時差14時間のPangbornは本日21時45分(日本時間)から開催!

東京オリンピックが終わり、Pangbornが始まります。

元々はバンクーバーで会場実施される予定でしたが、コロナの影響でオンライン開催となりました。覚えている方もいると思いますがバンクーバーも2010年に冬季オリンピックを開催した都市です。1988年にはカルガリーオリンピック(冬季)もありましたね。やはりカナダは寒い国なのでしょうか。

実際、この時期にバンクーバーに行くと気温は20℃前後で8/9 16時現在16℃と表示されています(yahoo.com weather)。もし、バンクーバー実施だったら日本との温度差にびっくりしたことでしょう。

そして今日(8/9)の日本時間(JST)21:45から14th Pangborn(2021)が開催されます。
時差がCDT(米国中部標準時間)とは-14時間なのでリアルタイムで参加するのは中々大変です。
リアルタイムを気にしなければ、24時間後には録画ビデオが公開されますし、朝4時(JST)くらいに早起きすれば午後の後半部分はリアルタイムで参加できます。

会場実施の場合は、同時に別会場でプレゼンがあるので全てを見ることができないのですが、今回のオンラインでは同時プレゼンがないので探しやすいです(ポスター、チャット等は別)。

しかしプログラムが見難い。PDF一枚で見れたら良かったのですが、すべてブラウザ上で提示され、しかも都度クリックしないと詳細が表示されない。KEYNOTEと表示があっても実際にはKEYNOTE、Q&A、3つのプレゼンとディスカッションで構成されており、いちいちクリックして見に行くのが手間でした。

開催前に目を通した中で私が気になっているのは次の2つ(もっとありますが、とりあえず)です。

1日目 8/09 09:30-09:45 CDT
KEYNOTE1/O1.3 「Taste and smell perception in hospitalized COVID-19 patients」

3日目 8/11 15:30-15:45 CDT
KEYNOTE6/O6.3 「Moving consumer testing into the home」

1つ目は現在進行形なコロナ患者の味覚嗅覚の研究です。
味覚嗅覚の機能評価は主観評価が多い中で12臭と4呈味を使った客観的指標の内容となっています。コロナ治療のきっかけになるといいですね。

2つ目は、リモート評価についての大規模な研究です。
私も7月の官能評価学会企業部会で「リモート評価」について発表させていただきましたが、その内容と類似テーマだったので、非常に気になっています。

Abstructを読んだのですが、「まだデータ解析中で、2021年6月には結果がでる。Pangbornでは、頑健で画期的な研究結果を学ぶ機会が得られるぞ(意訳、下記原文)」

Data analysis is on-going with results available by June 2021, thus presentation at Pangborn will give delegates the opportunity to learn the outcomes of this robust and ground breaking study.

180を超えるデータセットからの解析結果ということで、これは気になりますね。

ポスター展示は100件を超えているので、まだまだ目を通していませんが、時間を見つけて読みたいですね。

さて、あと5時間ちょっとでPangborn開催です。
そして昼夜逆転生活の始まりです!!

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今年のPangborn2021は8/9から4日間開催

スポーツの世界的なイベントである東京五輪は7/23から8/8までの開催日程となっているようです。

そして官能評価の世界的なイベントであるPangborn2021は、五輪直後の8月9日-12日にオンラインでの開催となりました。

ライブ ストリーミングによる講演とポスターを備えたグローバル オンライン カンファレンスとして開催され、イベント後はオンデマンドで動画・資料等にアクセスできます(公開期間は異なりますのでサイトをご参照ください)

もともとバンクーバー(カナダ)での開催でしたが、新型コロナの状況や時間的金銭的なコストパフォーマンスを考えるとオンラインカンファレスというのは今後の主流となっていくのかもしれません。

ライブ カンファレンスに参加するために 2021年8月6日までに登録する必要がありますのでご興味のある方はご注意ください。

Pangborn2021のサイト

私は既に登録いたしましたが、ちょっと分かりにくかったです。
登録ボタンを押していくとカンファレンス運営のElsevier社のサイトで申し込み手続きとなります。なぜか、最初はElsevier社のサイトが表示されなかったのですが、数日たってからアクセスしたら登録できました。
industry professional delegateで申し込みしたので$300(250+50TAX)でした。
支払いはクレジットカードかPaypal(PayPayではないですよ)の2択でした。
申し込みが完了すれば登録したメールに「Order complete confirmation」というメールが来ます。
過去にElsevier社に登録した方は登録メールパスワードがあるとスムーズです。

