Pangborn2023の早期予約の締切は5/26まで

今年のPangborn2023は8/20-24にフランスのナンテ(Nantes)で開催されます。
オンラインではなく、リアルなシンポジウムとなりました。
過去数回の開催日程はお盆前だったのですが、今回はちょっと遅めなのでどうしたものか思案中です。

前回の2021年バンクーバー大会はオンライン開催となり、初日に通信トラブルはありましたがとても興味のあるセッションが多かったです。個人的には、TomCarr氏のキーノート(A trip through sensory science from methods to measures to models)が官能評価手法の変遷の生き証人といった内容で面白かったです。

今回はどのようなプログラムになっているのでしょうか。

実は5/11現在で、2023年のプログラム詳細は決まっていないようです。
情報記載のあるプログラムを見てみたところ、8/22にESNが開催する学習モジュールは面白そうです。但し、50名限定で官能評価業務が5年未満などの参加条件があるので若い研究者には良さそうですね。

また、スピーカーとして若いシェフのNais Pirollet(参照1参照2)が登壇が決まっているようです(リンク先に彼女の動画もあります)。
2023年ボキューズ・ドールの決勝戦(リヨン、フランス)にフランス代表として初の女性にして最年少シェフとして参加しました。
参加決定の時点で24歳ということです。

ちなみに、日本は石井 友之シェフ(アルジェント)が日本チームを率いてボキューズ・ドールに参加されており、24か国中12位(アジア勢最高位)と子供のための料理で特別賞を受賞しました。
日本チームの料理はこちらにてご覧いただけます。

新進気鋭のシェフにはどんな景色が見えているのか興味深く、彼女のスピーチが楽しみです。

円安で価格の上がっている参加費ですが、ディスカウントのある早期予約は5/26迄となっていますので参加予定の方はお忘れなく。

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“Prompt Engineer in Sensory Evaluation”爆誕か!

企業では入社式、学校では入学式や始業式が行われて新年度が始まりました。
人事異動などで新しい環境でスタートされた方もいらっしゃるでしょう。

日本企業の場合、多くの官能評価担当者が官能評価の知識や経験を持たないまま配属されることが多いため、学ぶことが多くて大変だと思います。サポートできることもございますので、お困りのことがあればご相談ください。

さて、そんなコンサルティング業を行っている弊社テイストテクノロジー社ですが、強大なライバルが現れました。

”chatGPT”です。

ご存じの方も多いでしょうが、簡単に説明します。
いや、せっかくなのでchatGPTに聞いてみましょう。

だそうです。

自然な会話や翻訳、文書作成、要約など様々な使い方があります。
Youtubeを見ていると、プログラマーの方がchatGPTを使ってアプリを開発したり、英語学習に役立てたりと様々な使い方を模索されているのがわかります。

たしかに、新しい時代が来た!、という感じがあります。

さて、それでは市場調査や官能評価の担当者にとってどのようなインパクトがあるのでしょうか?

まず、現時点(2023/4/6)でのchatGPTは最新の情報をリアルタイムに取り入れて回答することができません(方法はありますが、通常の利用においては不可です)。
つまり、市場調査のデータソースとしてトレンドや消費者の声を収集するような使い方はできません
今後はできるようになるでしょう(近い将来、恐らくかなり近い・・・)。

次に、噂されているように仕事を奪われてしまうのでしょうか?
また我々の業務の代わりや支援をすることはできるのでしょうか?

リサーチ業務の一部についてchatGPTに4つの依頼をしてみました。
※得られた回答を見て、私が主観的に判定した結果を「判定:」の下に記載しております。

1.調査企画の作成を依頼してみました。

判定:
リサーチ会社の入社2-3年目といったところでしょうか。

2.提供計画(実験計画:釣合い型不完備ブロック計画)の作成を依頼してみました。

判定:
自然な指示で、それらしい表は作成されました。しかし、表を確認したらバランスしていませんでした。
※つり合い型(balanced)と不完備/不完全(incomplete block)をうまく理解できてないようで、うまく指示が出せれば作成できそうです。

3.解析用のRスクリプトの作成を依頼してみました。

判定:
一般的な主成分分析のスクリプトは作成できました(サンプルプログラムレベル)。
実際のデータを与えて作成を依頼した場合、スクリプトは出力されましたが、そのままでは動作せず、修正が必要でした。修正にはR言語の知識が必要なため、初心者の支援には向きません。

4.結果の要約を依頼してみました(属性別平均値の表を与えて要約)。

判定:
商品別平均値を元に商品の特徴を要約できました。
マーケティングリサーチの報告書では、淡々と要約をする場面もあり、リサーチャー1年目の作業を補佐することは可能です。

以上の結果を見ると、chatGPTの回答レベルは「博士課程を卒業した新入社員」といった感じです。

実験計画法やR言語などの専門知識は非常にレベルが高く、質問次第では研究者レベルの知識がどんどん回答されます。
一方で、こちらの指示を元に目的に合致した回答が出てくるかというと、そこはまだ難しいようです。

指示の出し方や質問の範囲を適切に設定すれば有用です。しかし、適切な指示を出したとしても間違いがあるようなので、当面の利用者はchatGPTの回答の間違いに気が付き、修正できる知識があること(中級者以上)が前提となります。

当面は中級者以上の支援ツールとなりますが、それでも十分役立つ支援ツールです。
近い将来、机上の業務(設計や解析など)は代わりに仕事をしてくれるようになるでしょう。

