの力を借りることにしました。
JMPは実験計画の設計から分析まで一貫したプロセスをもち、PLSやIRT、その他豊富な分析手法が最初から含まれているコストパフォーマンス の高いパッケージだと思います。SPSSは手法ごとにオプションを購入すると結局高くついてしまうのでいろいろやってみたい方にはお薦めです。但し、 ちょっと操作になれないと分析にたどり着けないことがありますが、添付の入門書を一度やってみればすぐ扱えるようになるでしょう。強いて不都合を挙げれば Tukeyの多重比較のp値が表示されないことでしょうか(Dunnetはp値が表示されます)。
一応、SPSSもマーケティングデータの処理の時には活躍しております。
結局、目的にあったソフトウェアを使うのが一番ということですね。

さて、JMPのPLS分析で目的変数にSデータの主成分得点を、説明変数に評価用語全部を入れて分析するとあっという間に予測式が出来上がりました(実際は潜在変数の指定などやることはいろいろあります)。

以上の分析を経て、マッピングをしたのが次の図です。

Sデータ-主成分分析TTデータ-主成分分析

赤枠で囲んだコーヒーがサントリーの商品です。青枠はサントリー以外の大手3商品です。
左図はSデータからブラックとデミタス2種を除いて主成分分析をしてプロットしたものです(再掲)。
右図はTTデータからPLSによって予測式を作成し、サントリー製品9種と大手3商品をプロットしたものです。

目で見た感じでは、サントリーのデータと同様のポジショニングが再現できたような気がします。
そこで位置関係の同等性を判断してみましょう。判断基準は次の2点です。
1.各軸の製品順位が一致しているか
2.「微糖・深煎り」と「地中海ブレンド」は2軸とも、「ボスプレッソ」と「ボスプレッソトリプルアロマ」は横軸において近接しているため、この4商品2組については順位が逆転してもOK

各軸を得点でソートしたのが次の図です。

順序比較

縦軸の商品順序は完全に一致しています。横軸上では「ボスプレッソ」と「ボスプレッソトリプルアロマ」、「微糖・深煎り」と「地中海ブレンド」が順序が逆転しておりますが、これは事前に予測していた誤差範囲内です。

以上から、十分にサントリーデータと一致しているマッピングを得ることができました。

改めてポジションを見てみると、ジョージアエメラルドマウンテンやワンダモーニングショット、レインボーマウンテンなど有名どころは狭いカテゴリーで戦っていることがわかります。
一時期CMで「売れとるからうまいやろ」みたいなセリフがありましたが、この3商品は全体から見れば味に大差なく、後はマーケティングパワーの差 が売上に貢献しているのでしょう。もちろんわずかな差が大きな差を生むこともありますし、売れてるからうまいと思う人もいる訳ですから間違っているとは言 いませんが・・・。

あとはこのマップに、依頼元の製品データをプロットして報告書を作成し、納品となりました。

私たちは納品後にお客様に1つの提案をいたしました。
それが「官能評価の社内体制の確立」です。

理由は3つです。
1つ目は、評価ノウハウの蓄積により商品開発の期間短縮試作コストの削減、前回ご紹介した品質規格の合理的設定が容易になるなどメリットが大きいことです。

2つ目は、仮にセンサー等の機器を導入するとしても官能評価のノウハウは十分生かされるからです。たとえばあるセンサーでは、 センサーのアウトプットだけでは意図するところを表現することができません。センサーのアウトプットは○○mvなどで、風味特性を直接明らかにはしてくれ ないようです。一方、甘味や酸味など特定して検出するセンサーもありますが、それですべての風味をまかなえるわけではありません。将来的には人間と同じよ うに判断するようになるかもしれませんが、当面はヒトの判断が必要となります。その際にセンサーのアウトプットの意味を汲み取るために官能評価のノウハウ が必須となります。