今回のPangborn2021について私が気に入っている点を3つご紹介します。

・ライブストリーミングの出席が事前登録可能です。事前に予定が組めるので便利ですね。

・講演やスライドが後日閲覧可能となるため聞き逃しや理解不足を補うことができます。これはオンラインならではのメリットです。

・他の研究者とのネットワークづくりもオンラインを通じて交流を深めることができます。
個人的には英語が得意ではないので、Google先生の力を借りながらチャットできるので対面よりも都合が良いです。

ライブストリーミングやタイムスケジュールは現地時間CDTで記載されているようなので、日本との時差は14時間あります。
初日はCDT7時半、日本では21:30開始ですね。残り3日間はCDT8時から開始ですので日本では22時開始となります。

日本では夜中に開催されるという事情もあって、講演が後日閲覧可能というのは非常にありがたいです。

申込締切は開催ギリギリの8/6なのですが、忘れてしまわないように早めの登録をお勧めします。

※上記記載内容は不正確な場合がありますので、正しい情報についてはPangborn2021のサイトならびに運営にご確認ください。

最後に講演のお知らせです。

7/16開催の官能評価学会企業部会定例会でお話させていただくことになりました。企業部会の参加は大変久しいのですが、何卒宜しくお願い致します。

企業部会開催案内リンク

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令和2年2020年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
2020年は激動の一年でした。新型コロナの感染拡大により生活様式が大きく変化し、社会のあり方も変化させてきました。東京五輪の開催も延期され、来年開催については不確定要素が多い状況です。

そんな2020年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.新しい生活様式
2.CATAの普及
3.ISO・JIS関連の更新情報

1.新しい生活様式

官能評価運営において新型コロナの影響は直撃しました。
コロナ対策として「3密を避けましょう」と叫ばれる中、官能評価の実施はまさに3密状態!

3密を避けるとなると既存の官能評価手法自体が成立しません。
同一の環境(会議室など)に複数のパネルが集合し、訓練や評価を行うのが一般的なやり方です。
しかし、これでは3密を避けることにはなりません。
様々なところでアクリル板をつかった対策がされていますが、実効性となると強力な対策とは言えません。
今後の「新しい生活様式」を念頭に置いて新しい方法論を模索する必要が出てきました。

まず考えられるのは会場方式(CLT)からの変更です。
複数の人と会わずに済む方法として「個別実施法」が考えられます。
1つ目は会社で実施する方法です。会社の会議室にパネリストが交互に出入りして、個別に実施する方法です。
もう1つは、自宅で実施する方法です。自宅に評価用具・サンプルを持ち帰って(または郵送して)評価を自宅で行う方法です。これはホームユーステスト(HUT)と呼ばれる方法に近いです。
ホームユーステストでは使い方を細かく指示せず、普段通りに利用した意見を聞くことが多いですが、官能評価の場合はある程度の指示によって利用方法を統制することが求められます。

テレワークが主流となった会社では、会社で実施する方法も難しくなってきています。
そこで、社内評価の流れとしてはHUT型の官能評価でしょう。

また、HUT型とすることでパネル訓練の実施が難しく、訓練なしで手軽に実施できる手法が注目されています。
それがラピッドメソッドです。

ラピッドメソッドの中でも、特にCATAの急激な普及が目覚ましいように感じます。

新しい生活様式の下、ラピッドメソッドの活用は広がっていくと考えております。

2.CATAの普及

2019年末のブログにも「ラピッドメソッドの定着化」を述べましたが、特にCATA法とナッピング関連手法の普及が進んでいます。
2020年の官能評価学会でもCATAに関連する発表が多いことからも注目を浴びている手法であることがわかります。
しかし、ここで発表された内容は新型コロナが広がる前に実施されたデータが多く、必ずしもコロナの影響でCATAを行ったというわけではなさそうです。