さて、実際の業務では、

「あの件、どうなった?」
「報告書をもっと見やすくして」

などと、上司からのあいまいな指示でも業務は進んでいきます。

上記レベルの指示でchatGPTが適切な作業をすることはかなり難しいでしょう。
当面は仕事を奪われることはなさそうです。

しかし、細分化された机上業務はAIによって代替することはできるようになります。
そして、人間のあいまいな指示や質問をAIに適切に翻訳して伝える業務が増えてくるでしょう。

実際、chatGPTでもプロンプトエンジニアリング(prompt engineering)と呼ばれる技術について、youtubeや書籍・ブログ等ではホットなトピックになっています。
今年の夏頃には「2時間でわかるプロンプトの書き方」なんてのが出版されるのでしょうか(アマゾンではchatGPTについて既に相当数の書籍がありました)。

プロンプトエンジニア(prompt engineer)は、AIエンジンの特性に合わせた指示文(プロンプト)の作成スキルを身に着けており、さらに業種別の知識(ドメイン知識)が必要になります。
そのため、プロンプトエンジニアは業種別で活躍するでしょう。

今後は対話型AIの普及に伴い、企業の官能評価技術者の多くは「Prompt engineer in sensory evaluation」となっていくでしょう。

PESE爆誕ですね。

私も数年後には「職業PE(ピー・イー)」なんて言ってるかもしれません。

今回は巷で噂のchatGPTについて、官能評価分野からの視点で書いてみました。
おそらく変化のスピードは、相当早いと思いますので私も勉強して行きたいと思います。

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令和4年2022年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
2022年は北京オリンピックとウクライナ侵攻で始まりました。
そんな今年2022年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.サステイナビリティとユーザビリティの狭間
2.ISO・JIS関連の更新情報

1.サステイナビリティとユーザビリティの狭間

サステイナビリティやSDGsといった活動は企業活動の中でも重要な位置付けになってきました。
近年の官能評価関連のシンポジウムでも大々的に取り上げられており、官能評価分野においても重要な活動指針として浸透してきています。

サステイナブルな取り組みとして「脱プラスチック」が話題になりました。
身近な例ではプラスチックストローから紙ストローへの移行です。

セブンイレブンやスターバックスなど大手チェーンが紙ストローを採用し、マクドナルドが2020年10月から紙ストローに順次切り替えていくと発表しました。

身近に紙ストローを使う利用者が増えたことで、紙ストローのユーザビリティ(使い勝手)がネットを中心にコメントされました。

好意的なコメントもありましたが、一方で感触の違和感や味の変化について否定的なコメントが書き込まれました。

官能評価技術者として、今回の紙ストローによるユーザビリティへの否定的な影響は十分予想できたものです。
官能評価の担当者が評価設計を考えるとき、提供する容器が商品特性に影響することを知っているため容器の検討には十分に注意を払います。ワインのテイスティングのグラスについてISO規格があるくらいです。

今回の意思決定に官能評価の結果が使われたかどうかは不明ですが、満足のいくストロー材の移行とはならなかったようです。

今後も「良い商品」を作ると同時に社会的・環境的な影響に配慮した商品開発が求められてきます。
その中で商品特性(官能特性)やユーザビリティを最大にすることに加えて、「丁度よさ」や「ほどほど」な商品開発の比率も増えていくでしょう。

今回の紙ストローも「飲み口の良さを最大化」することは制約の中で実現できなくても「ほどほどの飲み口」を模索することはできたと考えます。

商品開発や官能評価の担当者は、商品の特性を微調整する技術が必要です。
官能評価の実施方法だけではなく、特性を管理する実験計画の技術が重要になってきます。

官能評価で実験計画といえばバイアスや実施回数の減少を目的に導入することが多いですが、これに加えてタグチメソッドのような特性を管理するために実験計画法を導入することが必要です。
官能評価の設計技術の高度化が今後のキーワードとなるでしょう。

紙ストローの改善が進められているので、近い将来にはプラスチックストローに近い使い勝手の紙ストローが普及するでしょう。
コスト次第でしょうが、、、。

2.ISO・JIS関連の更新情報


2022年のISO更新情報です。

今年は新規規格「ISO 21380」(抹茶)が発行されました。その他の新規や更新もありませんでした。
ここ数年では一番少ない年ですね。

ISO 21380(2022)
Matcha tea – Definition and characteristics(抹茶 – 定義と特徴)
Publication date : 2022-04
Number of pages : 11

--【概要】と【目次】--

本規格には、国際取引で「抹茶」と呼ばれるお茶の栽培、製造(加工、粉砕を含む)、および官能分析に関する情報が記載されています。
これは、使用される植物源、栽培および生産方法に基づいて、国際的に合意された抹茶の定義を提供します. これらは、抹茶の物理的、化学的、感覚的特性にとって重要です。
フレーバー抹茶、ブレンド抹茶、または抹茶のカフェイン抜き抽出物または可溶性抽出物には適用されません。

序章
1 スコープ
2 参考文献
3 用語と定義
4 抹茶の4つの由来
4.1 抹茶の歴史的起源
4.2 記述名 – 抹茶、緑茶、黒茶、白茶
4.3 植物の供給源、栽培および収穫
4.4 加工および生産段階
4.5 官能評価分析
4.6 賞味期限
5 5つの特徴
5.1 一般特性
5.2 化学的特性
附属書 A 抹茶と碾茶のサブタイプの外観
附属書 B 栽培と加工
参考文献

