FIZZCalculationsの多変量解析機能は超優秀

官能評価ソフトウェアFIZZには強力な解析ツールFIZZCalculations(以下、FIZZcalc)があります。

通常はFIZZAquisitonでデータを収集し、FIZZcalcでデータを解析します。

このFIZZcalcにはデータのインポート機能があります。
インポート機能を使うと外部で取得した嗜好調査データを読み込んで解析したり、FIZZで取得したCATAデータを一度エクスポートして、編集後にインポートしてコレスポンデンス分析をすることができます。

FIZZcalcには下記の多変量解析機能が搭載されています。

【FIZZcalc搭載の多変量解析手法】
●主成分分析
●MFA(Multiple Factor Analysis)
●STATIS(Structuration des Tableaux A Trois Indices de la Statistique)
●コレスポンデンス分析
●判別分析
●クラスター分析
●プリファレンスマップ
▲IPM(Internal Preference Mapping)
▲官能特性付きIPM
▲PREFMAP(Vectorial,Circular,Elliptical,Quadratic)
▲AUTOFIT

特筆すべき点として、下記の手法・機能が使えることです。
●MFA
●STATIS
●プリファレンスマップにてAUTOFIT機能(AUTOFIT機能は前回記事を参照ください

MFAとSTATISは、パネル効果を考慮した手法として使われています。ホリスティック法のナッピングやソーティングのデータ解析にも使われている方法です。

フリーウェアのRでは両手法とも解析可能ですがスクリプト(プログラム)を記述する必要があります。しかし、FIZZcalcではマウス操作でこれらの高機能解析ができるのです。これを使わない手はありません。
※Rでは、SensoMineRと同時にインストールされるFactoMineRでMFA解析が可能です。また、STATISはade4というパッケージにstatis関数があります。

MFAとSTATISはFIZZCalcの多変量解析メニューのP.C.A FROM PROFILEからHORIZONTAL P.C.Aを選択して実行します。

今まで使っていなかった方は、一度使ってみてください。

さて、FIZZcalcの多変量解析機能の操作マニュアルの予約締め切りが近づいてきております。

予約中「FIZZ-Calculations多変量解析入門テキスト」(7/28まで)・・・サンプルもダウンロードできます。

FIZZcalcを使いこなしたい方は必見です。
また、時系列手法のテキストも同日締め切りです。

予約中「FIZZとMagicSenseで始める時系列官能評価入門テキスト-TimeIntensity/TDS-」

予約限定販売となっておりますので、この機会にぜひお買い求めください。

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FIZZプリファレンスマップのAUTOFIT機能とは

第2弾テキスト『プリファレンスマップ入門テキスト』の発送が完了いたしました。
購入いただいた方は既にお手元に置かれて試行錯誤されていることと思います。
今回はホットなトピックということで多くのご購入をいただき、誠にありがとうございました。

さて、今回はFIZZのAUTOFIT機能について特徴をご紹介します。

通常のエクスターナルプリファレンスマップ(PREFMAP)は、座標データ平均化されてた嗜好度でモデルを構築します。集団に対してモデルを構築しているイメージです。
個人に対して構築もできますが、人数分のモデル作成が必要となるため通常は「集団の平均嗜好度」に対してモデル作成します。

一方、FIZZは個人の嗜好度に対して4種類のモデル(Vectorial、Circular、Elliptical、Quadratic)を構築します。
100名いたら100名×4種=400モデルが構築されます。

集団としてのプリファレンスマップを見る場合は、個人のモデルを集計します。
その際2つの方法をとっています。

1.モデルの合成(Synthesis by model:上の表)
2.選択モデルによる合成(Synthesis of the model choices:下の表)・・・AUTOFIT機能

1つ目の「モデルの合成」は、モデル種ごとに人数分のモデルを集計します。
100名のデータならば、

Vectorial  :100個の集計
Circular   :100個の集計
Elliptical :100個の集計
Quadratic:100個の集計(合計400個=100名×4種類)

という具合です。

2つ目の「選択モデルによる合成」は、個人の中で最も良いモデルを選んでから全体の集計をします。100名のデータであっても、モデルごとに数が異なります。
例えば下記のようになります。これは1人から1つの最良モデルを採用しているため、モデルの合計数は人数と一致します。

Vectorial :40個の集計
Circular   :30個の集計
Elliptical    :20個の集計
Quadratic  :10個の集計(合計100個=100名×1種類の最適モデル)