しかし、1つ目のトピックでも書きましたがHUT型の官能評価を考えたとき、ラピッドメソッドはより良い選択肢といえます。
特にCATAは下記の特徴があります。

・訓練なしでも可
・一般的なツールで実施できる(アンケートサイト等)
・多サンプルに対応(QDA・評点法等に比べて)
・パネルの人数で検出力を調整できる

ナッピング関連手法も便利なのですが、実施や解析に特別なツールが必要となるため準備が手間です。
またCATAでは属性別の比較・プロダクトマップによる総合的な比較・プリファレンスマップ・ペナルティ分析等ができるため、QDAと同じような解析が可能です。

しかし、CATAの利用については課題もありそうです。
官能評価学会の発表を見ていて、課題と感じたのは下記の点です。

・属性(選択肢)の選び方や表現方法(ワーディング)
・データの良否の判断
・サンプル数・パネル数の設定の仕方(設計方法)

一例をあげてみます。
属性(選択肢)に「▲▲のある」「▲▲のない」が同じ選択肢の中に並べられている場合があります。
CATAに限りませんが、選択肢は独立しているのが基本です。

上記の場合は片方をチェックしたら、もう片方は必然的にチェックが外れる関係です。これは独立な選択肢ではありません。選択肢は1つで機能します。
CATAでは原則として「ある・感じられる・認識した」ものにチェックを入れます。
チェックを入れることは、「ある・感じられる・認識した」と同義なのです。

その他にもパネルパフォーマンスのチェックや選択肢の判断方法、設計や解析などのノウハウが少ないように感じました。
CATAの解析で使われるコレスポンデンス分析は癖のある手法です。井上先生も指摘されていましたがサンプル1つで大きくマップが変化します。ポジショニングがU字型(馬蹄型)になるガットマン効果(馬蹄効果)が出易いのも特徴です。

簡単に実施できる手法ですが、上手く使うには一筋縄ではいかない手法でもあります。

とはいえ、新しい生活様式を維持しつつ、簡単にできるのであれば使わない手はないでしょう。

CATAの普及も進んでいるので、2021年も大いに活用されることが期待されます。

3.ISO・JIS関連の更新情報

2020年のISO更新情報です。

ISO11036テクスチャープロファイル法が改訂されました。
【更新】
●ISO 11036:2020(1stEd. 1994)
Sensory analysis – Methodology – Texture profile
発行年月日: 2020-5-29

食品(固体、半固体、液体)または非食品(化粧品など)のテクスチャプロファイルを作成する方法を提示します。
初版14ページから17ページに増えており、特にパネル関連の記述が増えています。7章の「パネルの選定と選択」は項目が追加されて内容が増えています。また、附属書Bでは初版では飲料の用語分類が掲載されていましたが、2020年版では非食品用の用語分類となっています。

最後に

2020年はコロナの影響が大きく、お客様が予定していた業務の多くが延期・変更となりました。
その中で各企業の官能評価担当者も何とか打開策を模索し、弊社でもそのお手伝いはできたのではないかと考えております。

個人的には室内にいることが増えたため、子どもの勉強を見たり、(業務以外の)パン作りや話題のゲームなどにも手を出すことができたので良い経験ができたとポジティブにとらえていきたいと思っております。

今年もあと僅かとなりました。
皆様、良いお年をお迎えください。

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簡易的な味覚・嗅覚チェック法

ちょっとした味覚・嗅覚のチェックをしたいことはありませんか?

パネルの選抜などではなく、花粉症や風邪などで不調かどうかを確認する程度であれば手間のかかる検査ではなく、簡易的な方法を用いると便利です。

●味覚検査について

本来、各呈味の感じ方は物質ごとに異なります。しかし、すべての呈味物質をチェックすることが目的ではなく、簡単に普通の状態にあるかどうかを知ることが目的です。

その中で1つだけ選ぶとすれば「塩味(塩化ナトリウム)」です。

塩味は、無味との錯誤が起こりにくく、味覚の異常を感じる際に消失・変化しやすい呈味です。また、生活に密着した呈味であり、簡単に入手できる物質(食塩)でもあります。

◆味覚のチェック方法

チェック方法は簡単です。

「1%程度の塩水」(ボトルA)と「無添加の水」(ボトルB)を1本づつ用意します。この二つのサンプルを紙コップに注ぎ、被験者が両方のコップを試飲し、「味の濃いほう」を選んでもらいます。その時、被験者にどちらのサンプルかわからないように行います(ブラインドテスト)。試飲では、吐出しすることをお勧めします。