--ここまで--

日本国内でも抹茶の商品は数多く、期間限定品から定番商品となってきています。
海外でも抹茶の人気が高まっており、抹茶というブランドを保つためにも規格化されたことは日本としては良かったといえるでしょう。
抹茶の価値が高まれば、日本の抹茶商品も多く求められるでしょうし、寿司のカリフォルニアロールのように日本の良いところと新しいものを組み合わせていくことで新たな市場が創造されていくでしょう。
規格の内容は抹茶の定義が中心で、官能評価に関する項目は「4.5 Sensory analysis(官能評価分析)」となっております。

さて、今年の規格の発行が少ないので、Under development(開発中)についても状況を確認してみました。
Sensory関連で開発ステージが40を超えている規格が4つあります。4つとも新規ではありません。

●開発中の更新規格
ISO 8586
Sensory analysis – Selection and training of sensory assessors
Stage: Under development (50.00)
Edition: 2

ISO 22935-3
Milk and milk products – Sensory analysis – Part 3: Guidance on a method for evaluation of compliance with product specifications for sensory properties by scoring
Stage: Under development (40.60)
Edition: 2

ISO 22935-2
Milk and milk products – Sensory analysis – Part 2: Recommended methods for sensory evaluation
Stage: Under development (40.60)
Edition: 2

ISO 5492
Sensory analysis – Vocabulary
Stage: Under development (40.99)
Edition: 3

新規の規格では、開発ステージは20.00と低いですが下記の「ISO 5877」(非管理領域での実施指針)が気になりますね。

●開発中の新規規格
「ISO 5877」
Sensory analysis – General guidance for conducting perception tests with consumers in usage conditions, in uncontrolled area
官能分析 – 管理されていない領域での使用状況で消費者との知覚テストを実施するための一般的なガイダンス
Stage: Under development (20.00)
Edition: 1

今年は個人的に、糖質オフの菓子に興味津々でした。
業務では、11月に開催された官能評価学会でご紹介した「喫食量モニタリング装置」の開発もほぼ終了し、来年は事例開発に注力したいと思います。

withコロナの社会がどうなっていくのか、為替や原材料の変化にも対応しながら2023年も頑張っていきたいですね。

本年も大変お世話になりました。
来年も何卒宜しくお願い致します。

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官能評価学会2022年大会 弊社資料ダウンロード

2022/11/20に開催の「官能評価学会2022年大会」に弊社テイストテクノロジーは企業展示として12時過ぎに2分間のプレゼンを行いました。

時間配分を失敗してしまい、一番お伝えしたかった「喫食量モニタリング装置」についての紹介がほとんど出来ずに終わってしまいました。(言い訳ですが、直前にソフトウェア紹介と実績を入れたのが敗因でした)

お問合せを頂きましたので、プレゼン資料をダウンロード出来るようにいたしました。

※右のダウンロードリンクからダウンロードできます。ダウンロードには登録が必要です。

喫食量研究の事例も増えてきており、「喫食量モニタリング装置」は非常に面白いツールだと考えております。

興味のある企業様は、ぜひお問い合わせください。

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ラピッドメソッド本とPolarized sensory positioning(PSP)のご紹介

官能評価のトレンドは、なるべく早く簡単にできるラピッドメソッドです。
NappingやCATAといった手法がラピッドメソッドとして有名ですね。

そんな手法をまとめて紹介した本が「Rapid Sensory profiling techniques and related methods」(2014年)です。CATA、Napping、Sorting、TDSなどが紹介されており、役立つ一冊です。

そんな「Rapid・・・」ですが、第2版が発売されます。
ELSEVIER社のサイトでは2021/3/1発売となっていますが、Amazonでは2022/11/15です。いずれのサイトも予約受付中となっております。

目次を見た感じでは概ね同じではありますが、時代に合わせてFree-JARなどが追加されています。

下記、目次を比較してみました。

初版-2版の目次比較

5つのチャプターが新規に追加され、3つのチャプターが削除されました。初版を持っていれば改めて買う必要はないと思いますが、未だ持っていない方は購入をお勧めします。
※英語版のみ。2版はペーパーバックのみ。初版はペーパーバックとeBookあり。

ラピッドメソッドの用途として多いのがプロダクトマップの作成です。

その中でも必ずと言っても良いほど挙げられるのが「Napping」です。認知度も高く人気の手法です。過去にもブログで取り上げています

そこで今回取り上げるのは「Polarized sensory positioning:PSP」です。

PSPもプロダクトマップを作成する手法です。
特徴は下記の3点です。

1.特別なデータ収集ソフトが不要

2.パネルの訓練が不要

3.異なるデータを同じマップに重ねることができる。

1については、Nappingをパソコン上で行う場合は官能評価ソフト(FIZZ/Compusenseなど)が必要になります。PSPはラインスケールやスライダー方式のアンケートシステム(無償版もあり)であればそのまま実施できます。

MagicSense-linescaleモジュールによるPSP回答画面

仮に用紙で行う場合でも、Nappingは様々な用具が必要になりますが、PSPはラインスケールを印刷した回答用紙を用意するだけで実施できます。但し、回答値の読取(定規で測る)が大変なのでパソコン上で実施することをお勧めします。