最後は、何よりも安く上がるからです。社員をパネルとして活用することでパネル人件費を抑え、運営の仕方によっては社員のモチベーションアップにもつながります。

このようなメリットのある「官能評価の社内体制の確立」ですが、弊社ではパッケージサービスとして提供しております。6ヶ月間で2名の官能評価技術者と社内パネルの構築を実現します。
詳しくは弊社までお問合せください

さて、前々回と今回の2回に分けて評価事例を紹介しました。分析型官能評価にありがちな厳密な言葉の定義や軸の意味合いよりも、相対的に自社の製 品が他社商品群の中でどのようなポジションにあるかを明らかにすることを目的にした事例です。その中で主成分分析やPLS回帰分析をご紹介いたしました。 また、簡単ですがソフトウェアについても言及してみました。

商品ポジショニングや特定データ(例えばセンサーや成分分析の結果)との相関の案件が増えてきているのでトレンドの事例として紹介いたしました。

最後にサントリーさん、モンドセレクション3年連続最高金賞おめでとうございます。

それでは、また!

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食ショック

◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.33◆◇◆◇◆◇◆

さて、今回のテーマは「賞味期限と消費期限」です。

新年早々、食品関係で早速数件のニュースが報道されました。
不二家とダスキン、ローソンです。
本来なら「評価事例の後編」をお送りするところですが、タイムリーな話題ですので取り上げてみたいと思います。

ダスキンの件は「ニップン冷食」(東京都渋谷区)に製造を委託したものだそうです。自社内の品質管理というより外注先の選定・納品チェックなどの仕入管理の範疇になるでしょう。

問題は不二家とローソンの件です。どちらも「期限」が問題となりました。
今回のテーマ名になってますが、不二家は「消費期限」を過ぎたものを販売し、ローソンは「賞味期限」を過ぎたものを販売していたということです。もちろん作為・不作為の違いはあるでしょうが、ひとまず期限の違いというものに焦点を当てたいと思います。

まず、消費期限と賞味期限について簡単に説明いたします。
用語の定義については平成17年2月に告示された「食品期限表示の設定のためのガイドライン」が一般的です。このガイドラインは厚生労働省および農林水産省が共同で設置した検討会が作成したものです。(業界団体ごとに個別のガイドラインを設けている場合もあります)

【用語の定義】引用はこちら
消費期限とは「定められた方法により保存した場合において、腐敗、変敗その他の品質の劣化に伴い安全性を欠くこととなるおそれがないと認められる期限を示す年月日をいう。
賞味期限とは「定められた方法により保存した場合において、期待されるすべての品質の保持が十分に可能であると認められる期限を示す年月日をいう。ただし、当該期限を超えた場合であっても、これらの品質が保持されていることがあるものとする。

つまり、消費期限とは品質が急激に劣化しやすいものを対象とした用語で、弁当、生菓子、生麺、惣菜などが対象です。一方、賞味期限とは比較的痛みにくい市販のスナック菓子や即席めんなどを対象に使用する用語ということになります。

今回の不二家の場合はシュークリームですから消費期限ですね。一方のローソンもお弁当(すし)なのですが、回収の対象となったのは弁当に添えられている醤油なので賞味期限が対象となります。

これら期限の設定には大きく3つの指標によって期限を定めるようにガイドラインでは示されています。

1.理化学試験・・・品質劣化を粘度、濁度、比重など理化学的分析方法によって判断する
2.微生物試験・・・品質劣化を一般生菌数、大腸菌群数など微生物学的に得られた指標によって判断する
3.官能検査・・・人間の視覚・味覚・嗅覚などの感覚を通して、手法にのっとった一定の条件下で評価判断する。

以上が期限表示に関する概要です。

さて、不二家の件はおそまつ極まりない管理実態によるものですが、官能評価の観点から1つの問題が見えてきます。
ニュースによると、担当者の男性従業員は『昭和三十年代から洋菓子を製造してきたベテランで、社内調査に対し「期限切れでもにおいをかいで判断していた」』というコメントを残しています。