ボトルAが正解ですが、このチェックを正解できない場合は、花粉症や鼻炎など何かしらの不調が考えられるので参加を見送ります。

パネルの評価能力の良しあしまではわかりませんが、普通の状態にあるかどうかは確認できます。

上記の違いを正解できない場合は、塩分に対する感度が低くなっていると考えられますので、官能評価への参加を見合わせます。

●サンプルの作成方法

1.500mlPETのミネラルウォーター(国産/軟水を推奨)を2本
2.塩(5g)・・・食塩・精製塩を推奨
※「はかり(電子天秤)」がなくて計量できない場合は、計量スプーン(5mlまたは2.5ml)で代替します。計量スプーンの場合は、塩の状態によって濃度が濃くなるので注意してください(およそ容量の1.3倍が重さになります。5mlで6.5g程度)。

参照:塩の比重について

片方のPETボトルを開封し、塩を投入してフタを占めて振り混ぜます。もし、塩を投入するスペースがない場合は、ほんの少し捨ててもよいでしょう(濃度は1%を超えますが問題ありません)。

塩水1%濃度は医療用の「テーストディスク」でNo.2(塩化ナトリウム1.25%)に相当します。

◆参考:テーストディスク

●不正解だったら
不正解の場合、官能評価パネルならば不参加となります。
しかし、不参加となった方は味覚障害が気になるでしょう。
その場合は、20%濃度の塩水を作って確認します。500mlのペットボトルに100gの塩です。100gといえば結構な量ですから、水を捨ててからが良いでしょう(20%以上になっていればいいです)。実施するときは相当塩辛いので吐き出してください!

上記の方法でサンプルを調整すると20%以上の塩水ができます。
20%濃度の塩味がわからないとなると医療用の「テーストディスク」で「No.5(最も濃い)が全口腔法で認知不能※」(前述の図を参照)に相当します。

※適切な方法で実施された場合、「テーストディスクNo.5(最も濃い)が全口腔法で認知不能例は味質脱失とする」と参考欄に記載されている。

●におい検査について

におい検査は省略することが多いです。官能評価の場合、味覚が不合格ならばそのまま不参加となるためです。

一応、弊社で行っている嗅覚の確認方法を紹介します。
一般的なにおいの検出能力があるかどうか(普通に鼻が利いているかどうか)を確認する方法です。

グミやガムのような香料を添加したお菓子(例えば「明治果汁グミ」など)のにおいをブラインドでにおいを確認して、においの種類を当てるという方法です。

これらのお菓子は「標準的な消費者が香料を感じる程度」に香り付けをしています。
健康的な一般消費者には目的としたにおい(例えば「グレープ」や「オレンジ」)として認識されます。

そこで、これらのお菓子を見えないようにしたビニール袋などに入れ、においを当ててもらいます。弊社で実施した健康的な方であれば100%当てられました。風邪や花粉症の場合は、鼻詰まりなどのため不正解となることが増えます。
※自宅で実施する場合は、香料が添加された商品(ガム、グミ、歯磨き粉、マウスウォッシュなど)でも可。

これらの味覚または嗅覚のチェックは官能評価の実施前に行います。
なお、ここで紹介した方法はパネルの選抜テストや味覚障害の判断検査ではないのでご注意下さい。

遠隔で官能評価を行う場合でも、被験者側でサンプルを用意できるのでHUT(ホームユーステスト)を行う場合でも有効な方法です。

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新型コロナウイルス感染と味覚検査と嗅覚検査について

いくつかのニュースで味覚や嗅覚の変化が感染に気づくきっかけになったという話が出回っているようです( 4/1 確認。但しニュースは削除される恐れがあります。)。

阪神選手
茂原・松戸の大学生
英国鼻科学会の声明
NBAゴベール選手
キラメイジャーレッド

弊社では官能評価パネルの選抜・管理用の味覚検査・嗅覚検査のサービスを提供しておりますが、このような医療目的での使用は目的外となります。

しかし、ご相談がありましたので当社の見解を述べたいと思います。

まず、正常な味覚・嗅覚の基準があるかというと難しいところです。
例えば弊社のTT式味覚検査では、通常の社会生活を送っている方を対象に検査を実施しています。健康な方と考えて良いと思います。そのような方々でも1つも正解しない場合があります。しかし、全不正解の方々が生活で困っているかというとそうではありません。