次に、2のパネル訓練ですが、官能評価用語(属性)を使わないので用語共有化の訓練が不要です。また、尺度もリファレンス品に対する類似性について回答するだけなので、QDAのような強度訓練が不要です。回答方法もラインスケールを使うため、初見でも容易に回答できます。

Nappingも簡単ではありますが、進め方など多少の説明は必要になりますので、比べるとPSPの方が簡単です。

3のマップの重ね合わせですが、これこそがPSPの特徴ともいえます。
PSPではリファレンス品に対する類似性を回答するのですが、このリファレンス品を同じものを使うことで異なる次期やセッションで取得したデータを同じマップ上に表示することができます。

一方で、デメリットもあります(下は対策方法)。

1.簡単な解析ツールがない
⇒Rで解析可能。

2.属性に関する情報がない
⇒フラッシュプロファイリング(FP)/UFPなどで情報追加可能。

3.軸の解釈が困難
⇒他の記述型手法と組み合わせるか、試料/リファレンス品の事前情報/機器分析から解釈可能。

PSPはリファレンス品に対して評価サンプルの類似性を回答することでマップを作成する手法です。

リファレンス品と評価サンプルを比較する手法は古くからあり、Larson-PowersとPangbornらは「Deviation from Reference」を使用しています(1978年)。

日本でお馴染みの「一対比較法」も、比較品にリファレンス品を置けば類似の手法と言えます。

独立評価※1(試料を単体で評価)は、評価回数が少なくて効率的ではありますが、評価基準を内的基準(パネリスト自身の基準)とします。

※1独立評価/独立査定/絶対評価(independent assessment):
直接的な比較を行わず,評価者各自がもつ基準によって評価する試料呈示方法。

JISz8144定義より引用

一方、比較評価※2(試料を何かと比較して評価)では、評価回数が増えてしまうため、数多くの試料を評価することができません。しかし、評価基準を外的基準(別試料やリファレンス品を基準)とするため再現性や一貫性が得やすくなります。

※2比較評価/比較査定/相対評価(comparative assessment):
比較対象との直接的な比較によって評価する試料呈示方法。

JISz8144定義より引用

PSPでは、通常は先にリファレンス品(Poleという)を確認してから評価対象の試料を評価します。そのため独立評価に近い形で試料を評価できるので、サンプル数が増えても回答できます。また、リファレンス品を用いることで、セッションを分けて実施することで評価サンプルの数を多くすることができます。

プロダクトマップ作成を簡単にしたいと考えていたら、PSPのご利用も検討してみてはいかがでしょうか。

そんなPSPですが、先に紹介したように「Rapid Sensory profiling techniques and related methodsー2ndEditon」が出版されますので、そちらをご覧いただくことをお勧めします。

もちろん手法導入のコンサルティングもお受けしております。

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令和3年2021年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
2021年も激動の一年でした。新型コロナの感染拡大により生活様式が大きく変化した社会の中で東京五輪の開催されました。新型コロナウィルスの変種が次々と現れて、なかなか収束の目処が立っていないように思えます。
このブログを書いていたら、今度は東京23区を震源とする地震までありました。東京23区を震源とする地震は珍しいですね。

今年2021年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.Pangborn2021のオンライン開催
2.ISO・JIS関連の更新情報

1.Pangborn2021のオンライン開催

今年開催されたPangbornシンポジウムはオンライン開催となりました。カナダのバンクーバー開催の予定でしたがオンライン開催に変更になりました。
個人的にはオンライン開催になって便利になったと感じています。
便利だった理由は2つあります。

1つ目は動画が録画されて一定期間公開されたことです。これによって見逃したり、何度も見たい内容を確実に見ることができるようになりました。会場開催の場合は、複数の場所で同時開催されることがありますので見逃しが出てきます。また、英語のプレゼンテーションに理解が追いつかない時は動画であれば見直すことができます。さらに動画ならばgoogle翻訳や字幕機能を使って理解しやすくなります。

2つ目は、開催地への移動が無いことです。当たり前ですが、オンラインなので自宅や会社など好きな場所で参加することができました。Pangbornは8月頃に開催されているのですが、いつも仕事の都合で参加できないことがほとんどでした。シンポジウム自体が3,4日間とこれに前後の移動日を含めると1週間近く時間を取られてしまいます。オンラインでも時間の拘束はありますが、最小限に抑えられているというのがメリットです。

一方でデメリットもありました。私の感じたデメリットを2つあげます。

1つ目は、他の参加者とのコミュニケーションが取りにくかったことです。
顔を合わせてシンポジウムに参加していれば、何かしらのきっかけで会話することがあります。それに食事や休憩時間など主催者側もコミュニケーションの機会を作っています。

今回、ブラウザやアプリ上で参加者間のコミュニケーションツールも提供されていましたが、私は結局知っている人にしか使いませんでした。やはり初めて会った人にオンラインでいきなり話しかけるのは気が引けます。実際に会場で会っていれば「どこから来ましたか?」なんて会話も始められるのでしょうが、オンライン直メッセージはハードルが高かったです。
これはオンラインコミュニケーションの慣れの違いもあるのかもしれませんので、有効活用された方もいると思います。