今回のケースの場合、不二家は牛乳を製造していないとすれば納入された牛乳に記載された期限を元に使用可否を判断していたということになります。もちろん 期限切れの牛乳を使ったことは大変な問題です。一方でベテランの担当者が『においをかいで判断していた』ということですが、担当者の官能的判断によれば 「問題ない製品」と判断されたのでしょう。

※ここで「官能的判断」としているのは、体系的に実施される官能検査/官能評価と異なることを明示するためです。

今回の問題がクリスマス商戦前にたまたまイレギュラー品が大量に出てしまったので、今回だけ特例として流通させたというのであれば完全にマネジメントサイドの意思決定の問題です。
しかし、実際には長年日常的に行われてきたことを考えると根本的な問題として「ダブルスタンダードの存在」が考えられます。

1つ目のスタンダードは、メーカー表示の期限です。もう1つのスタンダードが担当者の官能的判断によるものです。

ここでなぜ「担当者の官能的判断」が判断基準として優先されたのでしょうか。

一般的な見解はコストや納期などによるものと考えられています。
もちろんそれも現実的な側面として正しいと思います。
しかし、私は「基準の信頼性」というものが非常に大きくかかわっていると考えています。

メーカー期限という基準が現実に則していない(=まだ使える)ので、自社で基準を定めてしまった。
言い換えると、メーカー期限という基準は信用できないので、勝手に基準を作ってしまった。

しかし、勝手に作った基準には合理的な裏付けがなく、メーカー表示の期限を改訂する効力はもたない。

そこで暗黙の了解として、自社内基準を設け、それに基づいて運営してきた。(但し、どこにも記載はない。なぜならマニュアル化するほど合理的な裏づけがないのにマニュアルを作ってしまったら、メーカー基準逸脱を全社的な活動と捉えられてしまう、と考えたからでしょう)

不二家の件は官能評価等の問題を超えたマネジメントレベルの課題です。経営学として興味深いのですが、ここでは官能評価・官能検査に関係する担当者が直面する問題について考えてみます。

今回の担当者は長年勤めてきたということですから、信用に足る官能的判断をされてきたのでしょう。かわいそうですがダブルスタンダードの狭間で責任を押し付けられた感があります。

しかし、この問題をマネジメントサイドの問題だけとして片付けられません。なぜなら担当者であるあなたにも直接の被害が出るかもしれないからです。

もしあなたが品質担当者で品質基準が明確に定まっていないか、形骸化しているようならば注意すべきです。責任を押し付けられるのはあなたかもしれません

実際、ご飯の食味計を品質管理として導入している企業で、どうも実際の食味(官能的判断)と食味計の判断が一致しない。つまり、食味計ではNGと 判断されるのだが、ヒトの判断によれば問題ないのではないか、というのです。担当者は明言は避けられましたが、おそらく官能的判断に基づいて(つまり、担 当者が大丈夫だと判断した基準で)出荷されているのではないかと推察しました。(食味計のヒストグラムが奇妙な形で、あの工程能力ならもっと不良品が出る はず・・・)

あなたの企業は大丈夫ですか?

今すぐ、品質基準を確認しましょう。
もし基準が決まっておらず、なんとなく担当者の官能的判断で出荷しているようならば、前述の3つの手法に基づいて品質基準を定めましょう。

ここで品質基準があっても形骸化、ダブルスタンダード化しているようなら現実に合わせた基準に見直すことが重要です。

あなたが経営者ならば尚更です。あらためて品質基準を見直しましょう。目に見える形でメリットを享受することもあります。

例えば、コンビニのお弁当のように過剰品質(食べられるのに廃棄)しているものが、商品として適切な品質だと合理的に判断できればコストダウンにもつながるのですから。

当然ながら、いくら官能的に問題がないといっても不二家のように細菌検査で出荷基準に満たない「シューロール」を出荷するのは問題外ですよ。

今回はここまで。

弊社では賞味期限設定のための官能評価にも相談にのっております。
詳しくは弊社までお問い合わせください。

それでは、また!