医療目的の検査、例えばテーストディスクはどうでしょうか?
かなり濃度の濃い条件まで検査しますので、病気と判断されるような味覚異常も判断することができます。

それではこのような味覚検査を使って、コロナウイルスの感染を検出できるのでしょうか?
現時点で感染者のデータがあるわけではないので推測になりますが、おそらく感染者は「いつもと違う」レベルでの違和感を感じたものと思われます。

絶対的な味覚感度というよりは、個人の味覚感度が大きく変化したと推測します。
つまり、もともと味覚感度の高い方(センシティブな方)が「いつもと違う」と感じたとしても、絶対的な感度としては病気と判断されるようなレベルにない可能性があります。

もし、感染時の味覚感度が病気と判断されるようなレベルにまで鈍化するのであれば、医療目的の検査(テーストディスク、電気検査、オルファクトメーター等)が有効だと考えます。
一方、病気と判断されるようなレベルにまで鈍化せず、相対的な感度の低下だとすれば、一回だけの検査で検出することは難しいです。通常時(健康時)の味覚検査の結果と感染時の結果を比較して判断する必要があります。

また、人の味覚や嗅覚は時々刻々と変化しています。空腹や満腹、感情の起伏、環境の変化などに影響を受けます。

検査で判断をする場合、通常のばらつき(変動)を把握し、その上でそのばらつきを超えた変化があったときに「いつもと違う」と判断できます。
しかし、感染したときの味覚の変化が、通常のばらつきの範囲内であった場合は、味覚検査によって感染を検出することは難しいでしょう。

コロナウイルスと味覚嗅覚との関係性について、徐々に研究の結果が報告されています。

キングス・カレッジ・ロンドンの研究者が新型コロナの症状を追跡するアプリを通じてデータを収集し、インターネットで分析結果を報告

このニュースを見ると客観的な味覚検査ではなくても、自己申告でも有効な判断方法となりそうです。 下記はイタリアの病院でのインタビューに基づく結果です。

Self-reported olfactory and taste disorders in SARS-CoV-2 patients: a cross-sectional study (フリーPDFあり)

表1の概要のみですが、59名中の結果:

味覚異常および/または嗅覚障害あり:20名(33.9%)
味覚異常 5名(8.5%)
味覚消失 1名(1.7%)
嗅覚障害 3名(5.1%)
無嗅覚症 0名(-%)
混合味覚と嗅覚障害 11名(18.6%)・・・混合障害の各症状を合計

論文中で下記のテストに言及があります。弊社でも採用を検討したことがありますが、すでに日本ではOSITが開発販売されていたのでOSITを使用していました。現在はOSITが一般的に購入できないのでOpenEssenseを使用しています。

嗅覚識別検査(SmellIdentificationTest:Doty)の臨床応用
※ペンシルバニア州SIT(Smell identification test)

我々が官能評価パネルを訓練する際に、「感じる・感じない」など自己申告というのは信用しません。実際に特定の物質を添加したサンプル溶液を提示し、自己申告(感じる・感じない)の結果とブラインド(3点試験法、違うものを選ぶ)で比較すると大幅に異なっています。上記のインタビュー論文でも66%は味覚・嗅覚異常を感じていません。

しかし、今回のような緊急事態では妥当性や精度を議論している場合ではないのかもしれません。

インタビュー論文でも「impossible to perform a more structured questionnaire associated with validated tests (i.e.Pennsylvania smell identification test) 」と述べており、客観テストの実施は現実的ではないのでしょう。

日々の食事で、ご家族の皆様が味やにおいについて普段と違う様子があったら、コロナウイルスを疑った方が良いかもしれません。
また、料理人(お母さんなど)は気づきにくいので、料理を食べる側も「あれ、いつもと味付けが違う」と思ったら気をつけてください。

現在の状況から言えば、違和感を感じただけで医療機関を訪れるのは得策ではなさそうです。厚生労働省の相談・受信の目安に準じた行動をお勧めします(今後、目安が変わる可能性もありますので随時情報を確認してください)。

また、味覚嗅覚異常を感じた場合は耳鼻咽喉科を受診されると思いますが、診療所ごとに受け入れ状況が異なります。先に電話するなどして確認してから受診するようにしましょう。