2つ目のデメリットは、配信トラブルです。
今回のPangbornでは初日からトラブルが発生しました。トラブルの原因は主催者側のネットワークや配信ツールが問題の場合もありますし、利用者側のネットワークが問題となる場合もあります。他のオンラインシンポジウムでも発生していますが、オンライン会議・セミナー等の経験値が上がってくればトラブルは減ってくると思いますが、当面はこの問題がオンライン開催のデメリットでしょう。

次回2023年はフランス・ナント(Nantes,France)に決定しています。
会場開催に加えてオンライン配信もやっていただければ両方のメリットを享受できるのですが、会場参加者が減ってしまうかもしれないのでバランスが難しいですね。

フランス・ナントでは新型コロナが落ち着き、会場開催ができることを願っております。

2.ISO・JIS関連の更新情報
2021年のISO更新情報です。

今年は更新3、新規2の合わせて5つの規格が発行されました。
比較的多かったと思います。

特に興味深いのはISO 20784「官能及び消費者製品の主張の実証に関するガイダンス」です。
ちょっとわかりにくいタイトルですが、商品の広告やパッケージに記載する感覚的な内容(おいしい!、息爽やか!など)をデータで実証するためのガイドラインです。

医薬品であれば様々な法的規制がありますが、一般的な消費者向け商品では感覚的な主張(最高にいい匂い!)の規制は業界ごとにバラバラです。

結局の所、その商品を発売する国や地域の規制に従うしか無いのですが、どのように感覚的な主張をサポートする実証研究を行うかの一般的なガイドラインがISO 20784には示されています。

おすすめしたいのはAnnex Aケーススタディです。
なんと8つのケース(事例)が掲載されています。

A.1 Non-comparative- Affective:“Tastes great”
A.2 Non-comparative- Performance:“Leaves no residue”
A.3 Non-comparative- Performance:“Easy to prepare”
A.4 Comparative- Affective:
  “30 % reduced salt, same great taste”
A.5 Comparative- Unsurpassed – Performance:
  “Cleans as well as the leading brand”
A.6 Comparative- Superiority – Affective:
  “The ketchup taste consumers prefer on their burger”
A.7 Comparative – Superiority – Performance:
  “Less clumping than other comparably-priced brands”
A.8 Non-comparative – Attribute:
  “Now less bitter” or “now with more roasted flavour”

例えばA.1はサラダドレッシングの事例です。
パッケージラベルに「Tastes great」(すごくおいしい)を表示したい時にどんなテストを実施するかが取り上げられています。

テレビやインターネット広告だけではなく、商品コンセプトやパッケージに記載する言葉を扱う業務の方は目を通しておくと良いと思います。
ISO購入するほどではないという方は、こちらのPDFを参照しても良いでしょう。ISO20784の巻末Bibliographyにも掲載されています。

ISO 20784が官能評価分野で発行されたことは興味深いです。
官能評価技術者は、研究室にこもって商品のプロファイルや品質チェックをしているだけではなく、パッケージや広告といった他部門との協業が欠かせなくなってきているためだと考えています。

この他、ISO4120三点試験法やISO11056マグニチュード推定法は、定番の官能評価手法をアップデートしたものです。
特筆すべきはISO 11056マグニチュード推定法にて、パネリスト因子(assessor factor)が固定因子だけだったのですが、ランダム因子としても扱うようになりました。ISO 11132でもモデルの拡張がされています。多くの官能評価ソフトウェアでは対応していましたが、ISO規格の方もパネリスト因子をランダム因子として扱う方向になりました。

ISO 22308は新規の規格ですが、コルク樹皮の利用者に特化した規格です。

以下、2021年に発行された規格一覧(規格番号順)です。ISOの「sensory」検索結果はこちら(ISO.org)

【更新】
●ISO 4120:2021
官能試験-方法論-三点試験法
Sensory analysis — Methodology — Triangle test
ページ数:17p
発行年月日: 2021-03-03
主な変更点:
・食品および飲料の用途を超えて一般化されています。
・以前に強調された推測モデルに加えて、サーストニアンモデルの使用方法に関するガイダンスが追加されました。

●ISO 11056:2021
官能分析-方法-マグニチュード推定法
Sensory analysis — Methodology — Magnitude estimation method
ページ数:31p
発行年月日: 2021-05-27
主な変更点:
・パネリスト因子は固定因子またはランダム因子と見なされます(以前の版では、パネリスト因子は常に固定因子と見なされていました)。
・さまざまなテーブルを取得するために使用されるRコマンドが明示的に指定されています(以前のエディションでは、結果のテーブルのみが指定されていました)。
・数値例は、ユーザーがテーブルの処理の進化を理解できるように、変更なしで保持されています。
・新しい例がB.2として追加されました。

●ISO 11132:2021
官能試験-方法論-定量的記述感覚パネルの性能測定のためのガイドライン
Sensory analysis — Methodology — Guidelines for the measurement of the performance of a quantitative descriptive sensory panel
ページ数:22p
発行年月日: 2021-09-08
主な変更点:
・タイトルが変更され、ドキュメントが記述型パネルに適用できることを明示しました。
・スコープが改訂されました。
・定義が改訂され、新しい用語エントリが追加されました。
・専用手順のプロセスが改善されました。
・実験計画がレビューされ、拡張されました。
・分散分析に関連する統計分析は、特にセッションとパネリスト(固定またはランダム)の効果と相互作用に関して、より多くのモデルを含むようにレビューおよび拡張されています。
・スコープの変更に合わせて、再現性に関連する副次句(具体的には元の6.4.4および7.4)と付録BおよびCが削除されました。