FIZZでは、どちらの方法を使っても「集団の平均嗜好度」に対するモデル作成はされません。

FIZZとXLSTATの両方を持っているお客様もいらっしゃいますが、解析アプローチが異なるので結果が異なります。

実はFIZZでも座標データと平均化されてた嗜好度でモデルを構築できます。
イレギュラーな使い方になりますが次のような手順です。

1.Excelなどで平均化した嗜好度データを作成し、テキストファイル(タブ区切り)で保存
2.1のファイルをFIZZにインポートしてリザルトファイルを作成
3.FIZZでエクスターナルプリファレンスマップを実行
※軸ファイル(*.ffc)は通常通り事前に作成しておきます。

平均データが1名分のデータとして処理されて表示されます。これが集団平均値に対するモデルとなります。この結果は他のソフトウェアとの結果も一致しました。
※Excelの分析ツール【回帰分析】の結果も一致しました。ExcelでもPREFMAPは十分使えます。

折角、AUTOFIT機能があるのでわざわざ上記のようなことをする必要はありませんが、他のソフトウェアとの整合性を取りたいときには役立ちます。

FIZZには様々な解析機能がありますのでご活用ください。

さて、次回テキストはダイナミックプロファイル法を予約限定販売いたします。
ダイナミックプロファイル法のTimeIntensity、TDS、TCATAの入門テキストとなります。

TimeIntensityとTDSの入門テキストとなります。
今回はTDS等のデータ収集ソフトをお持ちでない方のためにMagicSense(特別版)同梱バージョンを用意いたしました。

ぜひご利用ください。

予約中「FIZZとMagicSenseで始める時系列官能評価入門テキスト-TimeIntensity/TDS-」

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ExcelでJARスケールのペナルティ分析

前回ご紹介したJARスケールについて、記事内でExcelでも分析できますと書きました。
ご要望があったのでExcelによる解析例をアップしました。

ダウンロードにはユーザー登録が必要ですが、ご興味のある方はダウンロードして見てください。

ユーザー登録はこちら

ダウンロードは、ユーザー登録後にログインして画面右側のダウンロードからをクリックしてください。

追記:
会社のネットワークでは制限がかかっているため、ユーザー登録ができないというご連絡がありました。
メールで送付をご希望の方はお問合せフォームから、題名に「JARファイル希望」と入力して送ってください。
※ファイルサイズは66KBです。フォームに記載されたメールでファイル受信ができない場合は対応できませんのでご了承ください。

追記:
ログインは、ユーザー登録内容を承認後に可能となります。現在、スパムメール防止のため手作業で承認しております。ユーザー登録から承認までお時間をいただくことがございますがご了承ください。

 

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1サンプルで最適化!JARスケール(Just-About-Right Scale)

週末は暑かったですね。
気象庁2/24の今夏の天気の見通しでは猛暑となっておりました。5/24には3か月予報が出ますが、現時点では大きな変更はなさそうです。
どうやら今年の夏も暑くなりそうです。

毎度のことですが、食品関係では気温と天気には振り回されてしまいます。
温度や天気に基づくマーケティングというのもあるそうですが、関連があるのは分かっていてもリードタイム以前に天気を予測できなければ手を打つのが難しいというのが実情のようです。

最適化手法:プリファレンスマップとJARスケール

商品開発で風味の最適化をする場合、プリファレンスマップが一般的に使われます。
しかし、プリファレンスマップから最適点を探す場合は、10サンプル前後は必要になります。

【予約受付中】プリファレンスマップ入門テキスト

もし、サンプル数1つで最適化の手掛かりがつかめたらどんなに良いでしょう。

それがJARスケール(Just-About-Right Scale)です。

JARスケールは最適化の検討で用いられる手法で、試作品や現行品の改良の方向性を検討する目的で使用されます。

 

JARスケールとは

JARスケールではサンプルを実食し、設問の風味について「弱い、ちょうどよい、強い」などを回答します。

例えば5段階のスケールの場合は次のようになります。

1:まったく十分ではない/弱すぎる
2:十分でない/弱い
3:ちょうどよい・・・JAR(Just About Right)
4:多い/強い
5:かなり多すぎる/強すぎる