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ケースだな-上段

◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.32◆◇◆◇◆◇◆

さて、今回は「評価事例」をご紹介いたします。

官能評価をご紹介するには、事例をお見せしながら進めるのが一番だと思います。しかし、受託評価したデータは、クライアント様の商品開発にかかわる機密事 項であることがほとんどです。セミナーなどではクライアント様のご了承を得た上で事例紹介しておりますが、WEB上での公開はなかなかご了承いただけませ んでした。

そこでWEBで公開されているデータを元に評価をした事例をご紹介いたします。現在流通している商品の最新データだと差し障りがありますで、以前のデータでご紹介します。

まず、ご依頼の内容からご紹介します。

ある秋のことでした。缶コーヒーを製造している企業からお問い合わせを頂きました。
同社の商品は、私たちがコンビニや自販機でしばしば目にする有名ブランドではなく、いわゆるローカルブランドといった商品です。しかし商品の味には自信をもっており、全国の流通に乗せていきたいとお考えでした。

また、ネームバリューのなさが災いし、ディスカウントショップで相当たたかれた上で置いて貰うような状況だということでした。

味には自信があったので、営業担当者は自社商品の味が大手有名ブランドに負けてないことを力説して回りました。しかし、なかなか理解が得られなかったということです。

そこで、何とか大手商品に比べても味に遜色がないことを説明できる資料がほしい、というのが依頼の内容でした。そして、もうひとつ要望がつけられました。
現在も公開してますが、サントリーさんがWEB上で味グラフを公開しており、これにあわせてほしいということでした。

実は、自社でデータ取りをするのはそれほど難しいことではありません。社内データで時系列の比較をしても大きくずれることは少ないです。しかし、 他社とのデータ比較をされるということは再現性や信頼性を確保できる方法・手順(プロトコル)でなくてはなりません。つまり、追試に耐えられる方法論でな くてはならないということです。しかも大手のサントリーさんが自信を持って公開しているデータです。正直、会社泣かせな依頼でした。

私たちは次のような調査戦略を考えました。
1.まず、市場に流通している有名ブランドの味・風味特性をマッピングする。
2.マッピングにあたって採用する風味属性(評価用語)は、独自に行い、得られたデータとサントリー社が公開している商品・属性・データとの比較から決定する
3.採用された風味属性を元に有名ブランドと同社の商品を同一グラフに表現する。

実施方法等は全てお任せいただき、上記の進め方でご了承いただきました。

本件の場合、非常に評価点数が多いので一対比較や順位法などの相対評価法では難しくなります。その上、サントリーさんのデータに合わせるという非常に厄介な注文をつけられました。
厄介な理由は評価用語にあります。評価用語はそのまま同じようを使ったとしてもサントリーさんが意図した属性と、弊社が意図した属性が必ず しも同じになるとは限らないからです(同じになるかもしれませんし、ならないかもしれません。つまり同じになるという保証がないということです。「長さ」 ならノギスで測れば同じ長さは同じ数値で表されるのですが、官能評価はそうならないのです。また用語が同じでも同じ属性を測っているとは限りません。和三 盆や三温糖などの糖類の評価と、チョコレートの評価では同じ「甘味」でも意味が違うのはおわかりいただけると思います。)

当時サントリーさんが評価項目として次の6つの属性を掲載しておりました(2006/12/5現在も同じ)。
1.甘味
2.コク
3.ミルク感
4.キレ
5.香り
6.苦味
(以上、6属性を5段階で表記)

手法としてQDAに類した方法をとることにしました。しかし、完全にQDAに準拠するのではなく、弊社のノウハウを活かしながら取り入れいるという形にしました。(実際、ASTM規格にあるようなラインスケールは採用せず、9ポイントのカテゴリスケールを用いました)