【新規】
●ISO 20784:2021(新規)
官能分析-官能及び消費者製品の主張の実証に関するガイダンス
Sensory analysis — Guidance on substantiation for sensory and consumer product claims
ページ数:18p
発行年月日: 2021-03-23

●ISO 22308-1:2021(新規)
瓶詰め製品として選択されたコルク樹皮-第1部:官能評価-浸漬による官能評価の方法論
Cork bark selected as bottling product — Part 1: Sensory evaluation — Methodology for sensory evaluation by soaking
ページ数:7p
発行年月日: 2021-01-07

以上、2021年のISO発行状況をご紹介しました。
ISOの傾向としてRの引用が増えてきています。実務でもRの利用が増えてきていますので、現実に即したものでしょう。また、解析手法もソフトウェア等で採用されて普及されてきているアプローチが採用されており、妥当といえます。規格ですので進歩的なものは採用されにくいのでしょうが、ある程度普及されたところで反映されていると思います。

しかし、日本の実務レベルとしてはISOの内容でさえ進歩的とも言えてしまうのが何とも歯がゆいですが・・・。

最後に

2021年は、2020年よりは業務が進められたと思います。
しかし、コロナ以前と同じ方法では実施できない調査や官能評価もあり、例えばオンライン官能評価オンライン・パネルトレーニングなど様々なアプローチを提案・実行してきました。

新規データが取れなくて困っている企業様には、既存のデータを使ったプロファイル推定など、データマイニング・機械学習などの応用も行ってきました。社内パネルの活動が少なかったクライアントも多かったですが、過去の評価データを使ったパネルパフォーマンスのチェックが出来てちょうど良かったと思います。

今年もあと僅かとなりました。
皆様、良いお年をお迎えください。

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次回15th Pangborn2023はナント(Nantes,France)に決定

先週Pangbornが無事終了しました。
最後に次回開催地が、フランスのナント(Nantes)と発表されました。
二年後の2023年ですが、コロナが収束して会場実施になるといいですね。

参加し終えた感想です。

まずは初日のシステム不具合でしょうか。
最初のキーノートスピーカーがプレゼンを終えて、質疑応答に入ったときシステムに不具合がおきました。オープニングから1時間足らずで起こったトラブルでした。動画が途切れて見れなくなりました。ポスターなどは閲覧できていました。

1時間ほどでZOOMに切り替えて一部プログラムを実施しました。その後、エルゼビアのシステムの修復が終わって本来のシステムで再開されました。以降はシステムの大きなトラブルもなくスムーズに進行したと思います。

トラブル対応で一時的に導入したZOOMを使って知ったのですが、ZOOMはRecording-transcriptがテキスト表示(ダウンロード可)できるんですね。これは非常に便利でした。transcriptをgoogle翻訳をかけるとあっという間に日本語訳が出来上がりです(精度は・・・)

ところでシンポジウムの名称であるPangbornというのはRose Marie Pangbornさんの人名が由来ですが、発音はパングボーンだと思っていました。しかし、今回何度もペングィンに聞こえました。もしかしてパングボーンという発音の方が間違っているのでしょうか?
googleの音声認識でもpenguinになっていたので、そう聞こえなくもないということでしょうか・・・

全体的な盛り上がりとしては、初日オープニングでは同時接続人数は800弱で、人気のあるプレゼンは600を超えていましたが、多くは200-400台でした。最終日の閉会式は200程でした。同時接続人数はイコール参加人数ではないのですが、傾向としては同様だと思います。

会場実施の場合は、見たい講演を逃さないように興味のある会場に足を運びますが、オンライン実施となったことで公開された動画も自由に見られるので、リアルタイムで参加するメリットが小さくなったように思います。

リアルタイムで参加するメリットは、ライブ感と質疑応答に参加できることです。
逆に言えば、質疑応答しないのであれば録画でも十分といえます。

一方、リアルタイムのメリットがあったのはSocial Eventでした。マジシャンが視聴者に問いかけ、視聴者がチャットでコメントする。マジックをリアルタイムでネット参加するのは初めての経験でしたが、面白かったです。

一部トラブルはありましたが、初のオンライン開催を実施した運営の方々には感謝でいっぱいです。お疲れさまでした。

日本の参加者も14時間の時差の中で大変だったと思います。お盆休みと重なった中で参加された方も多かったようですが、お疲れさまでした。

以上、14th Pangborn オンラインシンポジウム参加の感想でした。

発表内容についての感想は、別の機会に述べたいと思います。

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時差14時間のPangbornは本日21時45分(日本時間)から開催!