この他にも「かなり甘すぎる(much too sweet)」など属性を含めた表現にすることもあります。

JARスケールの例

結果がわかりやすいということでマーケティングリサーチで使われることが多いです。

例えば、現行品の評価が甘味が「強すぎる」となれば、甘味を弱めればよいという感じです。
また、サンプル数が1つでよいのも人気の理由でしょう。

サンプル数や量に制約が多い製品の調査は一筋縄ではいきません。
例えば、ラーメン(1食分)などのように1回のサンプル量が多い場合、
アイスのように溶けてサンプルの均一性を保つのが難しい場合にはJARスケールは良い選択肢となります。

JARスケールの解析

JARデータの解析には平均降下(Mean Drops)やペナルティ分析が使われます。
また、JARスケールデータは通常1サンプルなのでそのままではプリファレンスマップを描くことはできません。他の多変量解析もそのまま使うことは難しいです。

XLSTATではペナルティ分析メニューがあるので,そのまま解析できます。

EXCELや他の統計ソフトでも解析できますが、すべて手作業になります。

 

JARスケールの課題

便利なJARスケールですが、いくつかの批判もあります。
例えば、他の属性への相関関係や交互作用を考慮しない点、回答者が提示された属性を異なる解釈で回答するなど点でリスクがあります。

実際の解析で困るのが、JARスケールは順序性を持つ尺度ではない点です。
通常の尺度(ヘドニック尺度や5段階評点など)は1よりも2、2よりも3の方が好ましい、もしくは強いという順序性があります。
しかし、JARスケールは、1や2は弱い(不適)、3は丁度良い(適)、4や5は強い(不適)となっています。中央値の3が最も好ましく、小さくても大きくても好ましさが低減します。順序性のある尺度のようには扱えません。

この特性は、嗜好度との相関係数を見るときに注意が必要です。嗜好度とJARスケールの変数の相関係数は次のような関係になります。

関係性がある場合、嗜好度は順序性を持つ直線、JARスケールは順序性を持たない曲線になるため相関が低くなります。

対策としては、JARスケールを変換してから相関係数を算出するようにします。

 

まとめ

最適化を1サンプルだけで検討できるJARスケールを紹介しました。手間はかかりますがExcelだけでも解析できます。

実食サンプルに制約がある場合にはJARスケールの利用もご検討ください。

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R3.3.3でRコマンダーが起動しない問題

本ブログでも官能評価パッケージSensoMineRを何度か紹介しておりますが、Rコマンダー上でSensoMineRを操作できないという話を聞きました。

当方でもR3.3.3(Base)を新規にインストールし、SensoMineRを下記のサイトの手順でインストールしました。

(以下、>の行はRスクリプトです)

FAQ:「SensoMineR」とは-SensoMineRのインストール方法-

>source(“http://sensominer.free.fr/install-senso.r”)

R上でRコマンダーを立ち上げようとするとエラーが表示されました。

>library(Rcmdr)

R3.3.3エラー

R3.3.3エラー

e1071パッケージがないとのことなので、e1071パッケージをインストールしました。

>install.packages(“e1071”)

r3.3.3_e1071インストール

r3.3.3_e1071インストール

 

Rを再起動し、Rコマンダーパッケージの読み込みをすると無事Rコマンダーが立ち上がり、メニューにはSensoMineRが表示されておりました。

>library(Rcmdr)

Rコマンダー起動とメニューにSensoMineR

Rコマンダー起動とメニューにSensoMineR

環境にもよりますが、当方でも2台のパソコンで同様の状況を確認したのでおそらく原因はe1071パッケージと思われます。

もし、Rコマンダーは立ち上がるがメニューにSensoMineRがないという場合は、SensoMineRのインストールからやり直してみてください。

R3.3.3のRコマンダー不具合対応でした。

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拡張プリファレンスマップ(E-PREF)

新年度が始まりました。

新たに官能評価の担当になる方もいらっしゃると思います。
何かお手伝いできることがあるかもしれません。
お困りの際にはお声がけください。

先日、「食品と開発2017年4月号」に「プリファレンスマップを活用した新商品開発」を寄稿いたしました。
プリファレンスマップの入門から商品開発の活用例までご紹介しております。
また、同号に弊社MagicSenseユーザーの明治大学中村教授、アルファモス社吉田様も寄稿されております。ぜひ、お読み下さい。