早く不安のない社会になることを祈念しております。

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在宅・遠隔による官能評価の実施方法

新型コロナウイルスによる様々な影響が各方面に出ております。
東京都には外出自粛の要請が出され、在宅勤務者が増えております。

メーカーの商品開発者やマーケティング担当者は事態の変化に即座に対応することが求められています。

現在、感染拡大を防ぐため避けるべき状況は「3つの密」と言われています。

密集、密閉、密接

会場調査(CLT;Central Location Test)や集合型の官能評価は、まさに避けるべき状況の一つと言えます。その為、集合型の官能評価の案件自体が実施できない状況です。

実施するとしたら、自宅調査(HUT; Home Use Test)または非集合型官能評価となります。

在宅勤務の社員やリクルート会社を通じてモニターの自宅に商品やサンプルを送付して、試用の上で回答します。

通常HUTは、普段通りの使い方をしてもらった上での使用感などの評価をしてもらうのが目的です。
その為、使い方などの指示は少なくし、要因の統制は最小限とします。結果、様々な使用環境・状況など実態に即した評価が得られるのが特徴です。

一方、会場調査は指定した場所に集まってもらい、運営側の意図する方法に基づき指定されたとおりに評価をします。

双方、メリットデメリットがありますが、会場調査では「様々な要因を厳密に統制できること」が一番のメリットです。
会場調査ができない場合にHUTを代替手法として取り入れる場合、この点を十分注意する必要があります。
なぜならHUTは、様々な要因を厳密に統制できません。

例えば、HUTで商品の食べる順番を指定した場合でも、その通りに実施する方もいればそうでない方もいます。
HUTでも統制自体は可能ですが、「厳密な」統制は難しいのです。

一方で、HUTを(集合型)分析型官能評価の代替として考えたとき下記の3点に注意して実施します。

1.実施方法:半統制型の実施(使用する順番、使い方など一部を指定する)。
2.回答方法:パソコンやスマホを使う。また、統制した内容が守られているかチェックする(サンプルコードの表示だけではなく入力させる)。
3.解析方法:分析型官能評価として実施した場合でも嗜好型官能評価のような解析とする※。

※訓練されたパネルで行う分析型官能評価ではパネリスト効果を固定効果(fixed effect)として解析することが多いですが、遠隔実施の場合は訓練されたパネリストであってもパネリスト効果を変動効果(random effect)として解析する。

各社の状況によりますが、在宅業務を行っている場合にインターネットに接続して回答サイト(アンケートサイトやWeb型官能評価ソフト)にアクセスが許されていない場合も多いようです。

これに対してはソフトウェアごとに対応は異なりますが、例えば弊社のmagicsenseではソフトウェア自体をメールで送付し、ネットに繋がないパソコンで回答を記録し、結果をメールで返信することができます。
FIZZにはFIZZmobileというシステムがあり、持ち出して評価することが可能です。

まとめます。

現状、集合型の官能評価を実施するのは当分は難しそうです。
そこで遠隔で評価を実施するHUT型(ホームユーステスト)の官能評価が当面は有効です。
遠隔実施の場合は、実施の教示、回答方法、そして解析方法を変更することで十分に実施することが可能です。
ソフトウェアは多くの場合は遠隔実施が可能です。

早く不安のない社会になることを祈念しております。

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無料セミナー「R:とりあえず始めてみたいR(1人1台PC)

一般向けに募集を公開いたしました。官能評価に限らずマーケティングデータにも活用できる内容となっております。

【概要】
マウスで操作できるRコマンダーを使用してRの操作方法を習得します。
Rのインストールから基本操作までを実際にパソコンを操作しながら覚えていきましょう。

基本操作ではRコマンダーとFactoMineRパッケージを使ってポジショニングマップの作成を行います(解析手法は「主成分分析」です)。
本セミナーではExcelを中心としてデータハンドリングを行う「仲介法」をご紹介します。Excelでデータを用意し、Rで主成分分析の結果を出力、その結果をExcelでグラフ化(ポジショニングマップ)します。

【プログラム】
1.R概要
2.Rのインストール方法(インターネットorオフライン)
3.Rの起動と終了
4.基本操作(仲介法の説明)
5.ワーク:ポジショニングマップ作成

【募集詳細】
募集人数:5名
持ち物:筆記用具(※当方で用意したパソコンを使用します)
料金:無料
場所:成美教育文化会館(西武池袋線東久留米駅 徒歩5分)日時:
2020年2月6日 13:30-15:30(2時間)
※セミナー終了後、16:00までワークや質疑応答致します。