東京オリンピックが終わり、Pangbornが始まります。

元々はバンクーバーで会場実施される予定でしたが、コロナの影響でオンライン開催となりました。覚えている方もいると思いますがバンクーバーも2010年に冬季オリンピックを開催した都市です。1988年にはカルガリーオリンピック(冬季)もありましたね。やはりカナダは寒い国なのでしょうか。

実際、この時期にバンクーバーに行くと気温は20℃前後で8/9 16時現在16℃と表示されています(yahoo.com weather)。もし、バンクーバー実施だったら日本との温度差にびっくりしたことでしょう。

そして今日(8/9)の日本時間(JST)21:45から14th Pangborn(2021)が開催されます。
時差がCDT(米国中部標準時間)とは-14時間なのでリアルタイムで参加するのは中々大変です。
リアルタイムを気にしなければ、24時間後には録画ビデオが公開されますし、朝4時(JST)くらいに早起きすれば午後の後半部分はリアルタイムで参加できます。

会場実施の場合は、同時に別会場でプレゼンがあるので全てを見ることができないのですが、今回のオンラインでは同時プレゼンがないので探しやすいです(ポスター、チャット等は別)。

しかしプログラムが見難い。PDF一枚で見れたら良かったのですが、すべてブラウザ上で提示され、しかも都度クリックしないと詳細が表示されない。KEYNOTEと表示があっても実際にはKEYNOTE、Q&A、3つのプレゼンとディスカッションで構成されており、いちいちクリックして見に行くのが手間でした。

開催前に目を通した中で私が気になっているのは次の2つ(もっとありますが、とりあえず)です。

1日目 8/09 09:30-09:45 CDT
KEYNOTE1/O1.3 「Taste and smell perception in hospitalized COVID-19 patients」

3日目 8/11 15:30-15:45 CDT
KEYNOTE6/O6.3 「Moving consumer testing into the home」

1つ目は現在進行形なコロナ患者の味覚嗅覚の研究です。
味覚嗅覚の機能評価は主観評価が多い中で12臭と4呈味を使った客観的指標の内容となっています。コロナ治療のきっかけになるといいですね。

2つ目は、リモート評価についての大規模な研究です。
私も7月の官能評価学会企業部会で「リモート評価」について発表させていただきましたが、その内容と類似テーマだったので、非常に気になっています。

Abstructを読んだのですが、「まだデータ解析中で、2021年6月には結果がでる。Pangbornでは、頑健で画期的な研究結果を学ぶ機会が得られるぞ(意訳、下記原文)」

Data analysis is on-going with results available by June 2021, thus presentation at Pangborn will give delegates the opportunity to learn the outcomes of this robust and ground breaking study.

180を超えるデータセットからの解析結果ということで、これは気になりますね。

ポスター展示は100件を超えているので、まだまだ目を通していませんが、時間を見つけて読みたいですね。

さて、あと5時間ちょっとでPangborn開催です。
そして昼夜逆転生活の始まりです!!

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今年のPangborn2021は8/9から4日間開催

スポーツの世界的なイベントである東京五輪は7/23から8/8までの開催日程となっているようです。

そして官能評価の世界的なイベントであるPangborn2021は、五輪直後の8月9日-12日にオンラインでの開催となりました。

ライブ ストリーミングによる講演とポスターを備えたグローバル オンライン カンファレンスとして開催され、イベント後はオンデマンドで動画・資料等にアクセスできます(公開期間は異なりますのでサイトをご参照ください)

もともとバンクーバー(カナダ)での開催でしたが、新型コロナの状況や時間的金銭的なコストパフォーマンスを考えるとオンラインカンファレスというのは今後の主流となっていくのかもしれません。

ライブ カンファレンスに参加するために 2021年8月6日までに登録する必要がありますのでご興味のある方はご注意ください。

Pangborn2021のサイト

私は既に登録いたしましたが、ちょっと分かりにくかったです。
登録ボタンを押していくとカンファレンス運営のElsevier社のサイトで申し込み手続きとなります。なぜか、最初はElsevier社のサイトが表示されなかったのですが、数日たってからアクセスしたら登録できました。
industry professional delegateで申し込みしたので$300(250+50TAX)でした。
支払いはクレジットカードかPaypal(PayPayではないですよ)の2択でした。
申し込みが完了すれば登録したメールに「Order complete confirmation」というメールが来ます。
過去にElsevier社に登録した方は登録メールパスワードがあるとスムーズです。

今回のPangborn2021について私が気に入っている点を3つご紹介します。

・ライブストリーミングの出席が事前登録可能です。事前に予定が組めるので便利ですね。

・講演やスライドが後日閲覧可能となるため聞き逃しや理解不足を補うことができます。これはオンラインならではのメリットです。

・他の研究者とのネットワークづくりもオンラインを通じて交流を深めることができます。
個人的には英語が得意ではないので、Google先生の力を借りながらチャットできるので対面よりも都合が良いです。

ライブストリーミングやタイムスケジュールは現地時間CDTで記載されているようなので、日本との時差は14時間あります。
初日はCDT7時半、日本では21:30開始ですね。残り3日間はCDT8時から開始ですので日本では22時開始となります。

日本では夜中に開催されるという事情もあって、講演が後日閲覧可能というのは非常にありがたいです。

申込締切は開催ギリギリの8/6なのですが、忘れてしまわないように早めの登録をお勧めします。

※上記記載内容は不正確な場合がありますので、正しい情報についてはPangborn2021のサイトならびに運営にご確認ください。

最後に講演のお知らせです。

7/16開催の官能評価学会企業部会定例会でお話させていただくことになりました。企業部会の参加は大変久しいのですが、何卒宜しくお願い致します。

企業部会開催案内リンク

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令和2年2020年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
2020年は激動の一年でした。新型コロナの感染拡大により生活様式が大きく変化し、社会のあり方も変化させてきました。東京五輪の開催も延期され、来年開催については不確定要素が多い状況です。

そんな2020年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.新しい生活様式
2.CATAの普及
3.ISO・JIS関連の更新情報

1.新しい生活様式

官能評価運営において新型コロナの影響は直撃しました。
コロナ対策として「3密を避けましょう」と叫ばれる中、官能評価の実施はまさに3密状態!