分析型官能評価と嗜好型官能評価の融合

分析型官能評価の各手法は商品の品質特性を測定し、品質管理や品質向上を目的として使われてきました。

嗜好型官能評価は、好まれる程度(=嗜好度)を測定する手法として利用されてきました。

この両者を多変量解析を通じて融合したのがプリファレンスマップ(下記、2Dと3D。SensoMineRで推定、作図)です。

現在、プリファレンスマップは官能評価とマーケティングを融合するツールとして活躍の場を広げております。

【過去の記事】プリファレンス・マッピングとは

【FAQ】「SensoMineR」とは

 

売上げに直結しないプリファレンスマップ

プリファレンスマップで扱う指標が売り上げに直結しません。

食品メーカーでは「おいしさ(嗜好度)」という指標を、食品以外のメーカーでは「快適性」「ユーザビリティ」など総合的な商品性という指標を使うことが多いです。

これも官能評価を主導する部署が研究開発部門であることを考えれば不思議ではありません。

一方で、多くの研究開発部門が「良い商品を作ること」から「売れる商品を作ること」に方針を変えてきております。

「コストを度外視した、美味しい商品、良い商品」ではなく、
「価格に見合った、売れる商品を作ること」が目的になってきております。

プリファレンスマップの基本的な使い方は、商品の嗜好度を推定することです。
しかし、そこには経済的な変数や概念が含まれておりません。

「嗜好度」の向上を最終目的とした「嗜好度至上主義」では、嗜好度は高まったが売り上げを落としたということが起こりえます。

古い話ですが、コカ・コーラ社のニューコークの失敗は、単なる嗜好度の向上は売り上げにはつながらない事例といえるでしょう。

【ニューコークの失敗】コカ・コーラ社が、ブラインド調査で美味しいと判断されたレシピでコカ・コーラをリニューアルしたら(商品は買ってもらえないが)大ヒンシュクを買って、元に戻したという話です。(こちらにペプシチャレンジからの一連の流れが掲載されています)

研究開発部門でも売り上げを意識した活動が求めらるようになっております。

そして、嗜好度だけに焦点を当てていたのでは売り上げにはつながらないということです。

プリファレンスマップを扱うときも、売り上げを意識した使い方が必要になってきます。

そのアプローチが、

拡張プリファレンスマップ(Extended preference mapping:E-PREF)

です。

 

拡張プリファレンスマップ(E-PREF)の特徴

E-PREFでは、下記の3つの要因を組み合わせて商品開発に役立つ情報を引き出していきます。

  • プロダクトマップ
  • 目的変数
  • 推定モデル

プロダクトマップの作成では、TDSやTimeIntensityといった時系列データを使うこともあります。TDL(Temporal Driver of Liking)の新しいデータ活用法としてもご提案中です。

目的変数には、売り上げの代替変数を用いることが多いです。

推定モデルではプリファレンスマップ手法にとらわれることなく、目的に合わせてPLSやニューラルネットなど最適な手法を活用します。
更に、大きなデータが得られる場合は人工知能で有名なディープラーニング(多層ニューラルネット)の利用も視野に入れてご提案しております。

上記の3要因をお客様の要望、目的に合わせて最適な手法を組み合わせ、商品開発に役立つ情報を引き出していきます。

弊社サイト「プリファレンスマップ解析サービス」

今回のまとめ

プリファレンスマップは、分析型官能評価と嗜好型官能評価の融合した手法です。

しかし、プリファレンスマップは売り上げに直結しないので、売り上げに直結する拡張プリファレンスマップ(E-PREF)をご紹介しました。

現在、プリファレンスマップのテキストを執筆中です。今回はSensoMineR以外のソフトウェアにも対応いたします。

ぜひご予約下さい。

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味覚テストと官能評価

味覚振興協会が「味覚マイスター」サービスを開始

「味覚マイスター」を認定するサービスを2/20より開始したとリリースがありました。
歯科医師が始めたサービスのようですが、味覚テストと口腔内の「クリーニング」をサービスとしているようです。

一般社団法人味覚振興協会

味覚テストの目的としては、味覚障害を早期発見して治療しましょう、というところでしょうか。

味覚障害はともかく「口腔内の衛生状態」は「味の識別力」に影響します。
弊社TT式味覚検査の解析結果でも「歯磨きの回数」と「テストの正解率」に有意な差がありました。それ以来パネルスクリーニングの事前アンケートには歯磨き回数を設問を設けるようにしております。

医師が運営しているというのがポイントですね。

 

味覚テストの目的と商品

一般的に、味覚テストを利用する目的には次のようなものが挙げられます。

1.一般向け(食育、料理好き、興味)
2.医療用(味覚障害、改善の評価)
3.企業の一般社員用(採用試験、社内資格)
4.官能評価のパネル管理(選抜、訓練、能力評価)