まず、評価のためのパネル構築を行いました。パネルは五味識別(TT式味覚検査)とコーヒーの識別検査によって選びました。今回は分析型の評価なので、フェースで普段のコーヒー飲料実態を尋ねるにとどめ、デモグラフィック属性は(データは取りましたが)採否の参考にしませんでした。

次に、選ばれたパネルによって評価用語の構築を行いました。用語構築と並行してパネルの訓練を進め、評価が安定したところで本評価に移りました。

本評価で使用する評価用語は訓練時のデータと、自社の評価用語DBから信頼できる40属性を選び出しました。サントリーさんの公開データとのマッチングは、データを取った後で比較して取捨選択することにいたしました。

本評価に入る前に、訓練時のデータを簡単に分析してみました。すると、厄介なことがわかりました。
サントリーさんが公開している商品の中にブラックがあったので、われわれも評価サンプルに入れていました。しかし、ブラックを評価する際の「甘 味」は、砂糖入りのコーヒーの「甘味」と違う意味をもちます。実際、データを見てみるとブラックの評価だけ異常な値を示し、ブラックのデータを含めた分析 をすると砂糖入りのコーヒーの違いが出にくいことがわかりました(実際、同社サイトでも甘味、コク、ミルク感の3属性はゼロになっていました)。

そこで本評価でのサンプルは、ブラックを除き、依頼主の商品を含めた15種で行うことにしました。有名ブランドの比較ということで、サントリーさんの商品のほかに代表的なジョージアエメラルドマウンテンとワンダモーニングショットを採用しました。

この事例でのポイントは、サントリーさんのデータと如何にあわせるか、にかかってました。
そして、評価用語を真似しただけでは同じ属性を測っているとはいえません。

この事例のカギは2つ。1つは実施時に安定した評価が出来る評価用語・パネルで行うこと。もう1つは実施後の分析にありました。
詳しくは次回、データの一部を使って分析プロセスの詳細をご紹介いたします。

それでは、また!

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しゃーない社外(汗)

◆◇◆◇◆◇◆官能評価TT通信No.31◆◇◆◇◆◇◆

さて、今回のテーマは社外パネルです。

前回は社内パネルでしたが、今回は外部のパネル、つまり社外パネルのメリット・デメリットと、外注する際のポイントをご紹介します。

まず、社外パネルのメリット・デメリットについてです。
くどいですがパネルについて確認しておきましょう。パネルの種類は大きく2つに分類されます。

1.分析型パネル(専門パネル、?型パネル)
2.嗜好型パネル(一般パネル、?型パネル)
※QDAパネルを含めて3つに分類することがありますが、ここでは従来の分類に基づいて解説いたします。

社外パネルで利用頻度が高いのが、やはり2つ目の嗜好型パネルです。

理由は2つです。
1つはサンプリングに適していることです。
社外パネルを使うときに嗜好型パネルこそがメリットを最も享受できる使い方です。嗜好型の官能評価は、標本調査の理論(サンプリング)の考え方に基づいて パネルを選びます。そして前回も指摘しましたが、社内の限られた人数の中で適正なサンプリングをしようとしても偏りが出てしまいます。また、バイアスがか かることも前回指摘したとおりです。多くの調査会社では自社モニターなどのほかコミュニティ運営会社やネット系企業と提携して非常に多くの名簿を持ってい ます。

もう1つは分析型パネルを提供している企業が少ないことです。
実際のところ、分析型パネルを社外に求めてもトレーニングされたパネルを提供している企業はそう多くありません。もちろん調査会社に依頼すればほとんどの企業で評価員を揃えてくれます。しかしながら、それを分析型パネルというかどうかは企業ごとの判断によります。