3密を避けるとなると既存の官能評価手法自体が成立しません。
同一の環境(会議室など)に複数のパネルが集合し、訓練や評価を行うのが一般的なやり方です。
しかし、これでは3密を避けることにはなりません。
様々なところでアクリル板をつかった対策がされていますが、実効性となると強力な対策とは言えません。
今後の「新しい生活様式」を念頭に置いて新しい方法論を模索する必要が出てきました。

まず考えられるのは会場方式(CLT)からの変更です。
複数の人と会わずに済む方法として「個別実施法」が考えられます。
1つ目は会社で実施する方法です。会社の会議室にパネリストが交互に出入りして、個別に実施する方法です。
もう1つは、自宅で実施する方法です。自宅に評価用具・サンプルを持ち帰って(または郵送して)評価を自宅で行う方法です。これはホームユーステスト(HUT)と呼ばれる方法に近いです。
ホームユーステストでは使い方を細かく指示せず、普段通りに利用した意見を聞くことが多いですが、官能評価の場合はある程度の指示によって利用方法を統制することが求められます。

テレワークが主流となった会社では、会社で実施する方法も難しくなってきています。
そこで、社内評価の流れとしてはHUT型の官能評価でしょう。

また、HUT型とすることでパネル訓練の実施が難しく、訓練なしで手軽に実施できる手法が注目されています。
それがラピッドメソッドです。

ラピッドメソッドの中でも、特にCATAの急激な普及が目覚ましいように感じます。

新しい生活様式の下、ラピッドメソッドの活用は広がっていくと考えております。

2.CATAの普及

2019年末のブログにも「ラピッドメソッドの定着化」を述べましたが、特にCATA法とナッピング関連手法の普及が進んでいます。
2020年の官能評価学会でもCATAに関連する発表が多いことからも注目を浴びている手法であることがわかります。
しかし、ここで発表された内容は新型コロナが広がる前に実施されたデータが多く、必ずしもコロナの影響でCATAを行ったというわけではなさそうです。

しかし、1つ目のトピックでも書きましたがHUT型の官能評価を考えたとき、ラピッドメソッドはより良い選択肢といえます。
特にCATAは下記の特徴があります。

・訓練なしでも可
・一般的なツールで実施できる(アンケートサイト等)
・多サンプルに対応(QDA・評点法等に比べて)
・パネルの人数で検出力を調整できる

ナッピング関連手法も便利なのですが、実施や解析に特別なツールが必要となるため準備が手間です。
またCATAでは属性別の比較・プロダクトマップによる総合的な比較・プリファレンスマップ・ペナルティ分析等ができるため、QDAと同じような解析が可能です。

しかし、CATAの利用については課題もありそうです。
官能評価学会の発表を見ていて、課題と感じたのは下記の点です。

・属性(選択肢)の選び方や表現方法(ワーディング)
・データの良否の判断
・サンプル数・パネル数の設定の仕方(設計方法)

一例をあげてみます。
属性(選択肢)に「▲▲のある」「▲▲のない」が同じ選択肢の中に並べられている場合があります。
CATAに限りませんが、選択肢は独立しているのが基本です。

上記の場合は片方をチェックしたら、もう片方は必然的にチェックが外れる関係です。これは独立な選択肢ではありません。選択肢は1つで機能します。
CATAでは原則として「ある・感じられる・認識した」ものにチェックを入れます。
チェックを入れることは、「ある・感じられる・認識した」と同義なのです。

その他にもパネルパフォーマンスのチェックや選択肢の判断方法、設計や解析などのノウハウが少ないように感じました。
CATAの解析で使われるコレスポンデンス分析は癖のある手法です。井上先生も指摘されていましたがサンプル1つで大きくマップが変化します。ポジショニングがU字型(馬蹄型)になるガットマン効果(馬蹄効果)が出易いのも特徴です。

簡単に実施できる手法ですが、上手く使うには一筋縄ではいかない手法でもあります。

とはいえ、新しい生活様式を維持しつつ、簡単にできるのであれば使わない手はないでしょう。

CATAの普及も進んでいるので、2021年も大いに活用されることが期待されます。

3.ISO・JIS関連の更新情報

2020年のISO更新情報です。

ISO11036テクスチャープロファイル法が改訂されました。
【更新】
●ISO 11036:2020(1stEd. 1994)
Sensory analysis – Methodology – Texture profile
発行年月日: 2020-5-29

食品(固体、半固体、液体)または非食品(化粧品など)のテクスチャプロファイルを作成する方法を提示します。
初版14ページから17ページに増えており、特にパネル関連の記述が増えています。7章の「パネルの選定と選択」は項目が追加されて内容が増えています。また、附属書Bでは初版では飲料の用語分類が掲載されていましたが、2020年版では非食品用の用語分類となっています。

最後に

2020年はコロナの影響が大きく、お客様が予定していた業務の多くが延期・変更となりました。
その中で各企業の官能評価担当者も何とか打開策を模索し、弊社でもそのお手伝いはできたのではないかと考えております。

個人的には室内にいることが増えたため、子どもの勉強を見たり、(業務以外の)パン作りや話題のゲームなどにも手を出すことができたので良い経験ができたとポジティブにとらえていきたいと思っております。

今年もあと僅かとなりました。
皆様、良いお年をお迎えください。

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