弊社のTT式味覚検査は2004年に一般向け販売を開始いたしました。医療用途では使用できませんが、一般向け・一般社員向け・官能評価パネル向けの3つの用途でお使いいただきました。

当時、ちちんぷいぷいというテレビ番組でケンドーコバヤシさんが来社されて味覚検査を受けるというお話をいただきました。テレビスタッフからご連絡をいただいたときに「ケンドーコバヤシさん」と言われて、なんて怪しそうな名前だと思ったものです。当時のアルバイト学生から人気の芸人さんだと聞き、安心して仕事をお受けいたしました。

その後、法人を主軸として採用試験や社内資格、パネル選抜などでご利用いただいております。

他には次のような味覚テストがあります。

官能評価パネルの味覚テストでは、書籍で処方が公開されているので味の素方式が有名ですね。

医療用の味覚テストではテーストディスク、電気味覚計、ソルセイブなどでしょう。一般には入手できません。

最近は一般向け味覚テストも増えてきているようです。ただし、各種バイアス(識別コード、提示順、色など)への対応がされていないテストがありますので注意が必要です。一般向けということでエンターテイメント性を重視している部分がありますので、そこはご自身で判断ください。

 

 

味覚テストと官能評価

ところで味覚テストは「味覚(口腔内)」の刺激について検査します。においや色といった他の属性については含まれません。
(官能評価のことを味覚テストと表現する場合もありますが、ここでは口腔内刺激に対する応答機能の評価に限定します)

食品の官能評価では、味だけではなく匂いや色といった属性も評価します。何よりも味と思っているものが匂いによる影響ということがあります。
つまり、官能評価のスクリーニングテストとしては味覚テストだけでは不十分ということになります。

ISO8586というパネルの選抜・訓練に関する規格があります。(ISO8586は改訂前はISO8586-1とISO8586-2という2つの規格でしたが、改定後は1つの規格となりました。)

このISO8586ではスクリーニングテストを次の3種類に分類しています(4.4.2項)。

1)五感の機能
2)鋭敏性
3)知覚刺激の記述と伝達

1つめのテストタイプは、感覚器が機能しているかどうかを検査します。視覚を例にとれば、目が見えているかどうか(平均程度の視力)、色の識別能力に問題はないかどうかを検査します。

2つめのテストタイプは、感覚器の鋭敏性を検査します。視覚であれば、視力の検査をするイメージです。

3つめのテストタイプは、知覚した刺激を他者に伝える能力を評価します。視覚であれば、石原表を使った検査で被験者が表に見えた字を実施者に伝えるような感じです。

視覚は比較的他者への伝達が容易ですが、味・におい・テクスチャーは言葉で表現するのが難しいことが多いです。そのため、自分で感じたものを様々な表現を用いて他者に伝えられる能力は記述型官能評価では非常に重要になります。

弊社がスクリーニングテストを設計するときは、テストの目的に合わせて使用する感覚器と上記の3つを組み合わせます。

例えば、

●品質チェックのパネルであれば1と2を組み合わせたスクリーニングテスト、

●記述型官能評価のパネルならば、1と3を組み合わせます。特にエキスパートパネルの場合は検出力も重要なので鋭敏性を加えたテスト、

などにします。

 

簡易的なスクリーニングテスト

ところで今は3月ですが花粉症のパネリストも多いことでしょう。
パネルスクリーニングテストを実施したときは十分な能力だった方でも、この時期だけは匂いがわからないということがあります。

パネルに毎回フルのスクリーニングテストを実施するのは双方負担となるので、評価実施前に簡易的なスクリーニングテストをしてから本評価に入るとよいでしょう。

お勧めは3点試験法です。しかし、3点試験法は提示されたサンプル3品を試飲試食します。
感覚疲労を避けたい場合は、2点試験法にします。1/2のまぐれ当たりの可能性がありますが、一応のスクリーニングになります。

また、一点試験法という評価方法が「新版 官能評価ハンドブック」に掲載されていますが、記憶に基づくA-notA試験法(読み方は、「エーノットエー」が一般的。A非Aなどとも表記)といえます。A-notA試験法は基準となるサンプルAを評価し、次に提示されるサンプルが「A」、または「Aでない」を回答します。通常は先に規準サンプルが提示されますが、この規準サンプルを被験者の記憶に依存するのが1点試験法です。ある程度パネルワークをこなして規準サンプルを記憶していれば効率のよい方法ですが、パネルごとに記憶の程度がバラバラであれば、記憶を検査しているのか、味覚の識別力を検査しているのかあいまいになります。

