ちょっとした味覚・嗅覚のチェックをしたいことはありませんか?
パネルの選抜などではなく、花粉症や風邪などで不調かどうかを確認する程度であれば手間のかかる検査ではなく、簡易的な方法を用いると便利です。
●味覚検査について
本来、各呈味の感じ方は物質ごとに異なります。しかし、すべての呈味物質をチェックすることが目的ではなく、簡単に普通の状態にあるかどうかを知ることが目的です。
その中で1つだけ選ぶとすれば「塩味(塩化ナトリウム)」です。
塩味は、無味との錯誤が起こりにくく、味覚の異常を感じる際に消失・変化しやすい呈味です。また、生活に密着した呈味であり、簡単に入手できる物質(食塩)でもあります。
◆味覚のチェック方法
チェック方法は簡単です。
「1%程度の塩水」(ボトルA)と「無添加の水」(ボトルB)を1本づつ用意します。この二つのサンプルを紙コップに注ぎ、被験者が両方のコップを試飲し、「味の濃いほう」を選んでもらいます。その時、被験者にどちらのサンプルかわからないように行います(ブラインドテスト)。試飲では、吐出しすることをお勧めします。
ボトルAが正解ですが、このチェックを正解できない場合は、花粉症や鼻炎など何かしらの不調が考えられるので参加を見送ります。
パネルの評価能力の良しあしまではわかりませんが、普通の状態にあるかどうかは確認できます。
上記の違いを正解できない場合は、塩分に対する感度が低くなっていると考えられますので、官能評価への参加を見合わせます。
●サンプルの作成方法
1.500mlPETのミネラルウォーター(国産/軟水を推奨)を2本
2.塩(5g)・・・食塩・精製塩を推奨
※「はかり(電子天秤)」がなくて計量できない場合は、計量スプーン(5mlまたは2.5ml)で代替します。計量スプーンの場合は、塩の状態によって濃度が濃くなるので注意してください(およそ容量の1.3倍が重さになります。5mlで6.5g程度)。
片方のPETボトルを開封し、塩を投入してフタを占めて振り混ぜます。もし、塩を投入するスペースがない場合は、ほんの少し捨ててもよいでしょう(濃度は1%を超えますが問題ありません)。
塩水1%濃度は医療用の「テーストディスク」でNo.2(塩化ナトリウム1.25%)に相当します。
●不正解だったら
不正解の場合、官能評価パネルならば不参加となります。
しかし、不参加となった方は味覚障害が気になるでしょう。
その場合は、20%濃度の塩水を作って確認します。500mlのペットボトルに100gの塩です。100gといえば結構な量ですから、水を捨ててからが良いでしょう(20%以上になっていればいいです)。実施するときは相当塩辛いので吐き出してください!
上記の方法でサンプルを調整すると20%以上の塩水ができます。
20%濃度の塩味がわからないとなると医療用の「テーストディスク」で「No.5(最も濃い)が全口腔法で認知不能※」(前述の図を参照)に相当します。
※適切な方法で実施された場合、「テーストディスクNo.5(最も濃い)が全口腔法で認知不能例は味質脱失とする」と参考欄に記載されている。
●におい検査について
におい検査は省略することが多いです。官能評価の場合、味覚が不合格ならばそのまま不参加となるためです。
一応、弊社で行っている嗅覚の確認方法を紹介します。
一般的なにおいの検出能力があるかどうか(普通に鼻が利いているかどうか)を確認する方法です。
グミやガムのような香料を添加したお菓子(例えば「明治果汁グミ」など)のにおいをブラインドでにおいを確認して、においの種類を当てるという方法です。
これらのお菓子は「標準的な消費者が香料を感じる程度」に香り付けをしています。
健康的な一般消費者には目的としたにおい(例えば「グレープ」や「オレンジ」)として認識されます。
そこで、これらのお菓子を見えないようにしたビニール袋などに入れ、においを当ててもらいます。弊社で実施した健康的な方であれば100%当てられました。風邪や花粉症の場合は、鼻詰まりなどのため不正解となることが増えます。
※自宅で実施する場合は、香料が添加された商品(ガム、グミ、歯磨き粉、マウスウォッシュなど)でも可。
これらの味覚または嗅覚のチェックは官能評価の実施前に行います。
なお、ここで紹介した方法はパネルの選抜テストや味覚障害の判断検査ではないのでご注意下さい。
遠隔で官能評価を行う場合でも、被験者側でサンプルを用意できるのでHUT(ホームユーステスト)を行う場合でも有効な方法です。