社外パネルのメリットは「(嗜好評価における)適切なサンプリング」です。

一方、社外パネルのデメリットは「高い費用」です。
調査会社に依頼する場合、結構な費用がかかります。社内なら無料(実際は見えないコストとして発生しているのですが・・・)で実施できます。
料金は各社まちまちです。
品質が高ければそれだけ料金も高いのですが、見えない部分だけについ値段で選んでしまいます。

そこで、社外パネルを外注する際のポイントを挙げます。

1.目的をはっきりさせる
2.パネルの質を確認
3.採用・管理コストを聞く

第一のポイントは目的の明確化です。これは社内パネルのときも挙げていましたが、本当に大切です。社内パネルで済むことを社外 に出すのはお金のムダですし、分析型パネルの育成や官能評価のノウハウ蓄積が遅れます。やりたいことが好き嫌いを中心とした嗜好型の官能評価なのか、味の 違いや風味の特徴を明らかにする分析型の官能評価なのかをはっきりさせることで何をすべきなのかが明確になります。なぜ社外でやるのか、社外でなければで きないのかを検討することが大切です。

第二のポイントはパネルの質です。外注先には登録者の属性とパネル(モニター)の品質管理方法を確認してから発注しましょう。 ついでに分析型パネルを提供しているならば、どのような選抜・訓練・管理をしているのかを聞くのも良いでしょう。裏話的な話をすると、多くのリサーチサイ トには謝礼目的で多重登録している方や、サンプリングの抽出対象となりやすい属性を登録している方もいます。各企業では何重にもチェックをして登録者の品 質管理に苦心しています。一方で多重登録は誤差の範囲とばかりに登録人数の多さを売りにしている企業もあります。

これを避けるには発注側が鑑識眼を高めるほかありません。

もっともわかりやすいチェック方法は自分で登録してみることです。
登録情報やチェック方法などがわかればモニターの質もおおよそ見当がつきます。

特にホームユーステスト(Home Use Test: HUT)では直接顔を見ることがないのでこれらのチェックが出来ません。男性が女性として登録して送られてきた化粧品の評価をしていることだってあり得る のです。(その方の意見が適切かどうかは別問題です。正しくサンプリングできていないことが問題なのです)

分析型パネルならば識別能力や再現性などもチェックしたいところですが、能力チェックだけで料金が発生することがありますのでおいそれと確認するわけにも行きません。現実的にはどのようなパネルの品質管理をしているかを聞くのが精一杯でしょう。

最後は料金面の話です。一般にパネルの品質がよければ料金も高くなります。第二のポイントでパネルの質を確認したら、見積もり を取ってください。一人あたりの料金で評価したくなりますが、ここはぐっと我慢して業者が一人あたりの採用・管理コストをいくら使っているか聞いてみてく ださい(もしくは採用方法を聞いて、そこから推測してください)。
そこからパネルの価値を見出します。

パネルの価値 = 一人あたり料金 ÷ 一人あたりの採用・管理コスト

このパネルの価値を比較する場合、調査会社のモニター規模を同程度のところで比較してください。(万人レベル同士、10万人レベル同士、100万人レベル同士など)
同じ規模だとすると、採用・管理の仕組みも大体同じです。あとは見えないところに金をかけているかどうかだけです。
自社で集められる場合は、上記のパネルの価値を自社の場合(常に1倍)と社外の場合で比較すれば意思決定の参考になります。

今回は社外パネルのメリット・デメリット、および外注する際の3つのポイントをご紹介しました。

最後に、弊社の分析型パネルについてのご紹介です。

弊社のパネルは商品開発部門との仕事が多く、通常は守秘義務契約を結ぶため実績を公表することはできません。しかしながら、メディアを含め多方面 で活躍させていただいております。無論、何十年も評価業務に従事している専門家に比べれば至らぬことも多くございます。しかし、選りすぐりの味覚保有者と ISO準拠の訓練プログラムを経た弊社のパネルはきっとご満足いただけるものと確信しております。
また、社員向けの訓練プログラムのみでも承っております。
ぜひ一度ご相談ください。

今回はここまで。では、また!

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