【お問合せ・申込み先】
お申し込みはこちらフォームからご応募ください。実施日が近づいてきておりますので先着順となります。

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令和元年2019年を振り返る:官能評価関連の動向

今年も残すところあと数日となりました。
今年の官能評価関連の状況を振り返りたいと思います。

1.Pangborn2019の開催
2.ラピッドメソッドの定着化
3.Rの浸透
4.ISO・JIS関連の更新情報

1.Pangborn2019の開催

今年はエジンバラでPangbornが開催されました。若干日本企業の参加数が減少していますが、多くの企業様がポスターや講演では活躍されておりました。
また、楽天リサーチが企業展示されていたのが印象的でした。国内のリサーチ企業がさらに参加されることを期待しております。

2.ラピッドメソッドの定着化

NappingやCATAをはじめとしたラピッドメソッドが定着し始めているようです。以前は新しい手法への興味として実施する方もいましたが、最近は普段使いの手法としてお使いになる方が増えてきています。特にNappingは紙と定規があればできます。また、CATAはアンケートソフトのマルチプルアンサー機能(MA)で回答できるので、気軽に始められます。

一方で、FIZZも完全対応とまでいかず、適切な解析ツールがないのが課題です。

3.Rの浸透

前述の影響かもしれませんが、フリーウェアの「R」の利用が浸透してきています。企業のパソコンにフリーウェアをインストールするのは申請や許可が必要なため、中々簡単に使えないという声が多かったのですが、最近は簡単に許可が出ているようです。その為、自分のパソコンにRを入れて解析を行う方が増えてきています。マニアなソフトから一般人向けのソフトになりつつあるように感じております。
利用者はRstudio派とRコマンダー派が多く、R本体のみという方もいらっしゃいます。
弊社では官能評価パッケージのSensoMineRをお勧めしているためRコマンダーを利用することが多いです。

Rの利用はコマンド入力が壁となっているようです。
使いやすさが今後の普及の鍵でしょう。

4.ISO・JIS関連の更新情報

2019年のISO更新情報です。

ISO3103はお茶サンプル準備の規格が更新されました。
ISO16820は逐次法の規格です。識別法の新アプローチがこちらにも適用されました。
ISO20613は品質管理の規格です。品質管理(QC)の規格がなかったのが意外です。

【更新】
●ISO 3103:2019(1stEd. 1980)
Tea – Preparation of liquor for use in sensory tests
発行年月日: 2019-12-09

さまざまな種類のカメリアシネンシスベース(Camellia sinensis-based tea)のお茶の商業取引の増加を反映するために改訂が行われました。 このドキュメントでは、現在の国際標準(黒と緑)があるお茶を、同じハードウェアを使用して共通のフレームワークで評価することができます。

●ISO 16820:2019(1stEd. 2004)
Sensory analysis – Methodology – Sequential analysis
発行年月日: 2019-10-03

Thurstonianδアプローチの使用に関する情報と新しいリファレンス[7]の引用が5.1に追加されました。

【新規】
●ISO 20613:2019(1stEd.)
Sensory analysis – General guidance for the application of sensory analysis in quality control
発行年月日: 2019-02-28

品質管理(QC)における官能分析プログラムに関するガイドラインを提供します。
QC用途の工場内官能分析に限定されています。
QCの特徴としてリファレンスやキャリブレーションといった再現性を確保するための方法が記載されています。

2019年の個人的なニュースとしては、8年ほど使っていたメインパソコンをこの年末に変えることにしました。
今でも普段使いとしては全く問題ありませんが、技術の進歩は目覚ましく、新しいほうが安くて速いということでこの年末に入れ替えを実行しました。ディープラーニングに使っていたちょっと型落ちのパソコンをリニューアルしました。
ベンチマークソフトの結果、あまりの速さに驚いてしまいました。
今回のブログは入れ替えたパソコンで書いております。

さて、今年も残すところ4日を切ってしまいました。
皆様、良いお年をお迎えください。

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回答用紙が大好きな方へ:OCRとマークシート

皆さんは官能評価の回答方法に用紙を使っていますか?
それともパソコンですか?