いずれの方法にしてもメリットデメリットがあります。リスクを理解したうえで手法を選ぶようにしましょう。

 

今回のまとめ

官能評価における味覚検査はパネルスクリーニングテストの一部です。

うまくスクリーニングテストを使って、パネルのパフォーマンス向上、モチベーションアップに活用してください。

 

 

 

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FIZZユーザーも必見!Napping®データをSensoMineRで解析

Napping®の解析

簡単にプロダクトマップを作図できるということで興味が高まっているNapping®(以下、Napping)ですが、解析で困っている方が多いようです。

【過去の記事】Nappingとは

【FAQ】「SensoMineR」とは

FIZZ-CalculationsでもNappingには十分な対応とは言えないので、連携しているSensoMineRで解析するのが手っ取り早いでしょう。

Rを使える方ならば、SensoMineRパッケージのpmfa関数にデータを入れて一発実行でいけます。
しかし、Rはどうしてもスクリプト(プログラムのようなもの)を書く必要があるためハードルが高いです。

そこで解析をテンプレート化してしまえば簡単になります。

 

NappingをRmarkdownでHTML出力

ここではRmarkdownパッケージを使って、テンプレートで解析してHTMLに出力した例を紹介します。

html出力例はこちらをクリック

データはFIZZで取得しました(データには意味はありません)。
FIZZをお持ちでない方は、模造紙にサンプルを書き込んで、基準点から測定した座標を入力すればよいでしょう。

FIZZ-CalculationsにはSensoMineR用のエクスポートメニューがあります。
今回はそのメニューからエクスポートしたデータを使用しました。

Nappingの主要な目的はプロダクトマップの作成だと思いますので、出力例では3種類のグラフだけを出力しています。
pmfa関数では個々人のマップの出力も可能です。今回は非表示にしています。
※nappeplot関数でも個人別マップを出力可能(先)ですが、pmfa関数で出力した方(後)が平均値も表示されるので便利です。


2つのグラフのデータはSensoMineR開発者のサイトからダウンロードいたしました。

英語ですが役立ちますのでご参照下さい。

もし嗜好データがあれば、Nappingから得られたプロダクトマップを使ってプリファレンスマップの作成も簡単にできます。
Rならばcarto関数で一発出力です。

 

Nappingを解析する他の方法

XLSTATもRと同じようにNappingデータからプロダクトマップやプリファレンスマップの作成ができます。
しかし、FIZZからエクスポートされたデータ形式からXLSTATで解析できる形に編集しなおす手間がかかります。

※FIZZのエクスポート設定ファイルを細かく設定すれば手間は軽減できます。

データマイニング(ちょっと昔の表現ですが・・・)では、データ編集が8割などと言われていました。
ソフトウェアは進歩していますが、データ解析の工数の多くがデータ編集というのはあまり変わっていませんね。
しかし、逆に言えばデータ編集を合理化できればデータ解析の大半は合理化できるということでもあります。

Nappingを解析するツールの作成

弊社では、Rのスクリプト作成や解析テンプレートの作成も請け負っております。
ExcelからRを操作して結果を出力するようなツールも可能です。
解析業務のご相談はお気軽にお問い合わせください

ラピッドメソッドの一つNappingの解析方法でした。

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2016年を振り返る:官能評価の動向

ついに12月に突入いたしました。

個人的にはフリーの統計ソフトRを触る時間が恐ろしいほど増えました。
触れば触るほど奥深いと同時に、バグというか課題も見えてきます。その対応も含めてのオープンソースなのでしょう。
基本的には他のソフト(JMPやXLSTATなど)と併用して、結果をチェックするのがよさそうです。
※ほとんどの機能は問題ないですが、官能評価関連のパッケージはところどころに課題があるようです。おそらく、他のパッケージに比べてユーザーにチェックされる機会が少ないためと考えています。

 

今年の官能評価関連の動向にはどのようなことがあったのか振り返ってみました。

まず、一番に気になったのは立命館大学が2018年4月に官能評価学部を開設するという話です。

以前、東京農業大学の先生とお話ししているときに、日本には官能評価学科がないという話題になったことがあります。
東京農業大学には食品香粧学科があり、これが官能評価学科に一番近いと思っておりました。