近年はFIZZやMagicSense、Compusenseなどのソフトウェアを使ったパソコン回答が増えているので、用紙方式は少ないように思われがちですが、実態は未だに多くの企業の現場では回答用紙が使われています。

回答用紙のデメリットは、データ解析のためにデータ化(データ入力)が必要な点です。このデータ入力がなければパソコンよりも使いやすい方法だと思います。

FIZZにはFIZZ FORMというバージョンがあり、FIZZで印刷した 回答用紙をスキャナーで読み取るとデータ化することができます(OCR)。しかし、ブースを増やしたFIZZネットワークに比べれば安いですがまぁまぁの金額です。

そこでお勧めしたいのがマークシート読取ソフトです。
様々なメーカーからソフトウェアが出されていますが、近年では業務用システムではないパッケージ品(2万円~)でも十分な精度が出せるようになってきています。用紙作成はワードやExcelで作成して普通用紙に印刷するだけです。あとはオートフィーダー付きのスキャナーがあれば完璧です。オフィスなら複合機があるので大丈夫でしょう。

似たような方法として手書き文字を読み取るOCRソフトも出ていますが、読取の精度や回答の簡便性ではマークシート方式の方をお奨めします。

マークシートなので5件法などは簡単にできますが、無段階のラインスケール方式は難しいでしょう。しかし、工夫次第では可能です。

例えば横方向に99段階のマークシートを並べて「疑似ラインスケール」として回答し、スキャン・読み取りします。多少の設定は必要でしたが、コストと精度を考えればなかなかのパフォーマンスです。 弊社で試したところ結構うまくいきました。

回答人数が多い嗜好調査CATA法などはマークシートに向いた手法です。それに加えて5・7・9件法のような評点法ラインスケールもマークシートで使えるとあっては、用紙好きの方には朗報でしょう。

用紙方式は自由記述やメモ書きなど、想定外の情報が商品開発に役に立つことがあります。ソフトウェアでもメモ機能がありますが、用紙に書くような気軽さはありません。

官能評価ソフトを買うほどではないが、官能評価業務を合理化したい方は「マークシート読取ソフト」をお奨めします。

次回は今年最後の投稿になる予定です。

告知:2020年2月6日に開催の無料セミナー情報を「官能評価でアール」(要メンバー登録)に掲載しました。R未経験者向けの内容です。ご興味のある方はログインして閲覧ください。

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マーケティングリサーチのJIS規格「JIS Y 20252」が制定

「市場・世論・社会調査及びインサイト・データ分析」の国際的な品質管理規格であるISO 20252がJIS規格「JIS Y 20252」として制定されました。

経産省ニュースリリース

官能評価では嗜好調査に関するISO規格「ISO11136」がありますが、より大きな括りであるマーケティングリサーチではこのISO 20252が一般的です。

今回、日本のJIS規格として制定されたことで多くのリサーチ会社が適用してくると思われます。またJIS認証と同時にISO認証と同等とみなされるので、海外展開を図るリサーチ会社にとってはチャンスですね。

日本のリサーチ業界の団体である日本マーケティングリサーチ協会(JMRA)では「JIS Y 20252 の理解と遵守を全正会員社にお願いするとともに、官公庁を含むクライアント向けに品質管理の取り組みをよりいっそうアピールしていく」(引用)方針とあります。JMRAは日本の主要なリサーチ会社が正会員・賛助会員となっている団体ですので、業界の方向としてはJIS Y 20252が普及していくのでしょう。

JMRAでは、このJIS制定に伴いJMRAでは記念講演を11/11に開催します。
参加費無料というのがうれしいですね。

また、11/11までにJIS規格書を購入すると期間限定割引があるそうです。
ご興味のある方はこの機会にいかがでしょうか。

ちなみにISO規格のISO 20252邦訳版を購入すると42284円(税込)ですので、JIS版のJIS Y 20252(定価9900円税込)をお勧めします。

今回はマーケティングリサーチに関わるJIS規格「JIS Y 20252」をご紹介しました。

最後に弊社の11月の予定を紹介します。
11/17:官能評価学会にブース出展
11/28:他社主催(東京・半蔵門)のセミナー講師※
※Rの入門編です。SensoMineR・sensR・tempRを紹介します。ご興味ある方はご連絡ください。主催者をご紹介します。

11/17の官能評価学会ではアンケートシステムをご紹介します。ぜひお立ち寄りください。

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