そうこうしていると、今年のゴールデンウイークぐらいに立命館大学が2018年4月に官能評価学科を開設するという話を聞きました。
当時ネットで検索した際には、学科名は仮称となっていたので最終的には変更になるかもしれませんが、驚いたのと同時に、遂に学科ができるのかという喜びがありました。

ぜひ、日本初の官能評価学科を実現してもらいたいですね。

追記

「官能評価学部」というのは私の記憶違いのようです。失礼いたしました。
サイトを拝見すると、食科学部の中の1つの分野という扱いでした。

社会人の中には、国内に官能評価を勉強する大学がないためわざわざ海外に行く方もおります。カリフォルニア大デービス校のエクステンション講座は有名ですね。
少子化時代には、大学運営において社会人の取り込みも重要です。特に官能評価は企業とのコラボレーションが重要ですから社会人を受け入れられる学部になればいいなと願っております。

構想中とあるので、ぜひ官能評価学を中心に据えてみてはいかがでしょうか?

立命館大学食科学部サイト

 

次に、手法のトレンドですが、今年もTDSの勢いは止まらないようでした。

さらに言えば、ダイナミック官能評価関連の手法の勢いといってもよいでしょう。
TDSに始まり、TCATA、TDLなどの手法が話題に上るだけではなく、実際に実施される機会が増えてきているようです。

そして、今年のISO規格の動向です。

2016年に発行された官能評価関連の規格は2つでした。どちらも既存規格の改訂です。

●ISO 7304-1:2016
Durum wheat semolina and alimentary pasta — Estimation of cooking quality of alimentary pasta by sensory analysis — Part 1: Reference method
デュラム小麦セモリナ及びめん類-官能試験によるめん類の調理品質の推定-第1部:参照方法

●ISO 13299:2016
Sensory analysis — Methodology –
General guidance for establishing a sensory profile
官能試験-方法論-感応プロフィールを確立するための一般指針

ISO 7304は前回の発行が1985年です。30年以上を経たところですので通常の更新だと思います。

ISO 13299は2003年に発行されていますが、13年後の改訂は早いです。
プロファイル法、つまり記述型官能評価は新しい手法が開発されるスピードが速く、多くの企業が採用しています。
普及した手法なので、規格もなるべく早く反映しているのでしょう。

個人的には、記述型官能評価の規格はある程度出来上がってきているので、TDSやTCATA、TI法などのダイナミック官能評価手法の規格を早く発行してほしいと思っています。
ASTMでは検討が始まっているので、ISOでの検討・発行も待ちたいところです。

※食品関連ISOの検討・発行状況などは農林水産消費安全技術センター(FAMIC)でも公開されています。
※ISO規格の検索・購入はJSAが日本語で便利です。

 

最後に、今後の手法の動向について述べたいと思います。

大きな流れとして、官能評価手法は簡略化が進むでしょう。
具体的には下記の3つの方向です。

1.プロセスの簡略化
2.自由度の高まり
3.パネルのコンシューマー化

簡略化とは手法のプロセス全体を簡単にすることです。ラピッドメソッドと言われるもので、これらの手法が普及してくるでしょう。
一方で、情報量は落としたくないという要望もあります。そこで、簡単で必要な情報を取得できる妥当な手法を模索していくと思われます。

自由度の高まりが進み、評価する際に用語選択や回答方法の自由度が高い手法が出てくるでしょう。
記述型官能評価では、すべて事前に決められた用語に回答するQDAに対して、回答者が用語を自由に選択できるFCP(Free choice profiling)のようなイメージです。
TDSやTCATAなどの手法も事前に用語を決めておきますが、回答者が回答時に決めるような手法が出てくるでしょう。
(temporal dominace of free-choice-sensastionsみたいな名前になるんでしょうか・・・。正直、名前が増えるのは勘弁してほしいですね)

パネルのコンシューマー化が進み、嗜好型パネルの利用が主流になってくるでしょう。
簡略化の流れとも一致しますが、エキスパートパネルを構築する手間を考えるとトレーニングをせずに一般のパネルを使うことが増えてきます。
また、嗜好情報との統合解析のニーズが高まっています。プリファレンスマップもその一つですが、エクスターナルプリファレンスマップの場合は、官能評価と嗜好調査を別のパネルで行わなければなりません。これは簡略化の流れと逆行します。
トレーニングを省き、同じパネルから多くの情報を得るというメリットから、コンシューマーパネルの利用が増えてくるでしょう。

ただし、これらはB2Cビジネスの企業の話です。サプライヤーなどB2Bの場合は逆にエキスパート化が進みます。これはメーカー側がコンシューマー化を進めていった結果、足りなくなった部分をサプライヤーに求めていくためと考えられます。

簡略化と情報量の増大はトレードオフの関係です。
どちらも満足する手法というのは難しいと思いますが、これらを模索していく動きは変わらないでしょう。

今年の動向について4つのトピックを取り上げました。

1.大学の官能評価学科の設立(見込み)
2.ダイナミック官能評価手法の活発化
3.記述型官能評価の普及
4.官能評価手法は簡略化・自由化・パネルのコンシューマー化

さて、皆さんの2016年はいかがでしたか?
今年のデータ整理やパネルパフォーマンスのチェックなどしてみてはいかがでしょうか。

FIZZユーザーの方は、FIZZDatabaseもたまには使って見てくださいね。

2016年もあと1か月、宜しくお願い致します。

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【セミナー情報】『SensoMineRで始める官能評価データ解析』(12/8:操作編、12/9:実践QDA編)<弊社主催>

官能評価学会2016(11/13、日本女子大)に展示出展いたしました。
発表ポスターにはTDSの文字が並んでおり、まさにダイナミック官能評価の時代だと感じました。

新しい手法の論文は、手法を導入して1,2年経ってから論文が出てくることが多いので、今回TDSを発表された企業は1,2年前には着手しているということになります。
実際、弊社のコンサルティング案件としても1,2年前というのは非常に多くのTDS案件を抱えておりました。

今年はどうでしょうか?

ダイナミック官能評価の流れは変わりませんが、TDSやTCATAと嗜好データの統合解析が徐々に盛り上がってきています。TDL(Temporal Driver of Liking)もニーズとしては高まっており、MagicSenseを使ってデータ取得しているお客様もいらっしゃいます。

官能評価データと嗜好データの統合解析ではプリファレンスマップがホットなトピックです。

先日の食品開発展で味の素の方がLSA(Landscape Segmentation Analysis)をご紹介したのをきっかけにLSAに対する興味が高まっております。
フリーの統計ソフトウェアRの官能評価パッケージSensoMineRではIdealMapが実装されました。Ideal Profile Analysis:IPA もしくはIdeal Profile Method:IPMというデータから作成するプリファレンスマップの1手法です。

今年の食品開発展で行った弊社セミナーでは、さまざまなバリエーションのプリファレンスマップをご紹介しました。
いろいろな手法や名前がありますが、やっていることは意外と単純です。統計ソフトがあれば多くの場合は手計算で行えます。

しかし、企業の官能評価担当者が個々に統計ソフトを持っているかというと、そうでもないようです。
統計ソフトを会社から支給してもらえていない、購入の予算がないということです。
何千万とする分析機械は買うのに、何故そのデータを扱う解析ソフトが買えないのか私は不思議に思います(企業の事情というのは理解しておりますが・・・)。

なお、弊社ではJMP(シングルライセンス:27万円)もしくはXLSTAT(Sensory年間ライセンス:69,400円)の使用を推奨しておりますが、XLSTATの年間7万円弱でも購入できずにExcel関数で頑張っている担当者もいらっしゃいます。

そんな不遇の官能評価担当者には朗報です。

フリーの統計ソフトRには官能評価パッケージ『SensoMineR』があります。
無料なのに多機能です。Rコマンダーを使えば、Ofiice製品のようにマウスで操作できます。
R操作の本はたくさんあります。その気になれば最新の手法も思いのままです。

しかし、官能評価に関するRの情報が少なく、『SensoMineR』パッケージの使い方や結果の読み方などを習得する機会が少ないと感じております。

そこで今回テイストテクノロジー社初となるRのセミナーを12月に開催いたします。

操作編(2016/12/8)と実践QDA編(2016/12/9)です。

セミナー詳細はこちら・・・(掲載終了)
お申込みはこちら・・・・・・(募集終了)

Rのスキルに不安のある方は、操作編からどうぞ。
R操作の経験があり、Profile法(QDA)やプリファレンスマップの解析に興味のある方は実践QDA編をお勧めします。

ぜひ、この機会に無料の統計ソフトRを習得して、官能評価業務のワンランクアップを目指しましょう。

 

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